バンブーパンダ12
超熊大戦編の中編はここまで。レッサーパンダも良いけどシロクマも良いよね。
続きの後編はまだ書き上がっていないので、少しお待ちください。残りはラスト2話とポエムという感じなので、再開までそんなに時間はかからないと思います。
まあ、冠位戴冠戦が終わったと思ったらまた冠位戴冠戦が始まった……そんな時間の無限ループに囚われて抜け出せない作者が悪いのです。
それと収納おじさん【修羅】の2巻が発売決定いたしました。今巻はWEB掲載の2章+αに加えて閉話や番外編などの新規エピソード、一巻と同じく書籍版謎ポエムの善十郎千年紀等も収録されています。
2026年1月15日発売となりますのでよろしくお願いします。
そのほか、表紙とか特集ページとか、追加の情報が出たら活動報告などでも報告しますね。
烈さんが目を見開きましたが、私も嘘は言えません。実際に戦ってみないと分かりませんが、解析解除の鑑定情報ではそうなっています。
「どんなヤツなのかは分かるか?」
「多分熊……なのですが、ここまでにあった魔獣とは別種ですね。白い熊です」
私自身には見えてるわけではありませんので奇妙な感覚ですが、解析解除で得られた情報ではそのようになっているのです。
「烈さんより強いって……統率個体?」
「ヤバいんじゃないか?」
私の言葉にゴールドクラブの面々がざわついています。統率個体と呼ばれる魔獣は、魔獣の中でも特別な存在です。魔獣は基本的には同一種の群れ、或いは上位種をリーダーとした群れで構成されますが、時折上位種からさらに進化した個体である統率個体が生まれることがあるそうです。
統率個体の名の通り、群れを治めるために上位種になった個体が、必要に駆られてさらに能力を特化しているのだとか。鴻巣市のシールドクィーンアントなどもそうですね。
だからこそゴールドクラブが動揺するのは当然ではありますが、烈さんはと言えば、笑っていました。
「はっは、まあ俺は探索者としては上澄みって自覚はあるがよー。けど、魔獣ってのはそこを平気で超えてくるもんだからな」
「まあ、確かにそうですね」
「だろ。そういうのをどうにかするのが探索者ってもんだ」
ドラゴンたちだって、強さだけでいうならば人間を大きく凌駕しますが、それでも私は勝てました。戦いは単純な数字の優劣ではない……ということを考えれば、烈さんの言うことは正しいのでしょう。
「そもそも俺に依頼が来たのだって統率個体の情報があったからだしな」
そう言いながらも烈さんは少しばかり難しい顔をして、私に尋ねました。
「それで大貫さん。そいつはデカいのか?」
「2メートルは超えてますが……うーん。普通のシロクマってどのくらいあるものでしたか?」
「3メートルはあるんじゃなかったか。2メートルとなるとラキと同じくらいか。魔獣の熊種としては平均以下だろうが」
「問題でも?」
「ふたつある」
烈さんがピースサインをしました。いや、これはピースではなく2本の指を立てているだけですね。
「ひとつは俺の聞いている統率個体は姿こそ確認できてないが、大型の反応だったって話だ。だからその白いのは別口ってことになる」
そう言って烈さんが指を一本下ろしました。
「もうひとつは魔獣の統率個体ってのは大型化する傾向にあるんだが、小型ってことは」
「弱い?」
私の返しに、烈さんが首を横に振りました。
「いいや、逆だ。強い。元の形態よりも小型化した場合、能力が先鋭化して大型に比べて厄介な相手になるケースが多いんだ。俺ら人間にとってはだがな」
まあ生物というのは肉体の維持を考えなければ、大きければ大きいほど強いですからね。大きさは単純に分かりやすい強さではあります。それがあえて小さくなったということは、厄介さのベクトルが変わってしまうのでしょう。
「そうですか。であれば、どうしますか?」
「まだ気づかれていないんだよな?」
「少なくとも動いてはいないようです。はい」
私の言葉に烈さんは頷くと「大貫さんに狙撃系の攻撃手段は?」と尋ねてきました。
ソーラービームなら届くでしょうが、離れた距離へと正確に当てられる自信はありません。鉄砲弾もそうですが、そもそもこの竹林の中じゃあ目標に当たる前に竹に邪魔されてしまいます。
「飛ばすだけならできますが、竹林もありますし、当てるのは難しいですね」
「分かった。ゴールドクラブも一撃で仕留められるほどの攻撃はないしな。俺のこいつを使うわ」
そう言って烈さんが腰に下げていた武器を手に取りました。
「烈さんのレッドヴァジュラ……ですか」
レッドヴァジュラは密教の法具である金剛杵、その一種である独鈷杵に似た武器だとオーガニックのホームページに載っておりましたが、まさしくその通りの形状をしています。
柄の前後から二本の刃が伸びた双剣で、名前の通りに刃が赤く染められています。それを烈さんが手にとると、すぐにレッドヴァジュラ全体から赤い放電現象が起き始めました。
「そんじゃあ、一発ブチかましますかぁ」
それは烈さんの意のままに動く遠近両用の異世界産の魔法兵器です。それが今、放たれ……
『警告します。台場烈。貴方の行動は探索者に対する深刻な敵対行為に該当します。警告します。台場烈。貴方の行動は探索者に対する深刻な敵対行為に該当します』
「え?」
「探索者に対する深刻な敵対行為?」
この場の皆さんが一斉に烈さんを、それから烈さんを含む全員が私へと視線を向けましたが、私は首を横に振りました。今も解析解除を使いましたが、やはり反応はシロクマが一体だけです。
どういうことでしょうか? あのシロクマが探索者だとでも?
「いや、待てよ。シロクマ……シロクマで探索者? それって、まさか!?」
烈さんが何かに気づいたのか、驚きの顔をしていますが……おや、近づいてきますね。
「烈さん。気づかれました。こちらに向かってきています」
「ああ、こっちでも把握できた。大丈夫だ。攻撃はするなよ」
烈さんが一歩前に出て、そう言いました。烈さんにはどうやら心当たりがあるようです。そして『ソレ』が竹藪の間から姿を現したのですが……
「おやおや?」
そこにいたのは、シルクハットに英国紳士然とした格好をし、さらには蒼い宝玉を付けたステッキを持っているシロクマだったのです。
【次回予告】
白き獣。その名はラファール。
ソレは愛に生きるケダモノ。
愛ゆえにこの地まで赴き、
愛ゆえに己が運命を探し求める。
そして生まれるは人か獣か。
或いは新たなる種の誕生か。





