クマクマベアベア06
書籍版収納おじさん【修羅】2巻の発売まで【あと1日】。
明日も更新します。
「ちなみにラキのことは本当に知らなかったのである」
「そうなのですか?」
ここまでの話からすれば、私のことはある程度調べられていると思うのですが、ラファールさんはラキくんのことについては気づいていなかった様です。
「ミスター・オオヌキを調べれば一緒にいる従魔が吾輩の探している召喚獣だとすぐ分かりそうなものではある。あるのだが……多分、意図的に隠されていたのであろうな。爺?」
「はい。恐らくはマーリン様の仕業でしょう。坊っちゃまの派遣を決められたのは彼女です。サプライズ的なつもりだったのではないかと」
「相変わらず人騒がせな女だ。驚いたのは確かではあるがな」
ラファールさんがため息を吐きながら、そう言いました。
なんだか分かりませんが、ご苦労なされている様です。
「ともあれだ。吾輩がミスター・オオヌキの元に来たのは吾輩の所属するクラン『円卓』の指示によるものなのだ。吾輩はそのついでにハーレムメンバー探しとジョセフィーヌの捜索も行っていたわけである」
やれやれと言ってラファールさんが肩をすくめました。
「け、結局、騙して私たちに接近したってことじゃないの!?」
ティーナさんが口を尖らせてそう言うと、ラファールさんもそれには頷いて「そうとも言えるのであるな」と返しました。
「まあ、吾輩としては逃げられても困るので、こうするしかなかったのではある」
「私たちが逃げるかもしれないお話なのですか?」
「その可能性はあると考えていたのだ。外で話せば、ミスター・オオヌキたちが距離をとるかもしれないし、外野に勘ぐられてこちらの意図を知られたくもなかったのであるな」
「そうなのですか」
どうして、そういう判断になったのかがよく分かりませんが、閉じ込めたという割にはこちらを害しようという気配はありません。本当にお話だけをしようという感じですね。
「まあ、まずは要件を話すのである。それを聞いてからミスター・オオヌキたちも判断をお願いするのである」
ラファールさんの言葉に私は頷きました。
ほんの少しだけ、抵抗してみたらどうなるか……本当に少しだけ気になりましたが、あまり冗談を行える状況ではないようですし、我慢しましょう。
「先ほどクィーン・ティーナの言った通り、吾輩の所属するクラン『円卓』は妖精郷と呼ばれるダンジョンを英国政府より管理することを求められて結成されたクランなのだ。妖精郷ダンジョンはフェアリーアーティファクトという、特殊な魔法具が発見されるダンジョンでな。たとえば……そう、ミスター・オオヌキのブローチの様な感じの……な」
私は自分の服に付けられた大地の銀花を見ました。まあ気付かれますか。特に隠してもおりませんしね。
「ご用件とはこれについてですか?」
「それ、どこで手に入れたものであるか、教えてはくれないかミスター・オオヌキ?」
「明確に盗品である分かっているのであればともかく、そうではない魔法具の入手先を明かす義務はないと思いますが」
ラファールさんが何を考えて問うているのか不明ですが、有名な探索者相手であっても質問に答えなければならないわけではありませんし、大地の銀花はティーナさんのハンドメイドですから、この世にふたつとないものです。そのことを話すつもりはありませんが、後ろ暗い事情を抱えているわけではありませんから臆する必要もありません。
「まあ確かにそうではあるな。義務はない。けれども、その件でミスター・オオヌキにはとある疑惑がかけられていたのである」
「疑惑?」
ふむ。何やら雲行きが怪しいですね。
「そもそも妖精郷ダンジョンで発見されたフェアリーアーティファクトはその希少性に応じて国内外に販売や展示、或いは国内探索者に貸与されていたのだ。妖精郷ダンジョン以外で発見されたフェアリーアーティファクトについてもシリアルナンバーを振って、フェアリーアーティファクトというブランド自体を我々が管理している状態とも言えるのだ。その強力さと危険さ故にな」
「危険ですか?」
「うむ。単純に強力な魔法具もあるが、洗脳や扇動など精神に作用するものや、使用者に寄生するものなども確認されているのである」
寄生……フォーさんの様なことが生物にもできる魔法具でしょうか。確かに危険そうではありますが。
「そんな特別強力だったり、危険だったりするフェアリーアーティファクトは国外には出さず、我が国が誇る大英宝物館に保管されることになっているのだが……」
ラファールさんが苦々しい顔になって話を続けます。
「その大英宝物館内のフェアリーアーティファクトが三ヶ月前に奪われたのだよ」
「なんと?」
「大英宝物館って、ダンジョン産の魔法具を対象にした大英博物館の姉妹館だったわよね。警備だってしっかりしてたんじゃないの?」
「そこが身内の恥を晒す話になるのだがな。まあ、簡単に言うと大英宝物館を管理していた組織『スプリガン』が裏切ったのだよ」
「スプリガン?」
「スプリガンは財宝を守ることで有名なイングランドの妖精の名前よゼンジューロー。まあ、それが大英宝物館の管理をしているってのは分かりやすい名前だとは思うけど。そこに裏切られてフェアリーアーティファクトを大量に盗まれたと?」
「間抜けなことにな」
ラファールさんがため息を吐きながら、深く頷きました。
「所有記録もですな。管理されていたフェアリーアーティファクトがどれほどあるのか、どれほど危険なものが存在しているのか、それが我々にも把握できておりません。特に円卓結成前に発見されたフェアリーアーティファクトの情報はほとんど残っておりませんでした」
なるほど。それは大失態ですね。
「連中。盗んだモノを売って資金にしているらしく、おかげでフェアリーアーティファクトが世界中に散らばってしまったのだよ」
「ニュースでは見ませんね」
「今は情報規制をしいておりますので。ただ、ごまかしきれるものではありませんし、そう遠くないうちにある程度は開示することにはなるでしょう」
なるほど。身内の不祥事で、国の大事ともなればそういう対応にもなるということですか。
「となると、私のフェアリーアーティファクトも盗まれたものであると思われているのでしょうか?」
私の問いに、ラファールさんは苦笑しながらも首を横に振りました。
「であれば、話は簡単であったのだがな。その件でミスター・オオヌキが注目されたのは確かなのだが、スプリガンとの接触は確認できなかったので早々に容疑からは外れたのである」
「だったら」
「代わりに……」
そう言ってラファールさんが私への視線を強めました。
「『会話ができる妖精』と共にいる男が『未確認の』フェアリーアーティファクトを所有していた……という新しい問題が発覚してしまったのであるな」
なるほど。それは問題ですね。
【次回予告】
英国紳士と妖精女王の華麗なる取引。
それは人ならざる者たちの叡智の闘争。
受けるべきか。引くべきか。
ティーナの妖精女王たる所以が今、試される。





