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マッシュドゴーレム4

 昨日の探索の結果ですが、ロックゴーレムは合計六体倒して精霊銀を約4キログラム、神霊銀を合計で80グラムほど集めました。その途中で私のレベルも12になりまして、収納空間が12個用意できるようになりました。私の探索者ライフは非常に順調ですね。

 しかし、昨日は作業を頑張り過ぎてしまいました。何しろ人の形をしているとはいえ、3メートルサイズの岩の塊を処理するのです。それを砕いて解析収納空間に入れて、分離させるという作業を人力で繰り返したのですからまあ大変だったのです。結局はどのようなお仕事でも求められるのは集中力と忍耐力ということでしょうか。

 そんなわけで仕事を切り上げてホテルに戻った頃には二十三時を過ぎておりました。

 それからラウンジでたまたま出会ったユーリさんに買取検証用である高純度ポーション原液を一本渡した私は、疲れていたので自室に戻ってすぐに寝たのです。

 そして翌日に目を覚ました私は朝食の時間は過ぎていたので早めの昼食を摂り、シャワーを浴びてさっぱりした後、ティーナさんと一緒にオヤツの生たまご饅頭に舌鼓を打っているのですが、そこにユーリさんがやって来たのです。

 であればと私は昨日に手に入れた精霊銀と神霊銀をオーガニック経由で卸せないかと思って見せたのですが……


「えーとね。神霊銀は非常に硬くて伸びが良くて、簡単に言うと精霊銀の十分の一の薄さでも強度は倍以上になるの。特徴は魔法銀とも呼ばれている精霊銀の銀の輝きそのままに透明であることで……ああ、そうそう。ちゃんと透明だねえ。うん。あーしは頭の中がハテナでいっぱいだよ、おじさん」

「頑張って採ってきました」


 ニッコリ。


「頑張って採ってきました」


 ニッコリ。


 はい。笑顔で応対しましたが、ユーリさんの目が笑っていませんね。どうやら私は何かをやってしまったようです。


「ハァ、誤魔化しきれてないからねおじさん。一応言っておくと神霊銀は採ってこれないから。精霊銀とガッチリ結合していて、分離には大掛かりな施設が必要だから天然ものって基本自然界には存在しないの。だから一般探索者はそもそも神霊銀を自力で手に入れることはできないんだよねぇ」


 ユーリさんがジト目でそう返してきました。

 なるほど……と、頷いている私の横でティーナさんがシーカーデバイスから情報を検索して「あ、本当だ」と口にしています。

 なるほど。調べた時には希少なものと書かれてはいましたが、製法までは見ていませんでした。収納スキルの解析は私の想像以上に優秀だったようです。


「まったく、おじさんはこんなものをどうやって手に入れたんだろうねぇ」

「ふふふ。どうやって……ですか。ユーリさんはどうやってだと思います?」

「アレ、答え合わせしていいのかな?」


 意外そうな顔をしたユーリさんに私は肩をすくめました。

 確かに解析を用いた分離能力は便利過ぎると私も感じていますし、その想いはたった今上方修正もされました。ですがこれを個人で隠し続けるのにも限界がありますし、私はバレないように死蔵するつもりはありません。私の望むものは己の力を抑えて手に入れられるほど生ぬるいものではないのです。自重は悪です。お金は正義です。最高の探索者を目指すのであれば持てる力は100パーセント生かすべきなのだと私は思います。


「ユーリさん個人を信用致しますよ。正直に申しまして活用方法次第ではとても危険な気はしていましたし、今の話を聞いてさらにそう思いましたが……結局それがどの程度のものなのかを私自身も計りかねているのですよ」

「そういうの私たちも分かんないからねー。ゼンジューローがおかしいのは分かるけどさぁ」

「キュルッ」


 後方から援護射撃です。

 なお、撃たれたのは私の背中のような気がしますが、気のせいでしょうか。


「ふーん、そういう思い切りの良いおじさんもあーし好きだよ。うーん。それでね。ちょっと話、横道入るんだけどさー。昨日もらった高純度ポーション原液をウチのご贔屓さんに今朝持っていったんだよね」

「え、もう行ってきたんですか。アグレッシブですねユーリさん」

「ふふふ、フットワークの軽いクランリーダーだからねあーしは。で、結果を聞いて急いで戻ってきたところにこれなわけだけど」

「申し訳ございません」

「ま、いいんだけどねー。知らないところでやらかすよりはさー。んでさ。卸し先に状態の確認をしてもらったんだけど、ムラが無さすぎるって言われちゃってねー。スキルで抽出すると結構ムラが出るものみたいで、少なくとも個人で造ったものではないだろうって言われたんだよねー」


 なるほど。ムラがないのは最大手の隊長製薬の高純度ポーション原液のサンプル品を参考にしたためですかね。


「出所確かなものでないなら製薬会社の横流しか盗品を疑った方がいいって言われちゃったんだよねー」

「じゃあ売れなかったのですか?」

「ううん。問題ないところだから大丈夫だよって返したし、おじさんの承諾が得られれば売買成立でアレの代金も振り込むよ。あとこれおじさんの原液で作った中級ポーションをサンプルでもらったからあげる」

「これはこれはありがとうございます。販売可能ならば問題はありませんね。安心しました。それで横道から本道には戻れそうですか?」

「そうだねー。おじさんは高純度ポーション原液だけではなく、精霊銀や神霊銀も自分で持ち帰ってきた。さらにそれらが採れるダンジョンの状況などを鑑みてー、じゃあおじさんのスキルの正体を言うね。びっくりすんなよー。おらー」


 そしてユーリさんがドヤ顔でこう言いました。


「ズバリ! 対象物の成分を解析して分けることが可能な『分離』スキル……が正解でしょおじさん?」

【次回予告】

 力なき者の末路。

 女の語る暗黒の未来に善十郎は恐怖した。

 故に願うのだ。強くあらねばならぬと。

 故に望むのだ。理不尽を退ける理不尽を。

 所詮人の世は弱肉強食。力こそが正義なのだと。

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収納おじさん【修羅】の書籍版1巻はアース・スターノベル様から発売中です。
WEB版ともどもよろしくお願いします。

収納おじさん書影

【収納おじさん特集ページはこちら】
キャラクター紹介や試し読みが見れます。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 時間遅延収納空間を解放したら周囲の時間が遅延するなら、鑑定収納空間を解放したらどうなるんだろう? 周辺全てのアイテムを鑑定できるのかな? [一言] そうなスキルがあるんだ!凄いね!!不…
[良い点] ユーリさんがかしこい、可愛い、素直 [気になる点] 秘匿も大事 [一言] 面白いです
[一言] 改めてランク詐欺すぎる能力だよな…
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