クマクマベアベア08
烈さん視点です。
シロクマが余計なことをしたせいで大ピンチです。
まずい。まずい。まずい。まずい。これはまずい。
何がまずいって360度熊しかいないのが絶対まずいし、大貫さんたちと合流できてないのも最高にまずい。とりあえず向かってきているのはモノクロバッドベアとハーフムーンブルーベアだけで上位種はいねえから、俺が蹴散らして、残りを小島たちに牽制させてる……が、結構ギリギリだ。これ以上は俺だけならともかく、ゴールドクラブが死ぬ。
「烈さん。大貫さんたちへの通信、やっぱり繋がらないです」
「だろうなぁ。ラファールの野郎がフローズン・ドミニオンで大貫さんを閉じ込めたんだ。やりやがったな、あのシロクマ野郎」
ユーリの雷霆と同様にラファールのフローズン・ドミニオンは応用力が高い。氷の系統の魔法なら、大体は再現できちまう。攻撃も防御もお手のものってな。これだから大貫さんと離れたくなかったんだがな。
にしてもどういう状況だ。アダマンバンブーを収納空間に入れていたら、いきなりモノクロバッドベアとハーフムーンブルーベアが襲ってきやがった。確認できただけで、もう百体は超えてやがる。
「あーもう、次から次に来るわよ。どうなってんのよ!?」
「知るか。なんなんだよ、これは!?」
「熊たちがワラワラと。虫じゃあねえんだぞ」
「モノクロバッドベアとハーフムーンブルーベアが挟む様に攻めてるとかさー」
「でも連中も争ってるよ。だからなんとか助かってる」
ああ、そうだ。俺らへの攻撃もおまけ程度……というか、追い払う感じに近いな。あいつらは多分互いの群れ同士で争い合ってるんだ。俺らは邪魔だから襲われてるってだけだ。
「烈さん。もしかすると、さっきの争ってた熊たちって先遣隊だったんじゃあないですか?」
「それを倒したもんだから痺れを切らしてどっちも突っ込んできた?」
「その可能性は高いかもな。魔獣は野生の獣よりも知性が高いから、群体での動きが人間の軍隊に近いことがある。俺が受けた依頼の元となった魔獣の反応もこの件の兆候だったんだろう」
こんなことならゴールドクラブの探索日を遅らせて、俺だけ先に調べてれば良かった……ってのは、今さらか。すでに起きてることを嘆いても仕方がねえ。
「どうしますか烈さん。大貫さんたちを救助に向かわなくていいんすか?」
「アホが。自分の実力を考えろ田崎。ラファールと御剣は俺も含めたこの場のメンツよりも戦闘力が上だし、大貫さんはドラゴンも殺れるし、迷宮災害で大量に魔獣を仕留めてもいる。マジでヤバいのはあっちじゃねぇ。お前らの方なんだよ」
「!?」
俺ひとりだったら、まだどうにかなるが、こいつらは違う。ぶっちゃけ、俺が抜けたらこいつらは壊滅する。だからってあっちは心配がないかって言えば、んなわきゃねーんだがな。そもそもラファールが何を仕掛けてるんだか分かんねえし。
「あ、烈さん。あっちとの通信が回復したみたいです」
「おし、よくやった。大貫さん。聞こえるか。不味い事態だ。聞こえてるなら返事をしてくれ」
大貫さんに繋いだシーカーデバイスに声をかけるが、返事はない。無事なのか。無事じゃないのか。畜生。無事であってくれよ。
「頼む。大貫さん、返事をしてくれ」
『……ッ』
繋がったか!?
『グォオオオオオオオオ』『グマァアアア』
聞こえるのが大貫さんじゃなくて魔獣の声かよ。やっぱり、あっちも同じか。
いや、場所からしてより騒動の中心に近いわけだから、こっちよりも状況は悪いはずだ。
『申し訳ありません、烈さん。ようやく繋がりました』
「大貫さん。声が聞けて安心したぜ。死んだとは思ってなかったがよ」
「烈さん、黄色いヤツだ。上位種が来た」
チッ、こっちが話してる時によ。だがフルムーンイエローベアが四体か。アレの次元爪を連発されたら小島でも避けきれねえ。しゃーねぇな。
「いけぇえレッドヴァジュラ」
俺はフルムーンイエローベアたちのいる場所へと持っていたレッドヴァジュラをぶん投げた。
「グマァァアアア」
連中に着弾したレッドヴァジュラから赤い稲妻が放たれて天に昇る。これはレッドヴァジュラ内にチャージされた俺の魔力が解放された攻撃だが、ランクCクラスでも即死させる威力がある。連発はできねえがな。
『あ、赤い光と爆発が見えましたね』
「見えたか大貫さん。それが俺のレッドヴァジュラだ。今はゴールドクラブと一緒に撤退中だが、そっちは?」
『ラファールさんとお喋りをしていましたら、時間が経ってしまいまして』
「そうかい。長話になるなら事前に教えて欲しかったがね。で、合流できそうかい?」
場所は今の光で分かったはずだが……どうだ?
『少し遠いですね。合流は難しいかもしれません。ただラファールさんたちもおりますし、逃げるだけなら……あ』
「あ? なんだ?」
『いえ、ハーフムーンブルーベアの黄色いタイプが十体ほど近づいてきていまして。なんて名前でしたか。フルグラとかいう』
フルムーンイエローベアか!? それが十体? 次元爪の集中攻撃でも受けたら大貫さんでも対処できねえだろ。畜生が。
「マズい。逃げろ大貫さん!?」
『グマァアアア』
シーカーデバイスのスピーカーからブシャアア……という音が聞こえてきた。
距離は少し離れてる感じか? となれば音の元は大貫さんじゃない?
『あ』
「何があった大貫さん!?」
『あの、その黄色い熊ですが』
「おう」
『頭から血を噴き出して死にました。全員』
「は?」
何を言ってるんだ。死んだ? なんで??
『グンマァァアアアア』
『ゼンジューロー、今度はデッカいのが来るわ。10メートルはある、腕が六本で頭が三つある赤い熊よ』
その声、ティーナか。それに大型の赤い熊だと? そいつはまさか四川省のダンジョンで発見されたヤベエ統率個体と同じタイプか!?
『今度こそ逃げろ大貫さん。そいつはアスラベアだ。次元爪嵐っていう、広範囲の空間魔法を使う化け物だぞ。見えてる範囲すべてがヤツの射程だ! すぐに逃げろ。逃げてくれぇ」
『グンマァアアア』
畜生。あいつの攻撃で中国の探索者百人が一瞬で惨殺されたんだぞ。逃げてくれ大貫さん。いくらアンタでもそいつが相手じゃあ……
『あ』
「大貫さん? なんだ? どうした? 生きてるか? 大丈夫なのか?」
『あ、はい。私は大丈夫なのですが……その、赤い大熊が』
「おう?」
「頭から血を噴き出して死にました」
だから、なんでだ?
【次回予告】
死神が微笑み、
彼らの希望は崩れ落ちた。
ただ理不尽に、
あまりにも呆気なく。
されど終わらない。
終わることなど出来るはずもない。
討つのだ。滅ぼすのだ。
彼の者に鉄槌を。
我らが爪牙を持ちて、
あの悪魔を殺すのだ。





