表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

138/162

ナイトキングダム01

書籍1巻発売記念の本日2話目の更新です。

次回更新は3月16日21時で隔日更新に戻ります。


実は……今章の最初に伏線はあったのです。

 彼は夜の王であった。

 彼は負のオーラを昇華させて誕生した死者の王であり、魔王のひとりであり、長きに渡って国を発展させてきた為政者であり、敵対者には死を与え、生者と死者の狭間の存在である屍属人を民として富ませ、日の届かぬ地の底で千年の王国を築き上げてきた賢王であった。

 彼の本質は邪悪の類ではあったが、静寂を尊ぶ死を司る為に平穏も愛していた。

 故に彼の国は死の匂い漂う国ではあったが、秩序を以て支配され、穏やかで幸福な国でもあった。

 だから彼が良き王であったかと問うならば、是と答えるべきなのであろう。人類の敵とされる魔王と呼ばれながら、至高の十二王のひとりにも数えられるほどに、彼は偉大な存在だった。


 けれども、世界は終わりを迎えた。


 竜たちが終焉獣と呼ぶ大厄災、その後にすべてを台無しにした大狂乱によって世界の終わりが目前となった時、夜の王は最後の手段に出た。

 彼は自らの国の民たちの大虐殺を始め、己が愛する民草を殺して、殺して、殺し尽くし、彼らの命の光を黒き呪いへと転化させ、自らの一部へと変えていったのだ。そうしてすべてが終わった時、彼はもはや王ではなかった。

 ソレはひとつの概念にして、ひとつの存在にして、ひとつの王国。


 すなわち厄災魔獣『夜の王国(ナイトキングダム)』。


 自らを王国そのものと化した王は、終焉獣より逃れるために、狂乱の獣たちから逃れるために、地下世界のさらなる地の底、自らの霊廟へと籠った。

 残された者たちの怨嗟の声を置き去りに、奪われた者たちの憎悪を退け、すべてを機械人形に任せて自らを霊廟に封印した。

 その有り様はどうあれ、結果的に彼は彼の望む通りに、世界の終わりを回避し、己の王国を存続させるに至った。

 その形はどうあれ、彼は誰にも成し遂げられなかった奇跡を成し遂げた、偉大なる王であった。

 彼は永遠を成し遂げた……はずだった。


 ?


 唐突に、まったく突然に、総毛立つような悪寒が彼の全身を駆け巡った。

 それは恐らく、かつて彼を灼いた輝きだった。地下に国を築く前、地上より彼を退ける原因となった忌むべきモノだった。


 !


 そして、彼にとっての敵は……




———————————




 はい、あれは一昨日のことでした。

 そうですね。具体的にいうと、ユーリさんが全裸土下座した日のことです。

 その日、私はホテルの裏庭で空を見ていたのです。

 凛さんのように空を飛びたい。その為にはどうしたら良いのかを、ずっとずっと考えていたのです。

 収納ゲートを足場に空を歩くことはできますが、私がやりたいのはそういうことではありません。空を自由に飛びたいのです。

 収納ゲートの出現位置は相対座標ではなく、絶対座標なので空気弾をブースター代わりに使うこともできません。であればベニヤ板などに撃って飛ばして、それに乗って飛ぶのはどうだろうかとも考えましたが、試してみたらベニヤ板は一瞬で壊れました。

 乗っていたら私、死んでいたと思います。そもそも板が丈夫でも空気弾の衝撃だけで私の体はバラバラになりそうです。

 これはちょっと無理だと思い、別の方法を模索し続けました。考えて、考えて、考え続けて、途方に暮れ、ふと空を見上げて気づいたのです。


「太陽が眩しいですね……と。そして生まれたのが今の必殺技『ソーラービーム』です」

「脈絡!?」


 ティーナさん。発想とは突然湧き上がるモノなのですよ。

【次回予告】

 沈黙の理由は忘却の彼方へ。

 全ては偶然。或いは必然か。

 そして太陽を手中に収めた男は、

 光の導きによって再び一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納おじさん【修羅】の書籍版1巻はアース・スターノベル様から発売中です。
WEB版ともどもよろしくお願いします。

収納おじさん書影

【収納おじさん特集ページはこちら】
キャラクター紹介や試し読みが見れます。
― 新着の感想 ―
フ◯ースガン、ス◯イシス、コ◯パクトビーム。 手足をもぐカッターも欲しい。
某、目が後ろにもついているパイロット「だ、だめだ! あれは憎しみの光だ! あれは光らせてはいけないんだ!」
どうやって何を収納してるんだろうw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