クマクマベアベア10
ところかしこで熊の咆哮が響き渡っています。
この場のハーフムーンブルーベアはみんな私に向かってきていますが、熊林渓谷全体ではまだモノクロバッドベアとハーフムーンブルーベアの戦争が継続中なのでしょう。
もっとも、想定外とはいえ、ハーフムーンブルーベアの統率個体は私が倒してしまったのですから、このままであればモノクロバッドベアの勝利で終わるはずですし、この青い熊たちの猛攻もいずれは止まってくれると嬉しいのですが。
「グマァアアアッ」
「ニパッ」
「おっと、ありがとうございますフォーさん」
また背後から迫るハーフムーンブルーベアをフォーさんに止めていただきました。周囲に収納ゲートをバリケードのように展開していても所詮は直径8センチメートルの障害物に過ぎませんからね。どうしても防御の漏れが出てしまいます。そういう面でのフォローは戦巧者のフォーさんの方が適していると理解していたから、ティーナさんはこの配置にしたのでしょうね。
それとフルムーンイエローベア……でしたか。上位種である黄色い熊は相変わらず私に近づくと勝手に死んでいくのですが、それでも彼らはまるで死兵の様に突撃してきていて、勢いがまったく途切れません。
ドォォオオオンッ
おや、離れた場所で氷の柱ができました。
あれがアイスエンペラーと呼ばれているラファールさんの魔法スキル『フローズン・ドミニオン』ですか。ユーリさんの雷もそうですが、魔法系の戦闘は派手で羨ましいですね。
「グマァアアア」
「ふむ、良い具合に一列に並びましたね。ではこれでお終いです」
フォーさんがまとめてくれたブリーハーフムーンベアの列をソーラービーム・リユースで串刺しにしました。そして彼らが一斉に燃えていきます。ソーラービーム・リユースは5メートル圏内ならまとめて仕留められるのが良いところなのですが……
「ああ、流石に効力が切れましたか」
後方に設置した収納ゲートにソーラービームが収納できていません。今回の攻撃の途中で太陽の光が尽きた様です。戦闘に入ってからすでに十回程度は撃ちましたからね。地上に戻ったら、また補充しなければいけませんか。
「しかし、敵の勢いが衰えませんね」
「ニッパァアア」
フォーさんもそう思いますよね。
おっと、今度は十体のハーフムーンブルーベアがスクラムを組んで迫ってきています。
「これは堪りませんね。仕方がない。フォーさん、撃ってください」
「ニッパァァアアアア」
ズドォォオオン
エーテル砲の一撃で三体のハーフムーンブルーベアが消し飛び、他の個体も吹き飛ばされていきました。フォーフットのエーテル砲の威力はやはり強力ですね。とはいえ、砲門はふたつで残りは後一発。エーテルを補充すれば再度撃てる様にはなりますが、補充する余裕がありません。
「グマァ」
「こちらには圧縮空気弾です」
「ガァアッ」
迫ってくる熊の頭を上手く潰せました。もう動くことはできないでしょう。
「しかし硬いですね」
「ニパァ」
「フォーさんもそう思いますか」
筋肉の壁が想像以上に硬い。空気弾では弾く程度。石砲弾や石散弾では石が砕けます。鉄散弾もめり込んではいたのでダメージこそあるようですが、決定打になるほどの威力ではありませんでした。目潰しには使えましたが、すでに在庫切れです。
そしてソーラービーム・リユースも尽き、当たりどころによっては一撃で仕留めることはできる鉄砲弾も残弾なし。有効な攻撃手段は圧縮空気弾のみです。
アース張り手は防御に回してるので出せませんし、時間遅延解除による加速効果付きがあってもこの流れを留めるのが精々。
そのため、今の私は収納ゲートの盾で身を守り、空気弾で牽制をしつつ、時間遅延解除を使い、複製収納で増やした吸引収納ふたつで圧縮空気弾を作りながら応戦している状態です。
「なかなかに手詰まり感があります。まったく、どこまでいっても私の火力不足が付きまといますね」
「それはミスター・オオヌキの自分への要求が高過ぎるのではないか……と吾輩は思うのであるな」
「ラファールさん?」
戦っている私たちにラファールさんたちが近づいてきました。
「なかなかに厄介である。どちらかの群れの勢いが削がれれば、そこから離脱もできるのだが、どちらもここを中心に動いているようで隙がないのだ」
「ラファールさん。助けに来てくれたのですか?」
「いや、押されて下がってきたのである」
「面目ございません」
「おや、御剣さん。クラッシュアイスっぽいお姿になっていますね」
ラファールさんの毛並みは乱れ、御剣さんの氷の鎧もボロボロです。英国の英雄でもこの状況は厳しい様ですね。これは思ったよりもピンチなのかもしれません。
【次回予告】
白と黒に彩られた鋼の筋肉。
それはさながら筋肉の鉄槌。
或いは筋肉の城塞。
つまるところ、それは筋肉の化身。
故に筋肉。すべては筋肉。
迫り来るは筋肉の大津波也。
さあ大貫善十郎。汝、筋肉を讃えよ。





