ラプラスは悪魔 6話 予知なんて無い。
実質最終回です。長いです。
【6話 予知なんて無い。】
7月十五日。一学期も残りわずか。あと数日登校をするだけで終業式の日を迎える。その次の日からはお待ちかねの夏休みだ。僕たち6の2の面々も、みんな一年で最長の長期休暇を目前にして浮足立っている。もちろん僕だってその一人だ。小学生最後の夏休みをどう過ごすか、考えるだけでワクワクする――はずなのだが、やはりあのことを無視していては、気は晴れそうにはなかった。
あのこと、というのはもちろん【ラプラス】のことだ。
この春に、僕たちのクラスには文部科学省よりスマートフォンが配られた。そのスマホは授業や宿題などの学習のほかにも、チュイッターやインスタなどのSNSの使用にも使うこともできた。制限はあらかじめアプリに登録されている各アカウントを用いるということくらいで、あとは各自の自由にそれぞれのサービスを楽しむことができるのだ。
そんなスマホを配られた初日に、僕たちが発見したとあるチュイッターアカウント、それが【ラプラス】だった。【ラプラス】はその登録されている位置情報から、僕たちのクラスの人間が使用しているアカウントだということが分かった。しかし逆を言えばそれくらいしかわからず、【ラプラス】はフォローしているアカウントも、【ラプラス】のことをフォローしているアカウントも0の謎の存在だった。
そんな正体不明のアカウント【ラプラス】ではあったけれど、後に僕はそれが、僕たちのクラスにおける一日未来のことを呟くアカウントなのだと知ることとなった。僕たちのクラスで使用しているスマホの情報を基に、人口知能つまりはAIがプログラミングを用いた演算を行い、次の日に僕たちのクラスでおきるいくつかのできごとを当てていくのだ。
そんなトンデモびっくりAIとの付き合いを三か月ほど続けて、僕はひとつの結論に辿り着いた。
【ラプラス】は未来予知なんてしておらず、
生きた人間が操作している普通のアカウントなのだと。
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ではどうして生身の人間が未来予知などという芸当ができるのかというと、あれは予知ではなく予告でしかなかったからだ。ただ次の日に起きうること――当人が起こすことを投稿しているだけなのだ。
これまでの予言の中から、説明のつきやすい例をいくつか挙げてみよう。
たとえば天気のことだ。これはすぐに分かるようなことだが、単純にテレビやネットから天気予報の情報を引っ張ってきているだけだ。しかしそれらの天気予報の情報も、毎回正しいとは限らない。だからか【ラプラス】は毎日天気のことを投稿しているわけではなかった。おそらく天候が荒れやすい日には、天気への言及を避けていたのだろう。
つぎに給食の内容だ。これも単純な話で、学校から配られる献立表を見ればわかることだ。次の日のメニューどころか、一か月先のことだってわかる。
予知の投稿にはクラスの個人が登場することもある。たとえば[大翔クンがスヤスヤしていて怒られる]という投稿があった。彼の親友としては情けない話だけれど、午前中に体育の授業があった日の、給食を食べた次の五時間目の授業では大翔が居眠りをしてしまうということくらい、6の2の人間なら誰しもが知っていることだ。
そのほかの難易度の高い予告でいえば、先生の遅刻だとかテストに何が出るか、などがある。実はこれらについても、手段さえ選ばなければ予告をおこなうことは可能なのだ。
しかし、思えばこれらについての予知がなされていたせいで、僕はこの【ラプラス】が未来を本当に予測しているのだと、まぬけにも騙されてしまったのかもしれない・・・・・・。
