ナイトキングダム04
初期のイメージ的にはクスィフィ◼️ス・レール砲だったのだけれど、下半身の後部が折れて背中にバックパックとして付くので構造的にはヴェ◼️バーっぽい?
折れたところからブースターがせり出て機動性は確保できるけど、燃費悪いからブースター機動の運用は短時間だろうなーと。大体そんなイメージで。
ギィンッという金属音が響きました。
これで本日三回目の不意打ちです。多過ぎませんか?
まあ収納ゲートをまとめて発現させたので、バルディッシュの一撃は私に届いておりませんが。問題なのはソレを振るった相手です。
「なぜ、ウチのフォーハンズが私を攻撃しているのでしょうか?」
「フーーーー、ガッ」
ラキくんがとっさに飛びかかりましたが、フォーハンズはそれを避けました。
恐ろしく速いステップです。見れば、今のフォーハンズはダークハンズ化しています。つまりは下半身が四脚のケンタウロス形態です。あの四本足でのステップでラキくんの攻撃も難なくかわしているようですね。
「嘘でしょ? フォーハンズが私の支配から離れてく!?」
何かが起きているようで、ティーナさんがかなり慌てています。
またフォーハンズの体が接続された四脚台からどんどんと黒く侵食していっています。頭部にあるひまわりのような花も花芯や茎が黒く、花びらが赤黒く染まっていきます。
さらに身体中を増殖した茎と根が覆い始めていますし、全身から黒いモヤを放つ禍々しい感じも先ほどよりもずいぶんと濃くなっています。
これは、明らかに異常です。
「ティーナさん、フォーハンズはどうしたのですか?」
「分からない。分からないのよゼンジューロー。フォーハンズが私の支配を受け付けない。何かに邪魔されてる!?」
「何かというと……あの四脚台と合体したことが影響でしょうか?」
「かもしれない。フォーハンズにやらせたのは失敗だったわね。あの黒いモヤ……四脚台自体がもしかするとスピリット系、それも怨霊の類に取り憑かれていたのかもしれないわ」
「というと?」
ラキくんと私の攻撃を、フォーハンズが避けていきます。
明らかに動きが先ほどのダークハンズよりも良いですね。私たちのフォーハンズの方が遺跡フォーハンズよりも基礎性能が高いせいでしょうか。それに先ほどは使わなかった3本目と4本目の腕も盾を構えてこちらに向けているので、隙がありません。
「スピリット系なんて滅多に出ないものだから、映像記録で少し確認しただけだけどね。多分、あの全身から湧き出ている黒いモヤは取り憑いている怨霊の負のオーラだと思う。最初に会った時から出てたし、気付いておくべきだった」
ティーナさんが悔しそうに言いますが、私は全く気づきませんでしたし、ここまでに怨霊が出るような前振りもありませんでしたから仕方のないことだと思います。なるほど。スピリット系。そういうのもダンジョンにはいるのですね。
「ティーナさん。フォーハンズを戻す方法はあるのですか?」
「そうね。私がアレに直接触れられれば……なんとかなると思う」
「それって、ティーナさんが取り憑かれたりしませんよね?」
「馬鹿ね。魂の格が違うわ。妖精女王様が取り憑かれるなんて、あり得ない」
「……分かりました。では」
やることは先ほどとそれほど変わりません。倒して拘束し、ティーナさんに直してもらいます。
「ラキくん。最悪ハイマナジュエルを破壊しても構いません。予備はありますので。まずは動きを止めます」
「ガッ」
私とラキくんの連携で攻撃を仕掛けますが、上手く避けられ、また盾で塞がれます。先ほどのダークハンズの時使えなかったのは、やはり壊れていたためでしょうか? それにあの動き、まるで高レベルの探索者と戦っているかのようですね。
烈さんとの模擬戦の時に近い感覚がありますが、問題は私の収納ゲートの力を相手が把握していることです。恐らくフォーハンズが学習したものがそのまま引き継がれている為に、私の攻撃手段をあらかじめ予測した動きをしているようです。性能が向上した上にずいぶんと慎重になっていて、中々私の攻撃が当たりません。さて、どうすれば……む?
「ゼンジューロー、フォーハンズの形状が変化したわ」
「なんと!?」
四脚の後部が折れて背中に付いて、後ろ脚が可変して正面に向けられています。足先が砲身のように穴が空いているということは、まさかアレは撃てるのですか?
「それでも収納ゲートなら」
私は咄嗟に正面に収納ゲートを集めて盾にしました。これなら防げるでしょうし、隙間から漏れるような攻撃でもアースシールドもあります。一発なら確実に防いで……
ドンッッッッ
「む!?」
「え?」
「キュッ!?」
これはフォーハンズの攻撃? いえ、違いますね。
「地震……じゃないわね。浮いている私が感じたんだから、物理的な振動じゃあないわよ」
ティーナさんの言う通り、ひどく重厚な圧力のようなものを足元から感じました。これはフォーハンズからではなく、おや?
「フォーハンズ……がいません?」
「あ、あっち。逃げてるわよゼンジューロー!?」
本当です。足も四脚に戻して全力疾走です。
ちょっと、どこに行くのですか。待ってください!?
【次回予告】
過ぎ去りし憎悪を追い、
さらに深く、さらに奥へと男は進む。
地上の光と地下の光、再び起きた力の進化。
すべてが混迷とする状況を前に、
善十郎は何を望み、何を成すか。