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番外編1話 悪の組織のボス?

 何なのアレ?何なのアレ?何なのよアレは!?


 せっかくの、組織アピール……もとい、私の鮮烈なデビューを台無しにするなんて、本当に信じられない!!


 この日のために、今まで裏方で色々と頑張ってきたのよ!

 色々な所に出向いて根回しもしっかりした。


 そう、今までだって各所を飛び回って、研究資金の援助を取り付けてきた。そして、それに見合った研究成果を上げてきて、見返りを求めての援助を申し込んでくる連中がたくさん来るまでに実績を積み上げてきた。


 順調に少しづつ……少しづつ……


 それなのに……それなのに……何で初めての失敗が、その集大成とも言える今日のデビューなのよ!?


 ホント何なの?アノふざけた格好した頭のイカレた馬鹿女は!?


 本来だったら、私が颯爽と登場して「絶望しろ!この世界は我々の物だ!ここから先は奴隷としての人生を歩むがいい!ひれ伏せ愚民共!!」とか言う場面だったのに!

 私の見せ場を奪っただけでなく、機械人形まで壊していくなんて……っていうか、何で生身の人間でアレを壊せるの!?頭だけじゃなくて、身体能力までイカレてるんじゃない?


 まぁ機械人形はまだいくらでもあるし、今回暴れさせたのは、不良品一歩手前の出来損ないだったから別にいいんだけど……


 ん?何でそんな出来損ない放ったのか、って?

 そりゃあ今回は様子見程度で終わらせようと思ったからよ。

 いきなり最高戦力投入して、自分の手札を全てさらけ出すわけないでしょ?

 RPGとかでも、勇者にはスライムとかゴブリンとかが最初の定番でしょ?いきなり敵側の将軍とか黒騎士とか……いや、くろきしはまぁアレだけど……とにかくそんな感じの理屈よ。


 で、えっと、何だっけ……?

 そう!何はともあれ、私はあのイカレ女が気に食わないのだ。


 私の人生は今まで悲惨なものだった。

 学校のクラスメイト達とは話が合わずに、空回りばかりして友達が一人も出来ずにいた。

 家族以外とは誰とも喋らない日もざらにあった。


 そんな家族で、一番よく話していたおじい様も2年前に亡くなった。

 おじい様は孤独な研究者だった。

 そんなおじい様の長年の研究成果と様々な業界へのコネが遺産として浮上してきたのだが、私の両親はそれを放棄した。

 怪しい事には関わりたくない。普通の社会人として生きていきたい。それが両親の意見だった。

 だから言ってやった「いらないなら私に頂戴」って……

 もちろん両親は猛反対したが、私は聞く耳持たなかった。

 だって悔しかったんだもん!私の大好きだったおじい様の人生を否定されてるみたいで。


 それからの私の人生は大きく変化……するわけでもなかった。


 おじい様の遺産を引き継いだといっても、私は所詮は学生だ。それは何も変わらない。

 おじい様のいなくなったこの世界で、何も変わらない学生生活をする片手間でコソコソ動くだけ。誰とも会話しない日もあった。


 おじい様の研究引継ぎと言っても、おじい様の研究はほぼ完成している状態だった。やる事は研究の裏付けと確認程度の事しかなく、私は2年かけて最後の詰めをしていただけにすぎなかった。


 そんな……そんなおじい様の全てを台無しにした、あのクソ女……絶対に許せない!


 もしかして「おじい様の研究成果を利用して私の陰キャ人生さようなら」計画とか考えて……むしろ、それメインで行動していた罰でも下ったのだろうか?


 いやいや!そんな事はないだろう!あのイカレ女が全部悪いに決まってる!!


 私は大きく頭を振り、視線を前に向ける。

 目の前には、今日から私が通う事になる高校の校舎がたたずんでいる。


 中学からの同級生が少なくなっているとはいえ、通える範囲で選んだ高校だけあって、地元中学から同じ高校を選んだ同級生が0になる事は確率的に低い。

 それを考えるだけで気分が暗くなる。


 昨日、鮮烈デビューさえしていれば、一躍有名人として脚光を浴びて、スーパースター並の扱いを受けて楽しい学校生活が送れただろうに……

 また、今までと何も変わらない学校生活が待っているのだろうか?


 もう最悪な気分だ……このまま入学式とか参加せずに家に帰ろうかな?


 まぁそんな事を考えたところで、実際には行動できないチキンなんですけどね、私は。


「え~と……」


 ひとり言をつぶやきながら、昇降口に張り出されたクラス分けの表を見て、自分の名前を探してみる。

 ざっと見まわしただけでも、同じ中学出身の同級生の名前がちらほらと目に入ったが、それはあえて無視しようと努力した。

 くそぉ……思ったよりも同中出身多いな……憂鬱だ。


「た……た……た……あった、1年3組」


 昇降口に張り出された左から3番目の紙。上部に『1年3組』と大きく書かれた下に、しっかりと私の名前が記されていた。


田名網(たなあみ) 莉々(りり)


 今日から3年間。この学校での学校生活を想像しながら、大きく一つため息をつき、私はゆっくりと校舎へと足を踏み入れる。


 友達100人欲しいとか、そういうわがままは言いません。だからせめて1人くらいは友達ができるように見守っていてください、おじい様……


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