僕が教室の扉を開けると、すでにソイツはそこにいた。時計を確認すると、僕が呼び出した時間より五分も早かった。けれど放課後になってからしばらくが経っていたため、他の生徒の姿は見られなかった。
扉の開く音で、僕の入室に気が付いたのか、向こうがこちらに振り向いた。
「どうしたの、急に呼び出して」
白々しい声だった。僕はどう切り出すか少しばかり思案する。僕の見立てが正しければ、いま目の間にいるコイツこそが【ラプラス】のアカウントの持ち主なのだ――つまり、すでにいくつもの犯罪を犯しているということになる・・・・・・油断は禁物だ。
【ラプラス】の新学期二日目の予言にて[飯島てんてー遅刻したね]というものがあった。次の日、見事に僕たちの担任である飯島てんてー、つまり飯島先生は授業に遅刻をした。教え子として情けない話だけれど、ドジな飯島先生は授業に遅れて教室にやってくることが珍しくなかった。けれどあの日の先生の言い訳は、それまでにない、珍しいものだったことが印象的だった。
『・・・・・・なぜか授業に使う資料が、別の先生の引き出しに入っていたから、それを見つけるのに時間がかかってしまっただけなのです』
飯島先生はよくミスをしでかすけれど、それでも嘘をつくような人間ではないことは僕にはわかる。飯島先生が授業に使う資料を探すのに時間を要したというならば、それは事実なのだろう。もしかしたら本当に飯島先生の不手際で、自分の資料をほかの先生の引き出しに入れてしまっていたという可能性もあるけれど、これに限っては僕はそうは考えない。
飯島先生は【ラプラス】の予知を正しいものとさせる思惑によって、犯人にわざと授業の資料を隠されてしまったのだ。これについては何かの用で職員室に入った時、あるいは職員室に用がなくともほかの誰からも気づかれないほどに存在感の薄い人間ならば、実行は可能だ。ほかの先生が相手ならともかく、あの注意力散漫な飯島先生が相手ならたやすいことだろう。
それから【ラプラス】はしばしば、テストの出題に関する予言も行っていた。過去には一度だけ、授業でも習っておらず教科書にも載っていない『防風林』という言葉がテストに出ることすら予言していた。手段を択ばなければ、こんな予告だっておこなうことは可能だ。単純な話だ――前日の夜までにテストの内容を盗み見てしまえばいいのだ。
とはいえ、テストというものは僕たち生徒の成績を決める大切なものだ。簡単に手に入るようなものではない。おそらく先生たちだって鍵付きのロッカーや引き出しに入れて保管しているのだと思う。
けれど、この例に飯島先生は当てはまらないだろう。・・・・・・先生の名誉のために断っておくけれど、特別あの人がだらしないからというわけではない。
飯島先生は、というより僕たち6の2を教える先生たちはみんな、テストを書類ではなく――データで保管しているからだ。
物理的に鍵をこじ開ける行為を『ピッキング』と呼ぶけれど、そんなことを職員室でしていたら、どれだけ影の薄い犯人であっても、すぐに他のだれかにばれてしまうことだろう。でも、ネットワークを通じて不正にデータを入手する『ハッキング』なら? 難易度はぐっと下がるだろう。授業中にも電子版ではなく紙版の教科書を使うほどに機械オンチな飯島先生のことだ。まともなセキュリティソフトを入れているとは思えない
もちろん、ハッキングだって簡単なことではない。普通の小学生にできるようなことではないだろう。
・・・・・・じゃあ普通の小学生ではなかったら?
たとえば家に最新のPCが何台もあったり、幼いころから親からデジタル教育を受けているような人間だったら・・・・・・?
そう。
これまでにあげた条件をすべて満たす人間が、僕たちのクラスにはいたじゃないか!
