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第6話 気まずい会話

 何事も余裕を持って行動する事は良い事だと思っている。

 5分前行動とか10分前行動とか、何をするにしても余裕を持てれば、落ち着いた行動がとれるものだと思う。

 ただ、何事にも限度というものが存在する。

 そんな事を今更ながら理解した、15の春。


 そんなわけで、現在ひたすらに気まずい状況に陥っております……

 どうしよう、会話が続かないよ……


 普通に考えて、早く来る人でも、あと10分くらいはやってこないだろう。

 せめて、そこまでは間を持たせないと、2人きりの教室では沈黙に耐えられそうにない。


 とは言っても、どんな話題を振っていいのかまったくわからない。

 中学の時の話題?

 いやいや!クラスメイトが誰もいない中学時代の話なんて、共感してもらえないだろう。仮に「私、中学時代同級生誰もいなかったんだよね」とか言っても、この子の事だと「ふーん……」で終わりそう。

 っていうか、誰に言っても同じ反応な気もする。

 だからと言っても、共通しそうな話題でもあるこの学校についてや、この町の事について話始めたところで、私がこの学校選んだ理由なんて、親戚の家の近くだったから、という軽い理由なんで、話すような事は特に思いつかない。

 この町の事についてだって、私引っ越してきたの昨日だから、何も知らないに等しい状態だし、話題に食いつかれたとしても、先に私の方が会話を終わらせてしまう自信があるレベルだ。


 ……ん?『昨日』?『この町』?


「えっと……そういえば、昨日駅前で騒ぎがあったの知ってる?」


 この話題だったら、当事者みたいなものだから、色々話続けられそうだし、騒ぎ自体が大きかったから、この子がその場に居合わせてなかったとしても、噂程度でも耳に入っているだろうから、何かしら反応あるだろう。


「アナタ!あの場にいたの!?」


 おや?何か私が思った以上に食いつきがいいなコレ。


「え?あ……うん、いちおう、いた事はいた……かな?」


 さすがに「当事者だし!」とは言えないけど……


「まさかアノ頭イカレた変な格好した女、アナタの知り合いだったりしないわよね!?」


 え?その『頭イカレた変な格好した女』って、ひょっとして私の事?

 そりゃあ、暴れてた化物を生身で瞬殺していく女とか、あんまり良い印象はなさそうだとは思っていたけど、思った以上に低評価すぎて何とも言えない感じだなぁ……

 これは、余計に「私がそうです」とか言えない流れだな。


「知らないよ!全然知らない人だよ!あんな変な格好してる子とか、知り合いにいたら引くレベルだし!」


 とりあえず全力で知らない人アピールはしておく。


「でも、あの変な格好した子を知ってるって事はアナタもあの場所にいたって事だよね?ちょっと怒ってるみたいだけど、何かされたの?」


 うう……自分で自分を『変な格好の子』とか言うのはちょっと抵抗あるよ……

 ともかく、私に対する印象がすこぶる良くない事が気になる。

 一般市民に影響があるような事はしたつもりは無いんだけど、殴った威力とかがあの破壊力だから、気付かないところで何かしらの被害があってもおかしくないだろう。


「……大切な物を壊されて、全てを台無しにされたわ!」


 ご、ごめんなさいぃ!!?

 やってた!やっぱり何かしらやってたんだ私!?

 そりゃあアノ破壊力だしね。何かしらの余波があってもおかしくないよね。

 滅茶苦茶怒ってる感じだしこの子!どうしよう?どうやって謝ろう?


 ……いや、うん、悪いの私じゃないよね。悪いのはあのお兄さんだよね。私悪くないから知らないフリしてればいいねよ?

 責任転嫁?いやいや、間違ってないよ私。


「め、滅茶苦茶だよねアレ!日常漫画にバトル漫画のキャラが登場してるくらい強さ設定に違和感あったよね!ホント、もう化物の方を応援したくなったよ、うん!」


 若干愚痴も混じってるような気がしなくもないけど、これくらい言っておけば、アレが私だって気付かれないだろう。


 ってアレ?何かこの子、凄く嬉しそうな表情になってるような気がするんだけど!?この子を喜ばせるような事今言ったっけ私?


「……あの…………実は、あの化物って、私が……」


「あれぇ?私ら一番だと思ったのに、もう来てるのいるじゃん」


 この子……えっと、田名網莉々さんが、何かを言おうとした瞬間に、突然教室の入り口付近から声が聞こえてくる。

 視線を送ると、そこには3人の女子グループがちょうど教室に入って来たところだった。


「うげ……田名網いるじゃん。アイツこの学校だったのかよ」


 田名網さんを見た3人組の一人が、嫌そうな表情で呟く。

 視線を田名網さんに戻すと、さっきまでの無表情でも嬉しそうな表情でもなく、曇らせた表情で舌打ちを一つすると、それっきり黙り込んでしまっていた。

 さっきまで話していた私とも視線を合わせる事なく、ただ自分の机を見つめるようにうつむいてしまい、そこからは一言も発する事はなかった。


 え?妙に気まずいんですけど!?私どうすればいいの!?


 状況から見て、たぶん、ここにいる私以外は皆同じ学校出身者なのだろう。

 そして、あっちの3人組と、私の後ろの席にいる田名網さんは、あまり仲がよろしくない。


 急に黙ってしまったとはいえ、このまま田名網さんを放置して、あっちの3人組の方へ話しかけにいくのもどうかと思うし……何よりも、あっちの3人組、3人で完全に盛り上がっちゃってるので、そんな状態のグループに割り込んで入っていくほど、私の対人スキルは高くない。


 結果としては、気まずいながらも、この場で待機するしか選択の余地がないのだった。


 誰?『早起きは三文の徳』とかいう言葉を残したのは!?私が早起きしたせいでこんな状況に陥った事について何か説明してほしいんだけど!?


 ……どうしよう。私の、友達たくさん作る計画が、初手で暗礁に乗り上げてる感じなんだけど?

 大丈夫かな?今後の私の高校生活……


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