クマクマベアベア11
統率個体は8メートルの勇■郎、上位種は4メートルのオ■バみたいなガタイだと思えば、大体合ってる。
「あいつら、筋肉過ぎるのである」
「筋肉過ぎる?」
「プワンンンダァアアアア」
首を傾げる私の目に、竹林の中から8メートルはあろう、筋肉の塊みたいなモノクロバッドベアが飛び出してきた姿が写りました。
「きん……にく?」
それは魅せるために造られたのではなく、ただそうあるべきと育った上でひとつの美として完成された芸術品。そんな存在がまるで流星の様な飛び蹴りをこちらに放ってきました。
「覇ッ」
対して御剣さんが掌底でその攻撃を受けて返しましたが、激突で発生した衝撃波により周囲の竹林がバキバキと折れて、他の熊たちが吹き飛んで転げていきます。あまりにサイズの違うもの同士の戦いはさながら巨大ロボット対人間といった感じではありますが……なるほど、確かにアレではラファールさんたちでも苦戦するわけです。
あの筋肉がモノクロバッドベアの統率個体なのでしょう。凄まじい存在感、凄まじい筋肉のボリュームです。
またモノクロバッドベアの上位種らしい魔獣も次々と竹林から姿を現してきました。
あちらは事前に情報を得てはいましたが、確か名前はモノクロマスキュラーベアという、4メートルはあるパンダ柄のゴリラの様な熊です。ややこしいですね。
「「「グマァァァアア」」」
戦闘は肉弾戦オンリーで、フルムーンイエローベアよりも戦闘評価は低いそうですが、フルムーンイエローベアは顔を合わせると勝手に死んでしまうので、私には比較ができません。ただ、普通に強そうではあります。
「プワンダァアアア!」
「フゥ、キェェエエ!」
そして統率個体が再度御剣さんと戦い始めました。ああ、まるで竜巻のようです。あの戦いには混ざれません。最悪、御剣さんに当たってしまいそうです。そして私たちの方は、後からやってきたモノクロマスキュラーベアたちが向かってきました。
「ロックオンされましたか。ラファールさん、アレはちょっとボリュームアップしたモノクロバッドベアだと思えば良いのでしょうか?」
「それはそうなのではあるが、吾輩は後衛タイプなので、この手のと正面からやり合うのは苦手なのだ。フリーズミスト!」
ラファールさんが杖を振るとキラキラと光る霧が広範囲に発生し、モノクロマスキュラーベアたちを包みました。
「ミスター・オオヌキ!」
「はい、分かりました。フォーさん、右の一体はお願いします」
「ニッパァアアア」
動きが鈍くなったのならと私は二体のモノクロマスキュラーベアの頭部に圧縮空気弾を放ちます。一体は頭を粉砕、一体は首が折れましたが、目が死んではいません。であればと空気弾を連続で撃って仕留めました。
フォーさんは……あちらも急所の魔石を一撃で貫いて仕留めたようですね。まったく、恐ろしい技の冴えです。
「どちらもやるのであるな」
「私はラファールさんとは逆に近接系の相手とは相性が良いようですし、フォーさんは戦闘全般の達人のようですから」
私の収納ゲートの防御を彼らは破壊できませんし、速度はハーフムーンブルーベアよりも速いですが、ラファールさんの霧で速度が落ちている状態なら対処も可能でしょう。霧がなくとも時間遅延解除を使えば仕留めることはできるはずです。
もっとも、こうも数が多いとやはり厳しいですね。これまでも防御が間に合わず、大地の銀花のアースシールドも削られていて、フォーさんのフォローでどうにか持ち堪えられているだけです。
「それよりもラファールさん。御剣さんの方が辛うじて戦えているという感じですが、手助けはしないのですか?」
「こちらはこちらで手詰まりではあるし、今は爺の鎧の修復に魔力を送るくらいが精々なのである」
「なるほど、困りましたね」
御剣さんと連携が取れれば私でも対処もできるかもしれませんが、実践でいきなりの対応は難しいです。何より周囲の敵が多すぎて近づくのも困難です。
ちなみにレベルはハーフムーンブルーベアの統率個体が勝手に死んだ時に22、ここまでの戦いでもうひとつ上がって23になりました。これで25まで上がれば新しい収納能力が得られるかもしれませんが、今回はさすがに間に合いません。
それにしても熊というのは毛皮が硬く、肉も分厚く、元からダメージが通りにくい生物ではありますが、魔獣になると本当に硬くなります。それはハーフムーンベアとモノクロバッドベアの戦いにも言えることで、どちらの群れも先ほどから倒れては起き上がり、殴っては殴られてを繰り返しています。
ふむ。だんだん囲まれていますね。フォーさんも強くはなっていますし、機動力があるのでいまだに捕まってはいませんが、やはり武器が貧弱です。
「ピンチであるなミスター・オオヌキ。何か手はないのであるか?」
「ティーナさんが準備中ですが、あとどれくらいかかるかは分かりませんね」
熊がまるで波のように押し寄せてきていて、ティーナさんたちともずいぶんと距離が開いてしまいました。ティーナさんともラキくんとも繋がりは感じてしますので、あちらもまだ無事なのは分かりますが、状況は厳しいです。
先ほどから大地の銀花のシールドも安定せず、熱くなっています。オーバーヒートというやつでしょうか。む、アースシールドが途切れ途切れに……あ、切れた? これはマズ……
「ミスター・オオヌキ!?」
あ!?
集中が途切れた瞬間に右側から青い熊のタックルです。フォーさんは左側の位置にいて間に合わない。ならば時間遅延解除をかけて収納ゲートを展開……は、間に合いませんか。ああ、これは駄目ですね。
「ふぐッ」
直後、私の体が吹き飛びました。
【次回予告】
男が舞った。
大貫善十郎。
最高の探索者を目指す男の命が
今、尽きようとしていた。
まるで木の葉の如く舞い、
落ち葉の如く、
踏み潰されようとしていた。
故に勇者の瞳に焔が灯る。
それは地の底のマグマが噴き出すかのように。
朝日を前に翼を広げて巣を立つ若鳥のように。
覚醒の時はもう間も無く。





