ナイトキングダム09
盾の持ち方はサンボル的な感じ。
「ティーナさん。上から遺跡フォーハンズは追ってきていますか?」
「気配はないわね。もう復活はしてるだろうから、まだ来てないってことはこのエリアに入ることができないのかも?」
「なぜでしょうか?」
「人形は入れたくないんじゃないの。多分だけど、ここは特別な場所なのかもしれないわね」
なるほど。であれば、別の何かが守っていないとおかしいと思うのですが……例えば最下層の四方に鎮座しているあの巨大な石像が動いたりとか。見るからに動きそうじゃないですか。関節部も明らかに可動しますよ……という風な構造をしていて、隙間からは歯車らしきものも見えますし。恐らくは最下層に到着した時に動いて、襲ってくるに……
「動きませんね」
「そうね。アレ、絶対動くと思っていたんだけど」
最下層に足を踏み入れましたが、やはり巨像たちは動きません。他に何か出てくる様子もありませんね。まあ動かないなら動かないで良いのですけれども。フォーハンズと戦う邪魔になりますし。
そしてフォーハンズですが……
「こっち見てるわよ」
「フーーーー」
門を叩く手を止めて、こちらを向いて構えております。
気が散ったのでしょうか。かなりお怒りのような気がしますね。まあ、最初からずっと怒りのオーラを出しているわけですから、アレが平常運転なのでしょう。
「ティーナさん。中の方は元人間なのですよね? であれば話が通じたりはしないものなのでしょうか?」
「ゼンジューロー。怨霊ってのはそういうのではないと思うわよ」
「そうですか。じゃあ戦うしかないのですね。む!?」
戦う。そう意識を切り替えたのと同時に、フォーハンズが一気に駆け出しました。
気配で察知したのか、言葉が理解できたのか、どうあれ反応が早いですね。
「クギャアアアア」
「口ができたから叫びますか。とはいえ、まだ距離はこちらに分があります」
フォーハンズの攻撃が届く前に仕掛けてしまいましょう。
「はい。ここにくるまでに橋を砕いて用意した石砲弾五連です」
「ギャッ」
角度を変えての連続砲撃です。正面。左右。上から下から。どれかは当たる……なんて運頼みは想定しておりません。ですが、避ける方向を潰していけば、誘導くらいは可能なのです。
「避けた!?」
「問題ありません。ラキくん!」
「フゥゥウウウ」
最終的に上空に飛んで逃げたフォーハンズに対して、先にジャンプしていたラキくんが剛腕によるガントレットの振り下ろし、通称鉄肉球スレッジハンマーを放ちます。
「ガッ」
対してフォーハンズはバルディッシュを振るって応戦しようとしますが、緊急回避による急な飛び上がりで体勢が整えられていません。なので、ラキくんの攻撃の方が先に当たりました。
ドゴォォオン!
激しい金属音と共にバルディッシュごとラキくんに叩きつけられたフォーハンズが地面に激突しました。
「今です」
そこに私が空気弾を一斉に放ちます。
「おや、これは避けましたか」
「盾と腕をバネみたいに!?」
フォーハンズはダークハンズの時には使わなかった3本目と4本目の腕に持たせた盾で床の衝撃を受け止め、尚且つバネのように腕を屈伸させることで地面から体を一気に跳ね上げさせて、攻撃を避けた……という感じのようです。器用な真似をしますね。
「ですが、そこも私の間合いです。鉄球砲弾!」
そして放つのはパチンコ玉サイズではなく、こちらは収納ゲートの入り口サイズギリギリの80mm鉄球の弾丸です。
「クギャアアッ」
「む?」
これならば……と思ったのですが、おやまあ。ゴンッと鈍い音がしましたが、当たっていませんね。
「盾で受け止めたわよ!?」
「やはり4本腕でちゃんと戦うとなると隙が少ないですね。しかも反撃まで」
気がつけば、後ろ脚の足先がこちらに向けるように変形しております。
アレは先ほども撃とうとした砲身ですね。
「ギッヒィイイ!」
すでにチャージ済みのようで、黒いオーラを収束した光線が私に向かって放たれました。
「おぉぉお!?」
体が一気に吹き飛ばされましたが、幸いアースシールドの護りのおかげで無傷です。
跳ねて床に激突しましたが、アースシールドが消滅と同時に衝撃も殺してくれました。
「ゼンジューロー!?」
「問題ありません」
ダメージはありませんが、アースシールドがない今、次に直撃したら死にますね。困りました。
収納ゲートの防御では隙間からエネルギーが漏れて私にダメージが届く可能性が高いですし、速すぎて、吸引で吸い込むのも間に合わないでしょう。
「む、いけません」
足はふたつ。砲門もふたつでもう一発があります。
そしてふたつ目の砲身も私に向けられています。これは間に合わな
「ギャハッ」
「させないわよッ」
「ティーナさん!?」
割り込んできたティーナさんの乗るサーチドローンのキャッスルシールドと黒光線が激突してスパークしました。私の時とは違い、ティーナさんは跳ね飛ばされずに耐え切ったようです。キャッスルシールドは防御特化なだけはありますね。
「無茶をしますね。ティーナさん」
「私だって仲間でしょ。安全圏で見てるだけじゃない」
「分かっていますよ」
私たちは以心伝心。気持ちも伝わっております。だから次に何をするのかも当然分かります。
「フゥ、ガッ」
「ギィイイッス」
ラキくんが攻撃を仕掛けていきます。砲撃を行った後ろ脚はまだ脚に戻らず、機動力も落ちたまま。
であればラキくんの機動力でも対等にやり合えます。そして、今がチャンスです。
「ティーナさん!」
「転移ッ」
次の瞬間、私の目の前にはフォーハンズの背中が見えました。ティーナさんによる転移で背後に回ったのです。そしてティーナさんとの意識の共有で私は転移先の場所を把握できており、即座に攻撃が可能です。
「ギャ!?」
「この距離なら……空気弾!」
オーラの中に発生させた空気弾ならば通るはず。はい、通りました。
「ギャンッ」
さらにゴム毬のように跳ね上げたフォーハンズを、再びラキくんが鉄肉球スレッジハンマーで叩きつけて床に落としました。足元の門に激突してゴーーンという音が響きます。今回は盾の防御も間に合わなかったようですね。
「ラキくん、押さえてください」
「ガッ」
「グギャ、ガァアアアアアア」
さらに転がったフォーハンズにラキくんが飛び乗ります。
フォーハンズは強引に腰を曲げてバルディッシュで応戦しようとしましたが、
「残念ですが、動きが止まった時点でもう終わりです」
振る前に、フォーハンズの周囲に収納ゲートを取り囲む形で発生させて拘束しました。
ふぅ、拘束完了。これで私たちの勝利です。
【次回予告】
汝は白を望む者。
それはあらゆる穢れを祓うダブルのパワー。
選択は今、善十郎の手の中に。
穢れし黒は驚きの白さに。
そして太陽は優しく微笑みを浮かべた。