クマクマベアベア05
書籍版収納おじさん【修羅】2巻の発売まで【あと2日】。
なので発売までの明日、明後日も更新する予定です。
この辺りのアダマンバンブーもあらかた切り終わり、そろそろ集めた竹を回収しようというところで、ラファールさんから声をかけられました。
ちなみに本丸さんの収納空間は目の前の山になったアダマンバンブーを余裕で収納できるそうです。ランクFの収納スキル持ちの私としては大変羨ましい話ですね。
ともあれ、本丸さんが収納スキルを使うとなると私はこの場を離れる必要がありますし、ついでにラファールさんと話し合うことを烈さんに告げたところ、微妙な顔をされました。ラファールさんから危険な行動はしないと丁寧に言われて、結局は了承してくれましたが、それでも烈さんの顔から不安の表情は消えません。
「俺はゴールドクラブの面倒みないといけないから一緒にはいけねえが、国際問題にならないように気をつけてくれよ。本当にな。絶対にだからな」
「はい。問題ありません」
「その自信満々な感じがこえーんだよ」
烈さんは心配性ですね。ラファールさんとお話しするだけなのですから、問題など起こるはずがありません。起こったとしてもそれはきっと私の方の問題ではないはずです。なので大丈夫です。
そうして私たちは作業をしていた区画から離れ、竹林の中の、ある程度ひらけた場所までやって来ました。御剣さんやティーナさん、ラキくん、フォーさんも一緒です。それから私は解析解除を使って魔獣がいないのを確認すると、ラファールさんに声をかけました。
「それでどういったお話なのでしょうかラファールさん?」
「ふむ。そうであるな。まあ……話す前にちょっとだけ準備をさせてもらうのである」
「準備?」
ラファールさんは私の問いに応えず、持っていた蒼い宝玉を付けたステッキを地面に突き刺しました。
「シルヴァーナが付いてる。フェアリーアーティファクトだわゼンジューロー」
ティーナさんがそう口にしましたが……確かに私の大地の銀華や凛さんのザンジューローと同じ異世界の魔獣植物シルヴァーナがついていて、花芯の部分に青い魔石が嵌め込まれているようです。
「おや?」
私が注視していると、地面に突き刺さったステッキの先から氷が張り始め、それは周囲に広がって一定の距離まで到達すると、巨大な氷の花びらが地面から生え始めて、この場を包んでいきました。
「これ、氷の結界?」
ティーナさんがそう問うと、ラファールさんが頷きました。
「左様。空間系とは若干違うが、我が氷華で閉じることで外界との接続を完全に封じたのである。これが吾輩のスキル『フローズン・ドミニオン』の力の一端なのであるな」
つまりは我々は閉じ込められたということですか。とはいえ、ラファールさんも御剣さんも攻撃しようという気配はありません。
「なぜ、このようなことを?」
「ミスター・レツにはこれからの話を聞かれるのも、邪魔をされるのも困るからである。なので遮断させてもらったわけであるな」
「ゼンジューロー。サーチドローンが止まったわ」
ティーナさんの乗っていたサーチドローンが地面に落ちてしまいました。
「この空間内では、記録媒体を含む機械の類の一切が封じられるのだ。シーカーデバイスも同じであるな」
「なるほど。しかし、記録が残っていないと探索協会から怒られませんか?」
ダンジョン内での意図的な情報の遮断は、場合によっては処分対象にもなり得ます。
「うむ。メッチャ怒られるのである。あとで英国を通して日本の探索協会には謝罪をする必要があるな」
なるほど。後のことも考えているのであれば、我々を害そうというわけではなさそうですね。
「承知しました。それでラファールさんたちのお話というのはラキくんのことでしょうか?」
「キュル? フーー、ガッ」
私の言葉にラキくんが立ち上がって威嚇のポーズを取りました。またラファールさんが迫ってくるとでも思ったのでしょうか。
「いや、そうではない。ラキも威嚇をしないで欲しいのである」
「ふーん。じゃあ、なんの話なのかしらね?」
ティーナさんが訝しげな顔で尋ねますが、ラキくんのことではないとなると見当がつきませんね。
「そうであるな。ここからの話は、英国クラン『円卓』のガウェイン卿としてのものと思って欲しいのである」
「ガウェイン卿?」
「ラファールのコードネームよ。クラン『円卓』の幹部はアーサー王伝説における円卓の騎士に準えたコードネームを名乗っているのよね」
