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第3話 初戦闘?

 さて……とりあえず、あの化物には、その辺に落ちている石でも投げつけて気付いてもらおう。

 私は、だいたい親指程度の大きさの石を適当に拾い上げ、そのまま化物へと投げつける……


「ぐああああああああぁぁぁぁ!!!!?」

「えええええええええぇぇぇぇ!!!!?」


 化物と私とで、同時に叫び声を上げる。


 私が放り投げた石は、化物の左手に当たった。

 うん、そこまではよかった。概ね予定通りだ。


 ただ、私が投げた石が化物に当たった瞬間、凄まじい音を立てて、化物の左手を消し飛ばしてしまっていた。

 もちろん、化物に当たった石も、粉微塵になって消し飛んでいた。


 え?何で!?何がどうしてこうなったの!?

 私が拾って投げた石が、実は炸裂弾だったとか?

 いやいや「偶然拾った石が炸裂弾でした」とかどんな確率よ!?もう天文学的な数値叩き出しそうなんだけど!?

 というかそもそも、こんなところに石に偽装された炸裂弾が落ちてる事の方が大問題だよ!?


 案の定、遠巻きにこちらを見学している野次馬集団もざわめき出す。

 そりゃあ自分達が生活している町に炸裂弾が転がっていたなんてわかれば驚くよね。


 まぁここから野次馬集団までは距離が離れすぎているので、会話内容まではわからないので、もしかしたら全然別の事でざわついてるのかもしれな……


「何?何であの化物の片手消えたの!?」

「あの変な格好した女の子が、何かを投げるような動作をした瞬間に、化物の腕がなくなったように見えたけど……」

「いや、投げる動作からの腕消滅までが一瞬すぎたろ?化物の手が消えたのは、何か投げたのとは別の要因なんじゃないか?」


 え?何コレ?聞きたいと思った声を任意で拾ってくるんだけど!?

 野次馬集団とはそこそこ距離が離れてるので、普通こんなに鮮明に聞こえないハズなのに、まるで隣で喋ってるように聞こえてくる……何コレ怖い!?私の聴力異常すぎ!!?


 それにしても『投げる動作をしてから化物の手が消し飛ぶまで一瞬だった』?


「んん?普通にゆっくりと石飛んでいってたよね?」


 思わず疑問が口からこぼれる。


『そりゃあ変身したのだから当たり前だろう。エンジェルプリンセスには驚異的な動体視力に加えて状況に合わせて体感時間を自動調節してくれる機能があるんだ。キミにはどう見えていたのかは知らないが、実際には、音速を軽く超える速度で石を飛ばしていたよ』


 何それ怖い!!?聴力だけじゃなくて、視力や腕力までえらい事になってたなんて!?


『まったく……登場台詞も言わずに不意打ちするとは……とんでもない性格をしてるねキミは?』


 いえ、不意打ちする気はまったくなかったんです。

 むしろ、アナタが設定した変身ヒロインの出力調整が馬鹿すぎるんです。


『ほら見ろ、ヤツも怒って襲い掛かって来たぞ』


 腕時計モドキに意識を集中していたせいで、化物観察を怠っており、お兄さんの言葉を聞いて意識を戻した時には、すでに化物は私の目の前まで迫っていた。


「いやあぁぁぁ!!?」


 私は再び悲鳴を上げ、咄嗟に亀のように丸くなる格好になり、手で顔や頭を守ろうという体勢を取ってしまっていた。


 わかってる。

 攻撃してくる相手から視線をそらすなんて悪手もいいところだ。

 でもしょうがないじゃない!ほとんど無意識で取った行動だったんだもん!それぐらい怖かったんだもん!!


 次の瞬間、頭を守っていた手に何かが当たる感触と、鈍い音が響く。

 ……でも、私への攻撃の衝撃は訪れなかった。


 私は恐る恐る顔から手をどかし、化物の方へと視線を向ける。


 そこには、私を攻撃してきたと思われる、残っていた右手を変な方向に曲げた化物が驚愕の表情を浮かべていた。


 え?アレ?その右手……ひょっとして折れてる?


『馬鹿な化物だ……その程度の攻撃でエンジェルプリンセスの装甲を抜けると思っていたのか?エンジェルプリンセスの耐久力は、生身で大気圏突入しても平然としてられるくらい丈夫に設定してある。半端な攻撃では、逆に自らの身を傷つけるだけだというのに……』


 ええええ!!?今の私って、もしかしてルナチタ〇ウム合金より頑丈になってる!?

 どんな設定組み込んでるのよこのお兄さん!?

 これ、完全に『ぼくのかんがえた、ちょうむてきはいぱーうるとらすーぱーひーろー』な設定じゃない!?大丈夫?後々黒歴史とかにならない?


 まぁお兄さんの後々の黒歴史は置いといて、とりあえずはこの化物を……


「あの……既に敵が満身創痍なんですけど?必殺技とか教えてもらっていいですか?」


 私の視界に収まっている化物は、左手を失い、右手は手首から先が曲がってはいけない方向に曲がっており、この後どう動こうかと様子を伺っているような状態になっていた。


『何を言っているんだ?キミがやった事は「民間人をかばうために敵の注意を引いて、それに成功してまず一発攻撃を受けた」までだ。この後「ちょっと脅えつつも何かをきっかけにして覚醒して攻勢に出る」まで終わったらフィニッシュ技のやり方を教えてやろう』


 どんだけテンプレ好きなんだろうかこのお兄さん。

 敵さんのこの状態見てるよね?現実を直視しようよ?その妄想テンプレは最初から完全に崩壊してるよ?


 まぁともかく、とりあえずは攻勢に出て2・3発は殴る蹴るしないと話が進まない事はわかったので、適当に化物叩いて、早い所必殺技を教えてもらおう。かわいい感じの必殺技だといいんだけど、このお兄さんのセンスだと当てにならないかなぁ?


「えいっ!!」


 私は、完全に動揺して隙だらけになっている化物の大胸筋あたりを殴りつける。


 そして……消し飛ぶ化物の上半身。


「エグッっ!!!!?」


 エグい!?エグ過ぎるよ!?ってかグロいよコレ!!?

 何この威力!?馬鹿なの!?このお兄さんどんだけ黒歴史を上塗りしていくつもりなの!?

 飛んでる蚊を迎撃ミサイルで撃ち落とすくらいの過剰戦力でしょコレ!?


『何をやっている!!フィニッシュ技を披露する前に倒してどうするんだ!?このフィニッシュ技には私の全てを注ぎ込んだと言ってもよいくらいの傑作だったのだぞ!』


 え?普通に叩いただけでこの威力なのに?『全てを注ぎ込んだ』?必殺技はどんだけふざけた破壊力なの!?

 もしかして「避けられるものなら避けてみろ!貴様は助かっても地球は粉々だ!」ってリアルに言える必殺技だったりするの?

 でも、そんなセリフ言ったら、完全に私が悪役だよね?


「あの……とりあえずは、暴れてた化物倒したんでソッチ戻りますね」


 何と言うか……私が想像していた変身ヒロインと……ちょっと違った。


 私は理想と現実のギャップに打ちのめされながら、野次馬の視線を避けるように物陰に移動して変身を解除するのだった。


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