マジガチリベンジ1
ユーリさんに武具工房についてお願いしてから三日が経ちました。その間の二日間は再びロックゴーレム退治に赴いて二日で十体を倒し、精霊銀は合わせて11キログラム、神霊銀は210グラムとなりました。
ちなみに精霊銀の買取額は現在1キログラム六十万円ぐらいらしいですね。金策で考えると時間効率は高純度ポーション原液の方が良いようです。
それと神霊銀はユーリさんの言う通りに一般探索者が手に入れられるものではないようですし、それほど量は出ませんので自分達で使うか、ユーリさんたちに融通するくらいに留めておく予定です。
また私のレベルも一日目のロックゴーレム討伐で13、二日目で14になりまして、収納空間が14個出せるようになりました。
身体能力はあい変わらず上昇した感じはありませんし、変わったのは収納空間が増えただけです。レベル15になればまた違う能力が増えるのでしょうか。ちょっと楽しみな反面、怖くもあります。時間遅延も解析も想像以上のものでしたからね。
そして私は今、オーガニックの烈さんと一緒に武具工房のあるダンジョンタウンに向かっています。
ユーリさんは本日テレビ出演があるらしく、烈さんが代わりに案内してくれることになったのです。
「大貫さん、いいなぁこれ。俺も欲しいわ」
ダンジョンタウンの駐車場に停めた私の車を見ながら烈さんがそんなことを言ってきました。
探索者仕様SUVキャンピングカー『ディスティニー』。私の自慢の新車です。
ちなみに烈さんの以前の私の呼び名はおっさんでしたが今は大貫さんと呼ばれるようになりました。理由は同い年の私をおっさんと呼ぶと自分もおっさんに思えてくるからだそうです。烈さんは若く見えますしね。いいですね。私は十代の頃からおじさんと呼ばれていましたよ。
「確かに良い買い物をしたとは我ながら思っておりますけど、烈さんなら普通に買えるんじゃないですか?」
「買えなくはねえけどよ。でも聞いた感じじゃ高額オプション付きのキャンセル品だから代理店で在庫が浮いてて、それですぐ手に入ったって話だろ。普通に納車してたら一年か二年はかかるんじゃねーかな。これ」
「そうなんですか。じゃあかなり運が良かったのですね」
「そうだぜ。それと大貫さん。一応言っておくけど、俺らもそんなに毎度稼げてるわけじゃねーからな。金になるダンジョンは大抵国や企業が押さえてるし、一千万超える買い物はさすがに躊躇はするぜ?」
買えないとは言わない辺り、さすがですね。
「あと探索者って装備品にかける費用が馬鹿になんねーんだよ。命を金で買うんだ。中途半端はできねーし、とはいえ欲しいもんをオークションなんかにかけられると天井知らずで、買おうとすると手持ちをはみ出ることもあるわけだ。それぐらいはすぐに稼げるって思うと躊躇もしなくなるしな」
「それは身に覚えがあって怖いですね」
この車を買った時の私の心境そのままです。
「ま、だからって受け身になったら探索者ってのはただの仕事人になっちまう。リターンとリスクの駆け引き、それができてこそ本当の探索者ってもんだぜ大貫さん」
「なるほど。上位探索者の烈さんのお言葉は勉強になりますね」
それからダンジョンタウンに到着すると烈さんに案内されて武具を取り扱うガンテツ工房に連れて行ってもらいました。そこはオーガニックが贔屓にしている武具工房でして、精霊銀も神霊銀も取り扱えるとのこと。もちろん、神霊銀の出所もしっかりと秘密にしてもらえるそうです。
そして今回注文したのはフォーハンズ用の精霊銀の槍二本に精霊銀のフレームと神霊銀の装甲の組み合わせの透過ライオットシールド二枚です。
ちなみに制作費用や必要な他の素材は余った神霊銀と精霊銀をお譲りするという形でお願いしました。
つまりは実質タダです。どちらもまた採ってくれば良いですし、今は車代のおかげで手持ちがありませんのでこちらとしても助かりますね。
【次回予告】
友誼を結べど、漢ならば挑まねばならぬ時もある。
台場烈。彼にとっては今がその時。
例え過ちを繰り返そうと、漢の歩みは止められぬ。