なるべく平静を装って、こちらが向こうを怖がっていることを悟られないように、僕は相手の目を堂々と見据えた。
「お前さ、僕になにか隠していることがあるんじゃない?」
「・・・・・・」
そいつは僕の言葉を受けて、少しだけ目を大きく開いて、それから顎に手をあてて考え込んだ。やがて、小さくため息をつくのが聞こえた。
「参ったな・・・・・・さすがは賢人くんだ」
そう言って――沼田は笑った。
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疑うきっかけは木下の言葉だった。
『さっき沼田くんに教えてもらったんだ。午前中に橋本くんがエサやりしてたって・・・・・・』
どうして沼田が、僕のエサをやっているところを見ていたのか、当時も疑問には思っていた。けれどあの時は、僕が【ラプラス】の予言をもとに行動していたことを悟られまいとするのに必死で、そこに考えが至らなかった。沼田はずっと、僕のことを監視していたのだ。
その日の【ラプラス】の予言では、五時間目の体育の授業はドッチボールになるはずだった。しかし僕が予言の一つを崩したことによって、種目はサッカーになった・・・・・・ように思わされたのだ。
僕が人口知能【ラプラス】の未来予知について立てた仮説で『予言のうちの一つを崩せば、それ以降の予言が成り立たなくなる』というものがあった。未来を予測するなど、いくら人口知能といえど難しいことだ。それも未来予知に使える材料は前日までの6の2のデータのみ。ならば当日に、未来予知の内容を知っている僕が邪魔をしてしまえば、精確に組み立てた未来予想図を崩壊させられると考えたのだ。そして実際にその通りになっていた――沼田の手によって。
たとえばあの日でいえば、僕がメダカにエサをあげなければ、沼田はドッジボールを提案して、僕がメダカにエサをあげたらサッカーを提案するつもりだったのだろう。あの日は体育の授業でも、それまでやっていた器械体操が終わったばかりで、飯島先生が僕たちに授業内容を選ばさせることは事前から予見できたことだ。そして公平性を期すために、飯島先生がその日の日付と同じ出席番号を持つ生徒に種目の選択権を与えることだって、読もうと思えば読めた展開だ。
・・・・・・どうりで6年生になってから、やたらと教室で誰かの視線を感じると思ったんだよな。
ほかにもいくつも説明の付けられる予知はあったけれど、あげていけばキリがないので、最後に最も予告が難しいものとして、先の大縄跳び大会の一件の説明をしよう。6の2が大縄跳び大会で優勝しなければ、大翔がトラックに轢かれてしまうという内容だった。あれについても、他の誰でもない、沼田であれば僕たちのクラスの記録をコントロールすることができた。もともと僕や大翔が頑張らずとも、大翔がトラックに轢かれることなんてなかったのだ。
沼田はきっと、あらかじめ手を抜いて縄跳びをしていたのだ。本番にだけ、きちんと跳ぶ気でいたのだろう。そうすれば僕たちのクラスの記録は大幅に伸びることになる。なぜなら『沼田の跳べた数=僕たちのクラスの記録』となるような状態だったのだから。そして、練習時とは見違える記録を出してから沼田はこう言えばいいのだ。
『賢人くんが朝練を提案してくれたおかげで』
『賢人くんの動きを観察していたら、なんとなくコツがつかめて』
僕の行いに絡めて、自らの成功の理由付けをすれば、僕はこれまでみたいに自分の言動が影響で【ラプラス】の予言が崩れた、と思い込んでいたことだろう。
――以上、これらが僕の立てた推理だった。
いくつもの謎は解けたが、それでも未だにわからないこともたくさん残っている。
どうして【ラプラス】なんてアカウントを作ったのか?
どうして僕にだけ【ラプラス】の投稿を見せ続けたのか?
どうして僕に【ラプラス】の予言を崩させる行動をさせたのか?
それらを聞き出すために、僕は今日この日、沼田を呼び出したのだった。
別に恨んでいるわけではなかった。
そりゃもちろん僕のことをだましていたことについては思うところもないではないけれど、まんまと騙された僕の方も愚かだっただけだ。それに怪我の功名ではないけれど、結果としてこれまで【ラプラス】の予言によって振り回された僕の行いで、いまの僕たち6の2の教室の雰囲気は、とても素敵なものへと変わっていた。
『あたしこのクラスのことこんなに好きになっちゃったもん』
そう言って笑った九条のあの日の笑顔は、僕の記憶にいまも鮮明に焼き付いている。【ラプラス】がなければ、九条のあの顔は見られなかったのは確かだ。
けれど、騙しは騙しだ。そしてハッキングは立派な犯罪だ。まだ被害者も出ていないし、警察に通報するつもりなんて僕にはなかったけれど、このままエスカレートしていけば、どうなるか分からない。
僕が【ラプラス】の嘘に気が付いてしまった以上、それを未然に防がないわけにはいかなかった。
いま一度、気を引き締めて沼田と相対する。これまでは存在感も薄く運動神経もいまいちで、髪もぼさぼさな冴えないクラスメイトとしか思っていなかった沼田ではあったけれど、僕はもうそれが世を忍ぶための偽りの姿だということを知ってしまっている。沼田はとても賢く、それでいて何をしでかすか分からない恐ろしさがあるのだ。
僕は沼田の一挙手一投足に注意を払った。やがてゆっくりと、沼田が口を開いた。
――さあ! 自分が【ラプラス】なのだと白状しろ!
