マジガチリベンジ4
※台場烈さんに悲しいお知らせです。トラブルアフター5を読み返してください。ユーリさんの違和感に気づきましたか? そうです。彼女は既に手遅れです。いずれNTRで脳が破壊されることと存じあげますが、お体には気をつけて強く生きてください。
「イチチ」
「申し訳ありません。どうも加減を誤ったようでして」
「ああ、いや。気にすんなって。勝負なんだしよ」
目が覚めるとおっさ……いや、大貫さんが綺麗な形の土下座をキメて謝ってきやがった。しかもこれは多分『慣れて』やがる。でなけりゃぁ、こんな黄金長方形を体現したような土下座はできねぇ。相変わらず規格外な人だぜ大貫さん。
しっかし、この人はこれでも俺と同じ三十五歳なんだよな。誕生日は俺の方が早いので俺の方がおっさん説まであるが……三十五歳ってのは別におっさんじゃあねえんだよ。というか大貫さんのツラが老けすぎなんだよ。四十半ばって言われた方が頷けるぜ。
そもそも探索者ってのは総じて若作りだからな。俺も施術した時点からほとんど老けてねえ。大貫さんはまだ探索者になって一ヶ月も経ってねえらしいんだが見た感じ四十代だろ。元から老け顔だったんだろうよ。
けど大貫さん、素のステータスは低そうだし、ステータスが低い分、生命の保持力は高くなるなんて研究発表もあるそうだから長生きはできそうなんだよな。ステータスがオールFなら千年は生きられるんじゃないかって与太話まであるくらいだし。まあダンジョンに繋がってまだ十年だから机上の空論ではあるけどよ。
いや、まあ……そんなこと、どうでもいいか。
ハァアアアアアアアア。俺、負けたのか? ガチでやったのに? 大貫さんのスピードに対抗するために視覚と右腕だけをフル強化して捕まえようとして、弾かれて腹パンされた……って感じか。
恐らくはほぼ同時の五連打。
この闘技台はダメージを肩代わりしてくれるシールドを発生させる機能があるわけだが、それにも限度がある。まあダメージ自体は弱まるはずなんだが、それでも俺が気絶するほどの威力かよ。本気でヤバいな、こりゃ。
「ともかく頭を上げてくれよ。それにしてもマジ強ぇえな大貫さん。俺死んだかと思ったわ」
「いえ、私はスキルに恵まれただけですよ」
大貫さんはそう言って首を横に振るが、それだけじゃねえのは明白だ。この大貫さんには躊躇ってヤツがねえ。最初にやった時も初手で仕留めに来た。今回だって冷静に対処して俺をノした。とても荒事に関わってなかった人間の判断と行動じゃあないっての。
噂に聞くスプリガンキラーも殺しこそしていなかったがひどい有様で、死んでなかったのは相手の運が良かっただけなんてことも言われてる。まあそこは探索協会が過度に大貫さんのことを持ち上げて怖がらせようとしてるだけなんだろうがな。
確か、銃弾を撃ち返して全員を蜂の巣にした後、念入りにブチかまして複雑骨折と内臓破裂にして仕留めたなんて……まあ相手も殺しにきたんだからやり過ぎとは言わないが盛り過ぎだろうよ。少し前まで一般人だった人間がやれるわけねえし。
けれどもその実力は確かだ。スキルの力だけじゃないのは間違いねえ。
「ところで烈さん、体は大丈夫なのですか? 先ほどまでシュウシュウと体のあちこちから煙が出ていて、その傷とか折れてた足とかも治ったようなのですが?」
「ん? ああ、そういう体質なんだよ。問題ねえ。腹は減るがな」
そう言っている間にぐーと腹の音がしてきた。自動再生スキルは体内のエネルギーを消費して無意識下でも働く俺の切り札だ。とはいえ、無意識下で発動してたってことは多分死にかけてた。こんなの久々だわな。まじで数年ぶりかもしんねえ。あ、半年前にユーリに殺されかけたわ。あーしに勝てるぐらいじゃないと付き合えないって? へっ、次こそは勝って俺の女にしてやるぜ。にしても……
「クック。ウチと協力関係にある相手がここまで強いってのは良いことだ。俺個人としては悔しいことだけどな。ところで大貫さんは今年のシーカーグランプリに出るのかい?」
「シーカーグランプリ?」
大貫さんが首を傾げた。
シーカーグランプリってのは国内の探索者の中でも選ばれた戦闘組が行うトーナメント戦だ。このホテルの闘技台の強化版を使ってマジモンのバトルを行う大会で、俺も当然参加する。その俺をブチのめした大貫さんなら参加できるだけの実力は当然あるわけだが、この様子じゃマジで知らねえんだろうな。
探索者なのにどこまでアンバランスなんだか。新人でこっちの業界のことほとんど知らないって言ってたもんなぁ。
ん? あれ? 待てよ。となるとこの人、仮にシーカーグランプリに参加するとなると新人戦のニューカマーグランプリか?
確か探索者経験三年内は例外除いてそっちに回されるって規約だし。え? それって面白……いや、ヤバくね?
【次回予告】
今、全知の瞳が開かれる。
それは妖精の腹を引き摺り出すきっかけか。
或いは真なる世界を開く先駆けとなるか。
そして運命の鐘は鳴り響き、善十郎の新たな試練が始まる。