アダマンワークス01
顧問チーム「測定器の……修理代?」
※今章から章ごとに書き溜めする形式ではなく、一話できたら更新していく方式に切り替えます。
なので、更新は不定期になりますが全体的な更新ペース自体は早くなるんじゃないかな? うん。多分。
熊さんたちとの戦争から二週間が経ちました。
戦争。そう、あれは戦争だったのです。
もっとも戦争の主役は我々ではありませんでした。あの戦いはハーフムーンブルーベアとモノクロバッドベア、双方の種の命運を賭けた生存戦争であり、私たちはその場に偶然居合わせたイレギュラーだったのですね。
まあ、どちらの群れのボスも私が倒してしまい、なし崩し的に終了となってしまいましたが、それは些細なことでしょう。結果は結果。現実とは過酷なものなのです。
ともあれ、多くの熊たちが倒れ、回収された魔石は私たちの糧となりました。弱肉強食の言葉の意味を強く感じます。ガッポガッポです。
まあ、収入に関しては、額が額となってきて個人での運用が難しくなってきたため、先日よりユーリさんの顧問チームに会計関係はお願いすることとなりました。
こちらはオーガニックとは別の、ユーリさん個人のチームらしいですね。もうじき一緒になるから私の分も頼んでも問題ないと言ってくれたのでお願いしてしまいました。彼女におんぶに抱っこになっている現状を情けなくは感じますが、ありがたいことではあります。
ですので甲斐性のあるところを見せるためにも、私は稼がなければいけません。積み上げた貯蓄額だけが私の価値を高めるのですね。
そんなわけで、現在の私たちは熊林渓谷に通い詰めて、アダマンタイトの収穫をしています。
「ラキくん。お願い致します」
「ガッ、ガッ」
ラキくんがガントレットクローを振るうと黒い竹がバッサリと切られていきます。以前の鉄製の外観だったガントレットクローですが、今は白磁のような色と質感に変わっています。
実はこのガントレットクローは元のものにガンテツ工房でアスラベアの爪を合成してもらったものなのです。
元々はアダマンタイト製のクローを用意する予定だったのですが、こちらであれば伸縮性能はそのままに、爪に次元爪を乗せられてアダマンタイト製よりも切れ味が上がるとのことだったので作っていただきました。
名前はアスラクローと言うそうで、ラキくんもかなり気に入っているようです。
「それじゃあラキくん、切ってもらえますか?」
「キュルッ、ガッガッ」
ラキくんがアスラクローを振るって、アダマンバンブーを良い感じに切り分けてくれます。ここしばらくはずっと繰り返していたので、手慣れたものですね。
アダマンバンブーの直径は5センチメートルくらいで直径8センチメートルの収納ゲートには普通に収まります。収納空間の深さは25センチメートル程度なのですが、質量に依存するので多少サイズオーバーでも問題なく入ります。
「ありがとうございます。ラキくん。ちょうど良いサイズですね」
「キュルルッ」
ラキくんの頭を撫でながら、切り分けられたアダマンバンブーを解析収納空間に放り込みます。
「ほい、ほいと」
内部で解析を終えたのでまずは竹の繊維だけをゲートから吐き出し、続けて竹の形をしたスポンジのようなアダマンタイトをシートの上に落とします。見た感じは黒いヘチマブラシに似ていますね。
先に竹繊維を出したのは、解析収納ではアダマンタイトを分けることができないことに起因します。
実は解析収納も魔力を使用して解析しているため、アダマンタイトを分離することはできないのです。ですが、それは逆に言えばアダマンタイト以外ならば分けられるということでもあります。
ですので、まずは解析収納からアダマンバンブーの繊維だけを分けて排出し、それから残ったアダマンタイトを出しているわけです。
この竹型アダマンタイトはスカスカなのでラキくんがアダマン肉球で簡単に砕いて砂状にできますし、それを袋に入れて持って帰っているのです。
本来であれば、採集したアダマンバンブーは専用の装置で分離させる必要があり、分離後も不純物を取り除くのに手間がかかるそうです。
その点、解析収納によって分離したアダマンタイトには不純物が混ざっておらず、アダマンタイトの特性を100パーセント生かした加工が可能なのだとか。
それにアダマンタイトは神霊銀とは違って供給がある程度ある金属なので、出所を隠す必要がないのもありがたいですね。
そんなわけで、ホイホイとアダマンタイトを分離処理していると竹林の中からティーナさんたちが戻ってきました。
「ゼンジューロー、取ってきたわよー」
「お帰りなさいティーナさん。おや、大量ですね」
「でしょー」
「ニパッ」
にっこり笑うティーナさんの横で、同じようにニパッと笑っているフォーさんが束になったアダマンストリングを持っています。
私とラキくんがアダマンタイトの抽出作業をしている間、ティーナさんたちはアダマンストリングの回収を行なっていたのです。
ちなみにアダマンストリングを抱えたフォーさんが現在装備しているのはアダマンタイト製のバルディッシュです。
バルディッシュは半月斧のような形の刃が付いたハルバードに近い武器で、ダークハンズが持っていたものと同じ種類の武器でもあります。
黒く、ゴツく、実際重いのですが、フォーさんの中の人的にはその方が馴染むようで、フォーさんの要望によりアスラクローと一緒にガンテツ工房に作ってもらったのです。
なお、神霊銀のライオットシールドはそのままです。金属としてのレア度はアダマンタイトよりも神霊銀の方が上ですし、硬度はともかく、対魔力強度は神霊銀の方が高いのだとか。透明なのも良いです。軽いですし。
そのため、今のフォーさんのスタイルは、両腕でバルディッシュを構え、左右の残り二本の腕にそれぞれ神霊銀のライオットシールドを持たせて防御を行う形になっています。
そんなわけで前に使っていた精霊銀の槍はお役御免となりました。私が使っても良いのではないかと提案したのですが、ティーナさんが「ゼンジューローに刃物を使わせると指を切りそう」と言われて却下されました。悲しいですね。
「これだけの量があれば、ゼンジューロー用の鎖帷子だって作れると思うわよ」
「重くて動けなくなりますね」
アダマンストリングはワイヤーですが、量が増えれば重い金属であるアダマンタイト相応の重量にはなります。
一般的な探索者であれば問題のない重量なのでしょうが、一般人相当の身体能力しかない私には初期から装備しているロックアーマーとプロテクトスーツが精々なのです。
「あ、それと」
それからティーナさんがテヘッという顔で笑うと、竹林の方からブオンブオンブオンとしなる音が聞こえてきました。
「連れてきちゃったみたいね」
「「「「グマーーーー!」」」」
そしてアダマンバンブーを足場に飛び回るモノクロバッドベアの群れが突撃してきました。
これがどったんバッタンの大騒ぎというヤツですか。
【次回予告】
凍る世界。
何者にも侵されぬ無垢の世界。
そこに至れるはただひとりのみ。
故に世界は気付けない。
極致に至った男の存在に。
万能の瞳は映せない。
深奥に届き得るその異能を。
男は知らず、
ただ静かに牙を研ぎ続ける。
いつしか彼の者の喉元に届くまで。





