クマクマベアベア04
書籍版収納おじさん【修羅】2巻の発売まで【残り5日】。
アース・スターノベル様の公式サイトで収納おじさん【修羅】2巻の特集ページが公開されました。このページの下部からか活動報告からリンクを張ってあります。
「なぜ止めるミスター・レツ。まさか吾輩が受け切れないとでも言うつもりかね? ブリテンの英雄であり、アイスエンペラーとも称されるこの吾輩が?」
烈さんの拒絶の言葉にラファールさんが憤っています。それにしてもアイスエンペラー……氷帝ですか。ユーリさんの雷帝と同格ということでしょうか。やはりラファールさんもすごい方なのですね。
「アンタのフローズン・ドミニオンが強力なのは知っているが、大貫さんの攻撃は特殊なんだ。マジで死ぬ。最悪……というか結構マジで。シロクマが燃えてクロクマになっちまうどころじゃねえ。上半身が蒸発する感じのヤツだ」
「う、ウワァアアア」
「おい、田崎が泡吹いて倒れたぞ」
「思い出しちゃったのね。可哀想に」
ゴールドクラブの面々も何やら騒がしいですね。うーん。とはいえ、私も腕試しはしてみたくはあるのですが。
「烈さん、駄目でしょうか?」
現在の私がどの段階にいるのか、海外の実力者の方にも見てもらいたかったので、ラファールさんの申し出はありがたかったのですが……
「自重してくれ大貫さん。こんなダンジョン内でイギリスの英雄が死んだらマジで不味いんだよ。本当に! フリじゃなくて!」
「坊っちゃま、わたくしからもお止めになった方がよろしいかと進言させていただきます。わたくしの直感も騒いでおります故」
「爺までそう言うか。ふぅむ。それはそれで余計に気にはなるのだが、仕方あるまい。この国の上級探索者の言葉を尊重しようではないか」
「助かるぜ」
烈さんが安堵した顔で肩を下ろしました。残念です。
「ミスター・レツ。手合わせは諦めるが、彼の実力についてはやはり気になるし、ラキの今も見てみたいのだ。ここからは我々も同行してよろしいかな?」
「そいつは……うーん。俺は別にいいんだがな。大貫さん、それにみんなは問題ないか?」
烈さんの言葉にゴールドクラブの方々が頷きました。約一名うずくまっていますが、歓迎という感じですね。何しろラファールさんは海外の人気探索者ですからね。私も問題ありませんので頷きました。
「ところでラファールさんが日本に来た目的がラキくんなのは分かりましたが、この熊林渓谷にいたのは何故なのですか?」
先ほどの反応を見る限りは、ラキくんを狙ってここに来たわけではないようですし、先ほど烈さんもおっしゃっていましたが、ここは熊系魔獣の出没エリアです。ラファールさんの格好では誤って攻撃されてしまう可能性も高いでしょう。
「そうであるな。吾輩、ハーレムに興味があってだな。我がワイフの候補を探してたのである」
「なるほど?」
ハーレム。熊のですよね。特にジョークを言っている様子もありませんし、先ほどのラキくんへの反応からすると事実を口にしているのでしょう。しかし、熊ですか。獣人化すると嗜好も変化後の姿に引きずられるのでしょうか。
「ただ、ここの熊たちはみな顔が怖くてな。吾輩、コワモテは苦手なのだ」
「ああ、それは分かります」
ここに来るまでに遭遇した熊たちはみな肉食獣という顔をしていました。もっとも熊はどちらかと言えばドングリなどを主食とする雑食性で、こんな場所に住んでるのですから主食は竹なのかもしれませんけど。
「であるな。吾輩が望んでおるのは……こう、吾輩を包んでくれるような、母性の塊のような女性なのだよ。ふふ、マザコンという自覚はあるのだがね」
熊の……ですよね?
英国の英雄の恋愛事情は難解です。
ともあれ、ここからはラファールさんと御剣さんが同行することとなりました。
非常にお強いおふたりですし、そもそも今のメンバーでもこの辺りでは十分な戦力です。そんなわけでそこから先は特に問題もなく、予定していたアダマンバンブーの生えた竹林へと我々は到着しました。
「ここまでにも黒っぽいのはありましたが、ここらの竹は完全に真っ黒ですね」
近づいて目にしたアダマンバンブーは想像以上に黒く、硬そうでした。これはやはり、ラキくんの爪でも切り裂くのは容易ではないでしょう。
「これを切って持ち帰るのですよね」
「ああ、そうだぜ大貫さん。さっきも見せたこのアダマンストリングでな」
そう言って烈さんが懐から黒いワイヤー、アダマンストリングを取り出すと、目の前のアダマンバンブーに括り付けて、それから一気に引きました。
「おお!?」
けたたましい金属音と共に火花が散りましたが、烈さんのパワーでアダマンバンブーが切れて倒れていきます。
「切れましたね」
「な? こういう風に切っていくわけだ」
「なるほど。ただアダマンストリングがあっても、私ではちょっと無理そうです」
「まあそれなりのパワーはいるからな。ゴールドクラブなら田崎と内藤、大貫さんところならラキもいけるだろう」
「ラキくん、収穫の際には頼りにしていますよ」
「キュルッ」
ラキくんが頼りにされて嬉しそうです。私も嬉しくなってしまいます。
それでアダマンバンブーですが、直径はここに来るまでに見た鉱鎧竹と同じくらいの、8センチメートル以下ではあるようです。これなら私の収納空間にも入ります。
アダマンストリングもすでにありますし、落ちているアダマンバンブーのカケラを解析収納に入れてみましたが、一応上手くいきました。
一応というのは、やはりアダマンタイトの特性故か、アダマンタイトだけを分解して分けることはできなかったのですが、アダマンタイト以外を分解することはできたので、アダマンタイト以外を分離させる形で実質的にアダマンタイトのみを抽出することに成功したためです。これでアダマンタイトが新しい収入源に確定となりましたね。しばらくはここに通うことにいたしましょうか。
……というような実験を私がしている間にも、烈さんたちがアダマンバンブーを切り始めました。ラキくんも一緒にやってみたのですが、問題なくアダマンバンブーを切れたようです。
その間、私は切ったアダマンバンブーを並べる役割をしていたのですが、難しい顔をしたティーナさんが近づいて来ました。
「うーん」
「どうしましたティーナさん?」
「気のせいならいいんだけど……さっきから魔獣との遭遇がないじゃない」
「そういえば、そうですね」
本日の魔獣の遭遇率は高めだったのですが、ラファールさんと遭遇してからは一体も出会っていません。嵐の前の静けさということでしょうか。それともラファールさんという強者の気配を感じて近づいてこない……とか?
「ミスター・オオヌキ」
「おやラファールさん。なんでしょうか?」
私がティーナさんの言葉を不思議に思いながら周囲を見渡していると、ラファールさんが声をかけて来ました。
「少々込み入った話がしたいのであるが、宜しいかな?」
【次回予告】
蒼き錫杖が輝く時、
美しき氷華が花開く。
そこは外からの干渉を弾く閉じた世界。
氷の支配域。
ブリテンの英雄の真髄を前に、
妖精女王が今、真実を曝け出す。





