マッシュドゴーレム1
どうも、おはようございます。
オーガニックには入らなかったけど同盟関係は結べた私です。
あの後、ユーリさんとはティーナさん、ラキくんとのコラボ配信の日程などを進めたりもしました。それと私の素材を卸すかどうかですね。
そもそもの話なのですが、ダンジョン探索のゲート外の換金所での換金というのは主に個人探索者メインのものらしく、ある程度のクランともなると独自の販路をお持ちなのだそうです。
そして現在の私の主力商品は高純度ポーション原液です。そのことをユーリさんに話したら通常の買取の十万上乗せの四十万円で買ってもらえる話になりました。オーガニック独自の伝手で製薬会社に直接卸せるからできることですね。一応そこには探索協会への手数料も込みとなっていますし、法的な問題もありません。
そんなわけでポーション原液成金と化した私は新しく納車されたSUVキャンピングカーに乗って、秩父ゲートへと向かっています。前回の反省を踏まえて狙撃されても跳ね返せる程度の防御力を誇り、スタンピードでも耐えられるなんてキャッチもある探索者用の車です。
中が広くティーナさんもラキくんも喜んでいますね。フォーハンズは何かあった時の対処のために助手席に乗ってもらってますが。
こちらのお車は一台千五百万円しまして、結果として私の残金はマイナスになっていますのでさっさと稼がないといけません。
とはいえ、毎回同じことの繰り返しでは飽きがきてしまうというもの。モチベーションの維持も考えて午前中に兄切草を集めて原液造りをして、午後は別のことを目的に動こうかと思っています。
『それでは安全安心を旨に、素晴らしい探索者生活をお楽しみください』
ということでダンジョンに入りました。
午前中はいつも通りに崖上のひとつに目処をつけて登りましたが、三度目にしてようやく当たりを引いたのです。そうです。誰にも荒らされていない兄切草の群生地を発見したのです。
中途半端に採集していた方々とは違い、私は搾り取れるものは全て搾り取る主義です。ですので残さず絞らせていただきました。まあ根は残すので、文字通りに根こそぎ……というわけではありませんが。
「ほい。エナジー注入。これでしばらくしたらまた収穫できるようになるわよ」
刈り取ったことで茎だけが土から出ている無惨な兄切草にティーナさんが鱗粉のように魔力的な何かを降り注ぎます。
「ティーナさん、それは植物操作スキルで成長を促しているのでしたっけ」
「うん、そうよ。アフターケアもしっかりしないとまたきた時に収穫できないからねー。兄切草は根さえ残っていればまた生えてくるし、私はそれを加速させてるだけって感じ」
「もやしのようなものですかね」
「そうかな? そうかも? まあ栄養素は常に降り注いでいるし、その吸収率なんかも上げてるから多分2〜3週間で元に戻ってるんじゃないかなー」
それは便利ですね。収穫場所と収穫日などをメモしてローテーションで回っていけば無限に収穫ができそうです。
そんなわけで今回の作業で高純度ポーション原液は瓶十三本分が手に入りました。しめて五百二十万円となります。慣れてきたのか作業もスムーズに終えられました。あと二回繰り返せば車代回収ですね。金銭感覚が狂いそうで怖いです。
そしてお昼になったので昼食休憩をして、その後はここから少し離れたエリアに向かうことになりました。
それは深化の森を抜けたところにある渓谷です。その名をリビングバレー、ゴーレムたちの楽園とも呼ばれているエリアです。
【次回予告】
空駆ける鉄の星。
それを男は感情なき眼で見上げていた。
そこにあるのは慚悔か、或いは必然か。
ただ男には分かっていた。
振るわれる力には代償があることを。
その身の軽さが何を意味するかを。
そして、もう取り戻せぬ何かに背を向け、男は歩き出す。
二度と繰り返さぬと己が心に誓って。