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ボスキルアナトル08

「あ、ゼンジューローがボスを倒した」

「え、もう?」


 あーしが力をセーブしながら迫るソードアントを小突いていると、ティーナちゃんからそんな言葉が出てきた。

 確かにソッコーで倒してくれるとは思ったけど、本当にソッコーだったね。あー、どう戦うのか見てみたかったなー。ゲートを解放した時だって何かを出したことぐらいしか分からなかったのに。


「うん。ゼンジューローのやったーって気持ちが届いてきてる」

「おじさんはそういうとこ可愛いよねー」

「そう?」


 ふーちゃんが首を傾げているけど、ふーちゃんじゃあ分からないかなー。このレベルの話はさー。まあ、いいや。


「しっかし。従魔って、そういうのも分かるんだねー」

「従魔はテイマーに付き従うというよりも、手や足みたいな自分の一部的なところがあるからね。ま、私は私で自我はあるから私がおじさんそのものってわけじゃーないけどね」

「へー。あーしのベイビーちゃんも従魔になったらそうなるのかなー?」


 流石に抱えて持ってこられなかったから置いていったドラゴンの卵。一応まだしばらくは孵らないって話だけど、さっさと戻って魔力注いであげないと。となれば、こっちも頑張らないとね。


「そんじゃあ、みんな下がって。おじさんの帰り道作るから。あーしも女見せちゃうよー」


 そう言って、あーしは拳を振り上げる。

 あーしのスキルは雷霆。雷系統は広範囲に雷を放てるし応用性は高いけど、ミドルレンジからロングレンジのスキルと思われてる。けどあーしの本来のスタイルは違う。あーしが本当に得意とするのはショートレンジ。ゴリッゴリの格闘戦。そして、これが


「あーしの自慢の拳だーーー! ううううりゃァアアアアアアアア」


 高濃度の魔力の雷で構築した巨大な拳をあーしは正面に放った。サンダーパンチと人は言う。うむうむ。今日も完璧。ソードアントがまるでゴミのように吹き飛んでおるわ。あーけどー。もう限界かもー。へにゃー。


「蟻たちがぶっ飛んでる」

「スゲッ」

「って、風間さん。ぶっ倒れてる」


 おっと、あーしは限界超えちまったぜ。うーん。立てぬ。


「ユーリさん、助かりました」


 おお、フォーハンズと一緒にラキくんに乗ったおじさんが飛んで戻ってきた。あれ、今完全にラキくん、空走ってたよね? ラキくんって空も走れるんだね。スゲー。




———————————




「ユーリさん、助かりました」


 私は潰れたカエルのように倒れているユーリさんにそう声をかけました。

 実際、困っていたのですよ。女王の間とでも言うのでしょうか、あのシールドクィーンアントがいた部屋から出ようにも入り口にソードアントが密集していて出ることができなかったのです。そこにユーリさんのものだろう雷が飛んできて、ソードアントを吹き飛ばしてくれました。

 それから回収を頼んでいたラキくんとフォーハンズをすぐに呼んで、そのままラキくんに乗って収納ゲートを並べた空中に道を作ってソードアントの上を走ってもらって戻ってこられたというわけです。


「シールドクィーンアントは仕留めました。後は脱出でよろしいんですか?」

「オッケーだよおじさん。後は外に出るだけ。ソードアントがまた増えてきてるし、急ごう」


 なるほど。別の通路からソードアントが次々と出てきています。動きが妙にオーバー気味なのは女王がやられて怒っているからでしょうか。


「分かりました。ラキくん、ユーリさんを乗せてください。もう彼女は限界のようです」

「キュルッ」

「うう、面目ねえ。おじさんは?」

殿(しんがり)を務めます。ティーナさんはゲート前が確保できたら怪我人を先に転移させて脱出させてください。フォーハンズは私の防御をお願いします」

「オッケー」

「私も手伝うよ大貫さん」


 迫ってくるソードアントの群れはまるで黒い波のようです。母親が殺されたことの恨みか、地上に出るのを拒まれた苛立ちか。ともあれ、通すわけにはいきません。


「駄目押しの三連撃で数を減らします。跳弾に気をつけてくださいね」


 ジャガガガガガガガガガガッ


 免許センターの時のようにパチンコ玉の雨を上から降らしました。一気にソードアントたちが崩れ落ちていきます。


「うっわ、ヤベー」

「イテッ。なんか飛んできた」

「これパチンコ玉か?」

 

 この距離だと跳弾は出ますね。まあそれで怪我をされてる人はいないようです。ともあれ、これで打ち止めですので、後はフォーハンズの盾二枚に守られながら、空気弾で撃ち倒していきます。石散弾や石砲弾ならまとめて倒せるでしょうが、込めている余裕がありません。


「まったく本当にルーキーには見えないね」

「水瀬さんもさすが上級探索者ですね」

「嫌味にしか聞こえないんだけどさ」


 そう言いながら水瀬さんは魔法具らしい鞭で迫るソードアントをまとめて倒しています。当たるたびに衝撃波が飛んでますので、かなりの威力なのでしょう。しかし、数が多いですね。ふむ、チャージ完了しましたか。では……


「圧縮空気弾です」


 塊の中心に向かって撃ち込みました。

 ソードアントの群れがまとめて吹き飛びます。


「ゼンジューロー、全員ゲートに入ったよ。私たちが最後!」

「分かりまし……あ」


 シールドクィーンアントが……三体出てきました。先ほど倒した個体よりも小型のようですがなんで今、急に。


「ゼンジューロー、多分アレは新女王。元女王が死んだんで新天地を求めて動いてるんじゃないかな」

「それがゲート先ですか。私たちの世界には来て欲しくはありませんねえ」


 それに従えているシザーズアントの数も多いですね。アレらがゲートを通って出てこられると不味いかもしれません。


「ゼンジューロー、どうする?」

「一旦ゲート外に出ます。対処は……」


 ゲートのサイズを考えれば、二体同時には出てこれません。であれば、シールドクィーンアントの一体がゲートを越える瞬間に収納ゲートで挟み込んで固定。そのまま蓋がわりにすれば他のシールドクィーンアントは出てこれないのではないでしょうか。


「可能です!」

「分かった。じゃあ出るよ」

「はいっ」


 ティーナさんとフォーハンズに担がれた私が一斉にゲートに飛び込みました。出た先はもちろん鴻巣市のポピー畑です。では、彼らが出た瞬間を狙って……


「ギィッ……ガ!?」


 よし、ゲートから出てきたシールドクィーンアントの頭部を収納ゲートで固定成功です。後は横から出てきそうなソードアントの処理を。おや? 頭上に影が……


「ヒャッハァアアアアアアア!」


 そして、私が見上げると、そこには甲冑姿の老婆がウォーハンマーを振り下ろす姿がありました。

【次回予告】

 風間ユーリが雷神なれば、

 その老婆は光の化身。

 黄金の鉄槌を振るう破壊の化身。

 精強にして脆弱。

 豪胆にして不遜。

 三船ベラ。

 その生き様は善十郎とは異なり、

 されどその有り様は善十郎に近しく。

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― 新着の感想 ―
横入りかあ お行儀悪いですね 一番キツイところは避けて機会を狙ってたなら老獪
生きてたんかワレ! てっきり出オチ要員になるのかと。いやここからまたダンジョンの底が抜ける可能性も?
こんばんは。 いよいよ修羅おじさんと修羅BBAが邂逅か…血の雨が降るか?
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