「好きで名乗っているわけではないのだがね。ウチのリーダーがアーサー王かぶれなのだ。正直吾輩はこれを名乗るのは恥ずかしいのだが」
「そうなのですか」
かっこいいと思うのですけれども。
ユーリさんは雷帝と呼ばれておりますし、私もいずれは二つ名とか付くのでしょうか? できればカッコ良いのがいいですね。
「円卓の……ね。まあ、そうでしょうね。そういうことよね。ふふん。舐められたものね。本当に私たちが気づかなかったと思っていたのかしら」
ティーナさんが意味ありげに笑って、そう口にしました。
「ティーナさん、どういうことですか?」
「ゼンジューロー、要するにここまでのこのシロクマの行動はすべて茶番。つまりゼンジューローはすっかり騙されたってことよ」
「なん……ですって!?」
衝撃の事実です。ここまで私はラファールさんに対して、何ひとつ違和感を持っていませんでした。ラキくんと(熊の)奥さんを探し求めたラファールさんとは、偶々ここで出会ったのだと思っていたのですが、ティーナさんの眼には彼らの行動が全て茶番に映っていたようです。
「そもそもラファール。あなたたちがここにいるのが偶然だなんて、あるわけがないじゃない。まあ熊のハーレムを作りたいなんてイカれた話をした時点で嘘だなんてすぐに分かったわよ」
「ふむ」
ラファールさんが目を細めました。
「どういうことですかティーナさん?」
「ゼンジューロー、そもそもの話ね。ラファールの所属している円卓は別名『妖精郷の番人』。フェアリーアーティファクトが出土する妖精郷ダンジョンの管理を英国政府より任されているクランなのよ」
「そうなのですか?」
「うむ。それは確かなのである。公言はしていないがな」
つまりは妖精と馴染みのあるクランなのですね。おや? そうなると確かに少しだけ彼らの行動には違和感があります。
「それに円卓のメンバーは妖精という存在に固執している妖精フリークばかりだと有名なのよ。なのに、このクマちゃんはどうだったかしら?」
「どうというと……ラファールさんはティーナさんに興味を持つ素振りすら見せな……かった?」
「その通りでございます」
ティーナさんがラファールさんを指さして、勝ち誇るようにそう口にしました。かっこいい。まるでティーナさんが名探偵のように見えてきました。
「熊のハーレムを探してる? 妖精フリークのクランメンバーが世にも珍しい喋る妖精である私に対してなんのリアクションも起こさない? あまりにもあからさま過ぎよね。こんなの気づかない方がどうかしているわよ」
なるほど。確かに私はどうかしていました。指摘されれば確かに……と思えることばかりです。いつも一緒にいるので忘れがちですが、ティーナさんはとても稀少な、お話ができる妖精なのです。だというのにラファールさんはティーナさんにまったく興味を持っていませんでした。
ティーナさんが肩をすくめて、やれやれという顔をしていますが、そこに気づけなかった自分が恥ずかしい。そしてティーナさんが誇らしいです。
「いや。吾輩、妖精にはまったく興味がないのである」
「あら」
ドヤ顔だったティーナさんが目を丸くしましたね。彼女も以前に比べると感情が豊かになりました。いえ、以前から笑顔ではあったのですが、どこか取り繕っている感じがあったのです。これが自然体になったということなのでしょうかね。というか、どういうことでしょうか?
「どちらかというと妖精郷ダンジョンの管理をしているというだけで、その手の連中が多く集まっていることには辟易している側なのであるな。まあ。クラン内にその類の輩が多いことは否定できないのだがね」
「そうなのですね」
ティーナさんのお顔が真っ赤です。
「ハーレム要員探しも嘘ではないのである。吾輩、熊系魔獣のいるダンジョンは国内外問わず出向ける時には必ず出向いているのだ。だからこの熊竹渓谷はリサーチ済みでくるのを楽しみにしていたのであるな」
そして、本物の方でしたか。いえいえ、そうですね。多様性の時代……ということなのでしょう。それもひとつの愛の形なのかもしれません。
「まあ、クィーン・ティーナとミスター・オオヌキのふたりに用があって出向いたのも事実ではあるのだが」
なるほど。ややこしいですね。
【次回予告】
それは隠された強奪。
それは裏切りの徒。
漆黒の闇の中に光が当たる時、
その輝きは別の秘め事をも曝け出す。
あばかれた者の名は大貫善十郎。
それは存在せぬはずの遺物を持ち、
あり得ぬ従魔を引き連れし探索者。
故にこの邂逅は必然であった。





