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ナイトキングダム07

「これまでの光景とは随分と違うわね」

「そうですね。見たところ、ここは巨大な筒の中……いえ、塔の中のようです。この遺跡自体は地中に埋まっているはずなのですが」


 ガーン、ガーン、ガーンという音が響く塔内部の吹き抜け内には、横切るようにかけられた橋がいくつもあります。それは吹き抜けの内側の壁にある螺旋状の下り道と繋がっているようです。


「元々地下空間の洞窟なんでしょ、ダンジョンって。ここがさらに下層の洞窟内の塔って可能性だってあるんじゃないの?」

「なるほど。それは確かにあるかもしれません。ふむ。この道をこのまま進んでいけば、最下層まで降りられそうですねティーナさん」

「そうね……うーん?」

「どうかしましたか?」


 ティーナさんが首を傾げています。

 何か気になることでもあるのでしょうか。いえ、気になることだらけではあるのですが。

 たとえば、最下層の門ですね。床に置かれた巨大な円状の門なのですが、真ん中にまっすぐ線が入っていて、恐らくは左右に開くような構造になっているようです。

 もしかするとアレは、かつて存在した強大な魔獣を封印した何かだったりしないでしょうか。そう考えると、いかにも危険なものが眠っているように見えてきて、何と言って良いのか難しいところなのですが、その……年甲斐もなく恥ずかしいのですが、先ほどから感じる『プレッシャー』も含めて、少々ワクワクしています。

 あの門を開けたら何が起こるのか、押してはいけないボタンを押したい衝動というのでしょうか。先ほどからガーン、ガーンと響き渡っている金属音も私の心を沸き立たせる一因となっています。


「……ふふふ」

「ゼンジューロー?」

「ティーナさん。あの門、もしかすると危険な存在を封印しているものだったりしないでしょうか?」

「いや、違うと思うわよ」

「む、ハッキリと言いますね」


 ティーナさんはどうやら、何かしら確信を持っているようです。


「では、アレはなんなのですか?」

「シェルターかな」

「シェルターですか?」


 返ってきた答えに、私は首を傾げました。


「そうね。城塞の腕輪を修復する時に参考にした資料と、ここは酷似しているの」

「資料ですか?」

「インドのダンジョンで発見された施設なんだけどね。それに似ているのよ」


 インドですか。浅学なので、思い浮かぶのはカレーくらいなのですよね。カースト制度や0の概念とかありますが、やはりカレーくらいしか思いつきません。後は車がヤギに食べられる……とか?


「そのダンジョンの施設も、スケールはここの1/10くらい小さいけどね。ほら、あの壁に描かれた模様、全部魔法回路。この橋の配置もエネルギーの流入を促進する形になっているし、要するにこの施設自体が巨大な魔法具なのよ」

「ここ自体が魔法具ですか?」


 それは、ずいぶんとスケールの大きな話ですね。


「単純に言えば、ここは周辺の魔力を吸収して、門の先に流れるような造りをしているの。サーチドローンに搭載した城壁の腕輪の輪っか部分を大きくしたものに近いわね。こっちのは装着者の魔力を吸うのだけれども」

「ふむ? 魔力をですか」

「うん。まあ、境界の森は見ての通り、アストラルラインが今は天井付近を漂ってるけど、以前はこの辺りの地下を通ってたんじゃないかしら。多分この施設はそれから魔力を吸っていた。ただもうアストラルラインはこの場に流れていないから、もうここは機能はしてないと思うわよ」

「……なるほど」


 アストラルライン? 確か魔力の河のことでしたよね。免許を取るときの筆記試験に出ていた気がします。

 上空に流れていれば魔力の雲になって光り、大地の中に流れていれば魔力結晶を生やして周囲を光らしてくれる、いうならばダンジョンの太陽のような存在です。ここはそのアストラルラインから魔力を吸収して門の先に送り届ける施設というわけですか。


「おや、ということはですね。門の先のシェルターも今は稼働していないということですか?」

「少なくとも全盛期と同じようには無理でしょうね。ただ、遺跡フォーハンズは動いているわけだから完全停止しているわけではないだろうし……それに仕掛けの規模を考えればあの先にあるのはシェルターというよりは、都市規模の可能性だってあるかも」

「都市ですか。ますますスケールが大きくなってきました。となると上の階は何だったのでしょうか?」

「崩れた遺跡の方は見てないから分からないけど、あの宮殿みたいな遺跡は見た通りのものなんでしょ。多分、貴族だか王族だかが利用してたんじゃない?」


 なるほど。遺跡フォーハンズや罠などに気を取られましたが、そもそもが豪華な造りでしたし、確かに見た目通りに高貴な身分の人間が利用していたエリアだったのかもしれないですね。

【次回予告】

 思い浮かべるは理想郷。

 広がる未知の異世界都市。

 されど、油断は禁物。

 その先にあるのは禍きモノ。

 幾千幾万の怨嗟の坩堝。

 そして立ちはだかるは古の騎士。

 邪悪に育ったかつての従属。

 それは邪魔する者を斬り伏せる、

 異形の修羅なり。

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収納おじさん【修羅】の書籍版1巻はアース・スターノベル様から発売中です。
WEB版ともどもよろしくお願いします。

収納おじさん書影

【収納おじさん特集ページはこちら】
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― 新着の感想 ―
囚われのお姫様(フォーハンズ)を早く助けなきゃ!
ティーナさんが参考にした施設と酷似しているのならここも資料価値は中々に高そうですねえ
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