表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/162

ルーザーズパニック8

 ふむ。どうやらやってしまったようです。

 一応、危険な石砲弾や石銃弾、石散弾は当然封印として、使うのは空気弾と収納ゲートと時間遅延のみに限定して挑みました。

 そして模擬戦開始と共にまずは初手で時間遅延を発動して一気に近づき、空気弾を撃ち込んだのです。空気弾は石砲弾には劣りますが、近距離でならかなりの威力を発揮してくれます。

 けれども相手も流石に高レベルの探索者の方でした。空気弾一発程度では怯んだだけ。それどころか即座に反撃を仕掛けてきたのです。

 私もこれには驚きましたが、攻撃を受けるのは嫌ですので烈さんの進行方向に収納ゲートを置かせていただきました。

 レベル50相当だったはずのラキくんのタックルも止めた収納ゲートです。烈さんもこれは突破できなかったようで、であればと即座に後退して距離を取ろうとしたのですが、私の今回の攻撃手段は空気弾のみです。距離を取られるのはよろしくないので、後方にも収納ゲートを置いて烈さんの動きを止めさせていただきました。これには烈さんも驚いたようで、一瞬立ち止まった隙に、お腹へと空気弾を五発撃たせてもらったのです。

 一発だと耐えられてしまうのは確認済みでしたので、数を重ねさせていただきました。

 そして烈さんは場外ノックアウトしてしまったのです。どうやら闘技台の膜で守られていても気絶くらいはするみたいですね。勝てて良かったです。ふぅ。


「お、おじさん凄い。烈を倒しちゃった。ウッソー。何なん。今のー。クンフー? 気功ってヤツ?」

「秘密ですね。はい」


 探索者たる者、己の手の内を明かすべからずと言います。スキル然り。所持金然り。レアアイテム然り。ラキくんという召喚獣も当然そうです。広まったりでもすれば、知らぬ間に裏のルートに情報が流されて、拉致されて海外の闇組織に売られてしまうのだとか。土曜スペシャリテ『南米の闇市場に売られた元日本人探索者を追う!』で見ました。

 ちなみにその売られた方は現在メキシコマフィアの用心棒をしているそうです。奴隷のような扱いではないらしいのですが、拾われてすぐに犯罪の片棒を担がされて共犯関係にされたとのこと。もう日本には戻れないと泣きながらお薬をキメている姿は未来の自分を見ているようで恐ろしかったですね。気をつけねばなりません。


「はっは、おじさん。思ったよりも探索者なんだねー。あーしはちょっと感心しちゃったよー。あ、烈の写真撮ってアピっとこ。ええと、通りすがりのおじさんにブッ飛ばされた台場烈くん(三十五歳)でっす! カッコ白目と。おお、これはバズりそうな予感。スクープだ!」


 あ、そういうのって勝手に撮っていいんでしょうか。そう私が思っている間にユーリさんはSNSにもう上げたようです。判断が早い。というか、今烈さんの年齢を口にしましたが……


「烈さん、同い年だったんですね」

「え、おじさん。四十代じゃないの?」

「今年で三十五歳ですよ。老け顔とはよく言われますが」

「探索者になると身体機能が強化されて年齢よりも若く見られるっていうけどおじさんはなー。探索者になって一週間かー。レベル上げていけばもう少し若く見えるようになるかも?」

「なるといいですね」


 ステータスオールFなので可能性は低そうです。そもそも十代からおじさんと言われていましたし、変わらない気がします。


「それにしてもすごかったなぁ。超加速に掌底打ち、後は妨害系? 稼げるって言ったのは伊達じゃないよねー」

「はっはっは」

「キュルルー」


 稼げると言ったのはエーテル結晶が取れるからで戦闘能力などは関係ないのですけれどもね。


「けどね。烈も今回は舐めプし過ぎてたからこんなんだけど、本気になれば速度に追いつけなくても対処はできると思うよー。どんだけ速くてもおじさんの動きは素人だからね。気を付けたほうがいいよー……と、あーしは思うのですよ」

「ご忠告承りました。基本安全運転がモットーですので、ダンジョン内では無理しないように気を付けます」

「うんうん。素直なオジさんでユーリも鼻が高いよ」


 おどけた感じで言ってますが、戦闘中もユーリさんはこちらの動きをちゃんと目で追ってましたからねえ。私もそれに気づいてびっくりしましたけど、高レベルの探索者なら反応も可能なのでしょう。時間遅延も無敵ではないということですね。気を付けないと。

 それから烈さんはすぐに目覚めなかったのでユーリさんが付き添うということで私は先に失礼しました。なんでもふたりは同じクランメンバーだそうで名刺もいただきました。鬼肉と書いてオーガニックと読むのですか。変わったお名前ですね。

 ちなみに今度配信でラキくんを貸して欲しいと相談されたのですが、ラキくんも乗り気だったので許可してしまいました。まあ小さい方での出演なら問題はありませんよね?

【次回予告】

 男は再び地獄に舞い戻る。

 そこは禁断の実験場。

 滅びに瀕した人類が足掻いた醜い爪痕。

 善十郎は果たしてそこで何を見て、何を成すのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納おじさん【修羅】の書籍版1巻はアース・スターノベル様から発売中です。
WEB版ともどもよろしくお願いします。

収納おじさん書影

【収納おじさん特集ページはこちら】
キャラクター紹介や試し読みが見れます。
― 新着の感想 ―
ユーリからは主人公は速くは見えないのでは?
[一言] ユーリ「えへ配信しちゃった!」 烈さん「く、私は一向に構わん!」 ユーリ「お、ちょーバズっててウケる~」 烈さん「うん?どんな・・・これはらめえ!?」
[一言] 寝てる間にバズり散らかすことになりそうな烈くんぇ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