「実は俺は・・・・・・」
「実はお前は・・・・・・」
「来週から転校するんだ」
「・・・・・・へ?」
「よく僕の隠し事がわかったね。やっぱり賢人くんはすごいや」
言って、沼田は眩しそうな目つきで僕の方を見た。
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「でも僕って、表情に出やすいタイプだから、頭のいい賢人くんなら見破れてもふしぎじゃないか」
「え? いや転校とかそういう――」
「お父さんの転勤でね。正式な辞令が会社側から出るのが遅くて、みんなには話せなかったんだ。本当は終業式の日にみんなには話そうと思ったんだけど」
「お父さん・・・・・・たしか有名なIT企業の部長さんなんだっけ」
「うん。でもIT企業とはいえ、うちのお父さんは総務部長だから、全然機械オンチなんだけどね。ラインのスタンプの買い方だってわからないんだよ? 笑っちゃうよね」
「・・・・・・」
全然笑えなかった。
え? それじゃあ・・・・・・、
「沼田んちって、パソコン何台ある?」
「パソコン? 一台もないけど」
「一台も?」
「うん。お父さんもお母さんも自分のスマホがあるし。だから、僕は学校からスマホを貸してもらうまでは、スウィッチでネットしてたんだよ。やっぱり自分のスマホがあるといいね」
「・・・・・・」
ハッキング、絶対無理じゃん。
「あ、あと聞きたかったんだけどさ、沼田ってサッカーって好きじゃないよね?」
「うん・・・・・・賢人くんや福田くんたちはよくやってるよね。みんな運動が得意で羨ましいや」
「それならどうして前に体育の授業で、サッカーがやりたいだなんて言ったんだ?」
僕の問いに、「ああ、それかあ」と沼田が笑った。
「クラスのみんなってドッチボールかサッカーをやりたがるでしょ? それ以外を提案してみんなから嫌われるのが嫌だったんだ。だから、ボールを当てられて痛い思いしないですむサッカーを選んだんだ」
「・・・・・・」
パニックだった。
僕の頭の中では完全に、沼田が【ラプラス】の予告を実現することのできる唯一の人間で、その前提をもとに様々な考えを組み立てていた。
それだけに、その土台を崩されてしまうと、これまでのすべてが、何が何だか分からなくなってしまった。
それじゃあなにか・・・・・・?
【ラプラス】は本当に未来予知を行う人口知能だったということ!?
そして沼田は本当に、存在感も薄く運動神経もいまいちで、髪もぼさぼさなだけの、ただの冴えないクラスメイトだったってこと?
