クマクマベアベア09
「ふむ。なんで死んだのでしょうか?」
「アレじゃない。ホンマルの時と同じで空間魔法を使ったから亜空間にあるゼンジューローの収納空間と干渉したのよ。黄色い熊も多分そうなんでしょうね」
ああ、なるほど。
空間魔法、確かあの熊たちが使うのは次元爪と次元爪嵐ですか。スキル同士の干渉は使用者に直接バックフローが発生する様ですからね。私の収納スキルはランクFですが、スキル強度は高いようなのでそういうことが起こるのでしょう。
「ゼンジューローは空間魔法の使い手には無敵なのかもしれないわね」
「無敵というのは言い過ぎではないかと思いますが……もしかして探索者でも私の近くで収納空間を開くとみんなああなるのではないでしょうか?」
「戦闘系スキルくらいの高出力じゃなければ、大丈夫だとは思うけど……注意喚起はしたほうがいいのかも?」
ですよね。
「それにしても統率個体がやられたからでしょうか。ハーフムーンブルーベアがさらに怖い顔になって襲ってきているのですが」
先ほどまでは、モノクロバッドベアと私たちどちらも敵という感じだったのに、今は私たちに対してのみ仕掛けてきています。
「案外忠義心が高かったのかしら? ねえねえイケメンベア。あんたが群れの長になってあいつら止めなさいよ」
「ガツガツし過ぎた肉食系女子は苦手なのである」
「熊に何を求めてるのよ」
「包容力のある愛情であるな」
ラファールさんのお嫁さん探しは難航しそうですね。
「それでティーナさん。この状況ですが、転移で逃げることは可能ですか?」
「んー、今回ゲート近くに座標取得用の眷属植えてないのよねー。なんで長距離転移は無理。中距離転移は視界が確保できれば……なんだけど」
「竹林ですね」
「そ。見える範囲が狭すぎるし、アダマンタイトのせいか感覚を伸ばして座標を会得するのもここじゃ無理。短距離転移は使えるけどね」
ティーナさんが憎々しげに周囲の竹林を睨みながら、そう答えてくれました。
となれば自力でここを切り抜けるしかないのでしょう。
「坊っちゃま、モノクロバッドベアの動きも大きくなってきています。恐らくはハーフムーンバッドベアの群れの統率個体が死んだために一気にケリをつけようと動きだしたのでしょう」
『大貫さん。どうなってる?』
あ、烈さんのことを忘れていました。
「絶賛戦闘中ですね。申し訳ありませんが合流できる状況ではなさそうです。烈さんはゴールドクラブと一緒に離れてください。こちらはこちらで対処します」
『ッ……分かった。なるべく早く救援に戻る。ラファールも頼んだぞ』
「承知したのである」
ラファールさんの言葉に烈さんが『すまねえ』と返すと通信が切れました。あちらはあちらで大忙しなのでしょう。無事でいてくれれば良いのですがね。
「さて、この厄介な状況は我々が原因ではあるのだし、承知したと口にした以上は無様は晒せんな。ミスター・オオヌキはハーフムーンブルーベアの上位種の天敵の様であれば、吾輩らはモノクロバッドベアの方を請け負った方が良いであろう。爺、やるのである!」
「ハッ、坊っちゃま」
ラファールさんが杖を振るうと、御剣さんの体を氷が包み始め、鎧の形になっていきます。
「すごいですね」
「これをガラティーンフォームという」
「ガラティーン。確か円卓の騎士ガウェインの剣の名前だったわね」
「そうなのですか」
「まあネーミングはウチのクランリーダーの趣味であるな。爺は吾輩の剣にして拳。気を通しやすい氷のパワーアーマーで攻撃と防御を底上げしているのである」
「大塚流気功術師範・御剣薫。推して参ります」
御剣さんが飛び出していきました。
凄まじい速度ですね。おお、拳一発でモノクロバッドベアの頭が弾け飛びました。あの方もレベル50台はありそうです。それに本物の気功師。恐ろしい戦闘能力をお持ちのようです。
「フォー、フォーフットと合体しなさい」
「ニパッ」
こちらもフォーさんがフォーフットと合体したことで、ケンタウロス形態に変わりました。
フォーフットの装甲を全身に纏わせてマッシブになった分、武器が若干貧相に見えますが、ダークハンズの使用していたバルディッシュとかいう武器に変えた方が良いのでしょうか。
「フォーはゼンジューローの護衛。ラキは私の手伝いをして」
「キュルッ?」
「どうするのですか?」
ティーナさんが何かをするつもりのご様子です。
その場でティーナさんがアーティファクト『城壁の腕輪』の『キャッスルシールド』を発動して、護りを固めました。
「ちょっと、試したいことがあるのよね。上手くいけば形勢を一気に変えられるかもしれない。ラキはゼンジューローにつきたいだろうけど、集まった熊を蹴散らすにはフォーよりもアンタのパワーの方が必要なのよ」
「ふむ、分かりました。ラキくん、頼みましたよ」
「フーー、ガッ」
ラキくんが両手を挙げて頷きました。
「お願いいたします。では、フォーさん。いきましょうか。彼らをティーナさんには近づけないように頑張りましょう」
「ニパァ」
それでは我々も熊狩りといきましょう。
【次回予告】
始まるは野生の闘争。
巨躯の獣たちが争う極限の戦場。
その嵐の中を異物たちが駆け巡る。
悪鬼羅刹の如く、縦横無尽に猛り狂う。
されど、吹き荒れる暴風もいずれは止まる。
波の如く押し寄せる肉の壁を前に、
善十郎は決断を迫られた。





