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マッシュドゴーレム5

「ははは、おおよそ当たっています。一応ユーリさんの正解としておきましょうか」

「むぅ。おじさん、誤魔化したねぇ。あーしは悲しいよ」


 ユーリさんが頬を膨らませています。ハムスターみたいで可愛らしいですね。しかし収納スキルの能力自体を明かす必要はありませんのでネタバレはいたしません。それ単体のスキルではない……という以外は大体正解ですしね。


「それでですね。それが正解だとしてユーリさんの見識ではそういったスキル持ちの探索者の未来はどうですか? 明るいものになりますかね?」


 私の問いにユーリさんが「うーーーーん」と考え込んで、それから自分の考えを反芻するかのようにゆっくりと口を開きました。


「そうだねぇ。後ろ盾がなかった場合だけどね。最初は製薬、製鉄会社当たりから囲い込みをされると思う。そんで無視できない成果が出た場合には国の機関に持っていかれるか、拉致られて海外の軍事産業とかに売られちゃうとか……かなぁ。脅すみたいな言い方になっちゃうけどねー。実際、そういうのってそこそこあるんだよねぇ。マジで」


 そう口にするユーリさんの目は笑ってません。もしかすると過去に何かしらあったのかもしれませんね。そもそも私もそのような状況に最近遭遇していますし。


「それはティーナさんの時と似ていますね。まあ、あの時はティーナさん狙いで私は不要だったらしいですけど」

「うん。そういうことだねー。昔の上位探索者たちが盛大に抗議してくれたおかげで各国の探索者に対する規制は緩い形で済んであーしらもそれなりに自由ではいられるんだけど、そういう待遇がダーティーワークを請け負う連中にとっても美味しく映っちゃったんだよね。今や探索者、魔獣の違法売買は世界全体の問題なわけですなー」


 探索者というのはやはり危険と背中合わせですね。そして、それはダンジョンの外も同様ということです。つまり私がここまで慎重に行動していたのは正解だったということですか。


「あのさぁ、おじさん。自分は慎重に行動していて正解だった……みたいな顔してるけど、全然慎重じゃなかったからね。ユルユルだよおじさん。めちゃくちゃ危機管理意識がゆるキャラだったからね」

「なんと!?」


 ユーリさんに心を読まれました。


「いや、心読んでないから。ドヤ顔してたし、あーしでなくとも誰でも分かるから」


 さらに読まれました。年頃の娘さんに顔色を読まれて的中されてしまいました。

 大人としては恥ずかしい限りです。


「はぁ。おじさんは色々とおかしいし、隙も多いからねー。でなきゃ海外のブローカーがソッコーで襲ったりしないって。あーしが配信に誘ったのもそういうことがないようにオーガニックの後ろ盾を匂わせるためって意図もあったりなかったりしてたんだから」


 あったりなかったりしていたのですか。まったく己の迂闊さに呆れ返るばかりです。


「まあ。とは言っても、人身売買云々の心配はおじさん狙いだった場合にはもう意味ないかもだけどさー」

「ふむ。それは何故でしょうか?」

「前にスプリガンキラーを撃退したのを協会がリークしたって言ったでしょ。それってつまり、おじさんの実力はソレが可能なレベル、最低レベル40から50程度はあるってのも裏で周知されたってことなんだよね」

「なるほど?」

「そんでそのクラスの実力者って拉致はできても拘束し続けるってのはすごく難しいんだよ。普通にバケモンだからねぇ。でもさらった以上はスキルを使わせないといけないし、使わせたら即座に食い破られるのをずっと警戒しないといけないしでね」


 まあ、それはそうですね。私が捕まっても隙があるなら空気弾を五月雨打ちしながらラキくんを召喚して時間遅延解除(スロー)も使って頑張って脱出しようとすると思います。なるほど、毎度そんなことを警戒しながら強引にスキル使わせるのは確かに現実的ではありませんね。


「だから今後、もしおじさんを利用しようと接触してくるにせよ、懐柔とかはあっても力ずくってのはほとんどないと思うよ。油断はしない方が良いけどね」


 情報のリークにはそういう抑止力的な効果もあるのですね。勉強になります。


「そうですか。まあ、世の中なにが起こるか分かりませんし警戒はしておきましょう」

「そう言いながらあまり警戒しなさそうなんだよねー、おじさんは」


 心外ですね。私は顔に出にくいタイプなだけなのですけれども。


「それで話を戻しますが、ユーリさんに精霊銀と神霊銀をお見せしたのはオーガニックでこちらを買い取っていただけるのかの確認と、これでフォーハンズの槍と盾を造りたいので武具工房などを紹介してもらいたかったのですよ」

「ほーん。まあ買取は神霊銀はバレると不味いから要相談だけど精霊銀は問題ないよ。工房もウチが懇意にしているところなら紹介はできるね。守秘義務もしっかりしてるし。うん。ちょっと先方に連絡入れてみるよ。神霊銀があるなら間違いなく食いつくだろうし」


 そう言ってユーリさんは高純度ポーション原液の売買の手続きをした後に連絡を取るために部屋を出ていきました。

 どうやら武器製作の目処は立ちそうです。それにしても神霊銀は銀の光沢を持ちますが、透明で軽くて硬い……のですよね。となるとアレが作れるかもしれません。以前にも考えていた警察とかが持ってる暴徒鎮圧用の透明な盾、ライオットシールド。アレなら収納ゲートの座標を確認するのと鉄球弾ハンマーの破片を受け止めるのに使えそうなのですよね。

【次回予告】

 命を奪い、己が糧とするは生物(いのち)の本質。

 故に善十郎が次に望むはより多くを奪うための新たなる牙。

 或いは奪われぬための新たなる殻であった。

 そして導きの獅子が再び狂犬の前に現れる時、運命の輪が廻り始める。

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収納おじさん【修羅】の書籍版1巻はアース・スターノベル様から発売中です。
WEB版ともどもよろしくお願いします。

収納おじさん書影

【収納おじさん特集ページはこちら】
キャラクター紹介や試し読みが見れます。
― 新着の感想 ―
ポリカ盾(偽)が作れるね ヤッター!(しろめ
[一言] 神聖銀買取あんまないなら形状次第だけど収納して発射したらショットガンとかクレイモアみたいにできんじゃねぇかなぁって 少量でもエグい威力になりそう感
[一言] うまい具合に洗脳でもしないとまあ言う事なんぞ聞きませんわなあ
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