茫然とする僕とは反対に、沼田は頬を上気させていた。
「よくそんな昔の話おぼえてるね。やっぱり賢人くんはすごいよ。もうお別れだから話すけど、俺ずっと賢人くんのことを憧れてたんだよね」
「そ、そうだったの? 憧れるようなところあるかな」
僕はクラスでも目立つようなタイプではない。これまでも、毎日がただ無事に過ぎることだけを祈るような、大人しい事なかれ主義だったのだ。勉強はできる方だけれど、それで目立てるような機会はない。よっぽど僕の親友である大翔の方が、運動神経抜群で格好がいいだろう。
「六年生になってすぐさ、賢人くん俺のことを遊びに誘ってくれたでしょ? あのとき凄い嬉しかったんだ。ほら、俺って根倉だし運動もてんでダメだからさ、だれも遊びになんて誘ってくれないんだよ」
「でもあの日、沼田は結局来なかったよね」
「ごめん! せっかく誘ってくれたのにね。運動オンチの俺なんかが加わって、みんな迷惑がるんじゃないかなって思っちゃって・・・・・・。ほんとはそんなことなかったのにね。このあいだの大繩跳び大会の日、練習でも全然上手く跳べない俺のことをだれも責めなかった。むしろ賢人くんたちはこんな俺を見捨てずに、どうすれば優勝できるかを最後まで考えてくれていた! かっこよかったなあ。俺っていままでにスポーツで誰かと喜びを分かち合えた経験なんてなくてさ。大翔くんや賢人くんのおかげで、最後にこの学校で、素敵な思い出ができたよ」
言いながら沼田は目元を拭う。その涙は、とても演技とは思えなかった。
つまり沼田はやっぱり、本当に縄跳びが下手だったのか・・・・・・。
何から何まで、僕の推理は外れていた。
「じつは六年生になってから、賢人くんのことを陰からこっそり見てたんだよね。こんなこと俺から言われて気持ちわるいかもしれないけど、賢人くんのファンになっちゃったんだよね」
「・・・・・・」
誰かの視線を感じていたのは、アタリだった。
がっくりと僕が肩を落とすのと同時に、ガラガラと教室の扉が開いた。
「こんな時間まで残っているわるい子は誰ですか・・・・・・って、どうして沼田くんは泣いているの! もしかして橋本くんが泣かせたの!?」
「飯島先生違うんです、僕が勝手に泣いていただけで」
「いいのよ、沼田くん。こういうとき、あなたのように優しい児童はみんなそう言うのよ。でも大丈夫、安心してあとは先生に任せてちょうだい。ほら橋本くん、ついてきなさい。先生とじっくりお話をしましょう」
「・・・・・・はい」
「賢人くん!? せ、先生違うんです、ほんとに賢人くんは悪くないんですってば!」
勘違いして空回りしている飯島先生を相手に、弁明をするほどの体力もいまの僕にはなかった。それから鼻息を荒くした飯島先生と、それをなだめる沼田とのやりとりを、僕はぼうっと眺めていた。
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一学期の終わる日、終業式が終わってからの帰りの会で、沼田が転校するということが僕たちに告げられた。大縄跳び大会で一致団結して以降、沼田はクラスに少しだけ馴染みはじめていた。それだけに、みんな沼田とのお別れを惜しんでいた。そのことが伝わったのか、お別れの挨拶では沼田が激しく泣き出してしまい、クラスの何人かももらい泣きをしていた。そんな僕たち6の2はとてもいいクラスだと思った。この中の誰かが【ラプラス】を動かしているとは、もう思えなかった。
夏休みに入ってから、【ラプラス】のチュイッターアカウントは消されていた。未来観測の研究が次のステップに進んだのか、それとも僕があまりにもその予言を狂わし続けてしまったため、実験にならなかったのかは分からない。どちらにしても、もう今の僕には一日先になにが起きるかが分からないということは確かだった。
けれどそれが普通なのだ。
明日何が起きるか分からない。だからこそ楽しいのだし、だからこそ一日一日を悔いなく過ごすことが大切なのだ。勇気を出して行動すれば、不可能だって可能にできる。あれほど見えない『おきまり』に縛られていた6の2が、今ではこんなにも素晴らしいクラスになった。そのことがいい例だ。みんな授業にも積極的に参加するようになったし、この夏休みも男子と女子へだてなくクラス会をおこなうことになっている。
・・・・・・一応、九条とも楽しみな約束をしている。
六年生の一学期、僕はとても大切なことを学んだ。
――未来は自分の力で変えられる。
【ラプラス】が僕にそれを教えてくれたのだ。
ほんと・・・・・・どっかのだらしない先生より、よっぽど良いことを教えてくれたよなあ。