アヴィスパレス05
書籍版1巻の発売日まで後4日!
オートマッピングに関してはジャイロセンサーや加速度センサー、カメラ、LiDAR辺り使って、穴埋めはAIで補完して3Dモデル化しながらマッピングしてると思います。技術的には一応、現実でもできる範囲ですね。
「うーん、どこまでも変わらず豪華ですね」
玄関ホールからずっと進み続けていますが、相も変わらずの光景です。まあ、どうもエリアごとに何かしらのテーマがあるようで、ティーナさんにはある程度の違いが分かっているようなのですが。
同じ記憶を持っていたはずなのに、やはり一般庶民と妖精女王の差が出ているのでしょうか。
「収穫は、今のところこれぐらいだけどねぇ」
そう口にしたティーナさんのサーチドローン内にはいくつかの宝石が敷き詰められています。それらは道中に探索した部屋の中で、ティーナさんが良い魔力が篭ってるからと拾ったものです。
「調度品を持ち帰るにしても嵩張りますしね。ある程度探索し終えたら、帰りにいくつかは回収したいところです」
「一応の目星は付けてるからね。部屋の位置はシーカーデバイスで分かるし」
この第二遺跡内部を解析解除で把握しきることはできませんが、ジャイロ機能などが搭載されているシーカーデバイスがオートマッピングをしてくれています。なので、シーカーデバイスでマーキングをしておけば、目的の部屋までナビ付きで戻ることも容易なのです。
「ただ、今のところ我々にとって金銭的以外に有益なもの……というものは見つかっておりませんね」
「ほとんどが魔法具ではない、普通の美術品だものね。ま、正直私にも価値は分からないけど」
「妖精女王でもですか」
「頭の中身はゼンジューローのものに置き換えられてるからね」
「なるほど。それはそうですね」
私の価値基準では判別できるわけもありませんか。分かるところは分かるようなのですが、その差はなんなのでしょうね。感性と教養の差?
ふむ。少し進みましたし、解析解除を使いましょうか。
うーん。なるほど。
「ティーナさん、前後からまた遺跡フォーハンズが集団で来ているようです。分かりますか?」
「ふんふん。なーる、問題ないわ。前方の群れの後ろに移動するわよ」
「お願いいたします」
私の言葉と共にフッと景色が変わりました。
と言いましても同じ遺跡内の通路ですので、それほど違いはありませんけれども。
今ティーナさんが行ったのは、迫ってきている敵の背後への転移です。私と認識を共有することで、ティーナさんは解析解除で把握した場所を座標として転移することが可能です。
つまりは挟み撃ちをしようとした敵の裏をかけるというわけですね。
「それにしても気付かれないものですね。監視カメラのようなものがあれば、すぐに捕まえられるでしょうに」
「うーん。異世界文明の技術力なら監視カメラだって作れそうだけど、そういう発想がなかったのかもね。魔法的な造りだと逆探知で反撃を喰らうかもだし、転移を妨害している仕組みが邪魔をしてそういうものを取り付けられなかった可能性はあるかも?」
ティーナさんの言葉に私も「なるほど」と頷きます。
「ただ、あいつらの動きには規則性を感じるし、遺跡フォーハンズ同士は何かしらの連絡手段があって、私たちを追っている感じがするわね」
「確かに今の挟み撃ちのような行動は、個別に動いていてはできませんか。ワイヤレス給電と同じように遺跡を通じて指示を受けているのかもしれませんね。おっと、ティーナさん。あの扉の先、何かありそうな気がします」
「如何にもって感じね。微妙に変な意図を感じるけど」
「とりあえずは入ってみましょう」
一応解析解除でチェックはしますが、何かが待ち伏せている様子はありません。それどころか……
「わぁ。ここはすごいわね」
「はい。どうやら当たりを引いたようです」
慎重に扉を開けて中に入りましたが、これはすごいですね。
恐らく貴賓室だったのでしょう。壁際に所狭しと魔力を帯びた調度品が並べられ、中央には金細工の金具と紅の生地であつらえたソファーが置かれています。
「あの飾られた全身甲冑の武具や防具、アレだけでもとんでもないものなのは分かります。そんなものがゴロゴロと。あの籠に入った金の鳥、動いていますが普通に魔法具ですよね」
「はは、この部屋のものだけでも持ち帰れれば大金持ちじゃないかしら。多分一生遊んで暮らせるわよ」
「ですねえ」
ここでFIREをするつもりはありませんが、それだけの財が手に入ればお金には困りません。やりたいことだけをやって生きていくことも可能でしょう。
ところで……部屋の中央に飾られている錫杖。アレはなんでしょうか? 気になります。ちょっと手に取ってみても良いでしょうか?
【次回予告】
彼は愚かであった。
愚者であったのだろう。
或いは人ではなかったかも知れぬ。
目の前に甘蕉があろうと、猿とてまず疑う。
つまるところ、彼は猿にも劣るのだ。
故に鉄の顎門は閉じられる。
ただ、その愚かさ故に、
善十郎の未来は闇に閉ざされるのだ。