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第26話 暴露話

「金銭が無くなる事件がある現場で、何度かアナタが目撃されています。ソレについても色々とお聞きしてみたいのですが?」


 お兄さんに詰め寄っていく杏ちゃん。

 サスペンスドラマでよくある、追い詰められた犯人みたいな状態になっているお兄さん。


 あ~……こりゃマジだね。

 マジでお兄さん犯人だねコレ。


「わ、私の研究成果は何も間違っていない!キミの父親に見せた論文通りの成果を得ている!現に私のエンジェルプリンセスは、奴等の技術を圧倒しているではないか!」


 うわぁ……本当にサスペンスドラマのクライマックスシーンみたいに、お兄さんある意味犯行認めて、聞いてもいない事の詳細を話し始める感じになってない?


「研究成果のほんの一部しか見ずに『コレじゃない』と否定され、スポンサーを打ち切られ……私は何も間違った事は言っていなかった!あのまま黙って金を援助してもらっていれば、全てが上手くいくはずだったのだ!」


 無茶苦茶自己中な発言をして興奮気味に叫ぶお兄さん。


 でもそれって、そのまま援助もらってても、ただたんにエンジェルプリンセスがより強化されてただけなんじゃないの?

 そりゃあ、新技術の研究費用を出したら、勝手に正義の変身ヒロインを作る費用に使われてたら、スポンサーは怒るって……


 ん?ちょっと待って?もしかしてエンジェルプリンセスの武装とかが微妙に未完成だったのって、その辺が理由だったの?


「でもアナタ……どんな理由があったとしても、お金を盗むのは犯罪よ。それくらいの事はわかっているのでしょ?」


 一連の話を聞いていた莉々ちゃんがお兄さんを叱咤する。


 何だろう……自称『正義の組織』の人間が、『悪の組織』のボスから「これは悪い事なんですよ!やっちゃダメだったんですよ!」って怒られている風景……シュールだなぁ。


「エンジェルプリンセスの運用だって無料(ただ)ではないのだ。町の平和を守ってやっているんだ、少しくらい金銭を援助してもらっても罰はあたるまい」


 何かサラっと最低な発言してるなお兄さん。

 もうヤダなぁ……他人のふりして帰りたい。


「それで?どうやって、たくさんの人からお金を盗んでいたの?それもアナタの優秀な研究技術が応用されているのでしょう?その方法を教えてもらいたわね」


 莉々ちゃん、お兄さんおだてるの上手いなぁ……

 さすがは組織の長をやっているだけあって、他人の性格把握が素早いなぁ……クラスでの友達作りには活かされてなかったような気がしなくもないけど……


「……プリンセスリングがキーになっている。こちらが指定した範囲……例えば『半径100m』等と指定すれば、その100m以内にある、あらかじめ形を認識させておいた『お札』だけを別次元に移し、11次元で人々に認識させる事なく、頃合いを見て……」


 ああ、うん、理論とかどうこうは何言ってるかさっぱりわからないんだけど、私でも一つわかる事を一番最初に言ってたよね今?


 えっと……「プリンセスリングがキーになっている」だっけ?


 それってつまり、私を起点にして盗難事件が起きてたって事じゃないの!!?

 お兄さん気持ちよくベラベラと説明してるけど、要点だけまとめると私も共犯って事だよね!?


 幸いにも莉々ちゃんと杏ちゃんは『プリンセスリング』の部分も、意味わからない単語の一つとして認識されているため、まだ私の関与には気付いてなさそうだ。

 となれば、今私がやるべき事はたった一つ!


 莉々ちゃんと杏ちゃんに感づかれる前に、お兄さんを黙らせる!!


「別次元に移す物体の認識感度や、範囲指定の正確さ等は、そこのエンジェルプリンセスの通う学校の教室でも実験したので、間違いは……」


 ヤバイ!お兄さん調子に乗って、言わなくてもいい事まで話はじめてる!?


 私はすぐさま、お兄さんに近づいて行くと、殺さないよう極力力を抑えてお兄さんの腕を握る。


「ぐああああぁぁ!!!?」


 凄い痛そうな声を上げながら、私に腕を掴まれたままお兄さんは膝をつく。

 今ほど変身したままで良かった、と実感した事はない。

 余計な事喋られる前に秒で対処可能とか、やっぱりエンジェルプリンセスの能力チートだよ。


「田島さん!?いつの間に!?」

「奈々!?私達だけで拘束に移るのは危険よ!」


 突然の私の行動に混乱する2人。

 特に莉々ちゃんは、私がただコスプレしてるだけだって信じてるから、男女の対格差から危険と判断して私を咎めるように声だ出す。


「えっと、実は私、合気道とかやってるから任せておいて!」


 柔よく剛を制す、みたいな感じに見えるように頑張ってるけど、実際はただの力技である。

 お願い、これで信じて莉々ちゃん。


「な……奈々がそう言うなら……」


 よし信じた!!

 いや、まぁ若干困惑してる感じはあるけど、そこは強引に行こう!


「とにかく、金銭を盗んでいたのはこの人だって事で間違いなさそうだから、ここからは正義のヒロインである私がお仕置きしておくから安心してね2人とも!」


 演技臭いセリフを言って、これは杏ちゃんに配慮して、『変身ヒロイン=田島奈々』を実践してるんだよ。というアピールを莉々ちゃんへとしておく。


 ……何かもう、全員が全員正体隠し過ぎてて、頭こんがらがってきたよ。


 そして、こんな時は、深く突っ込まれる前に逃げるが勝ち!である。


 私は、まだ自体が把握しきれていない莉々ちゃんと杏ちゃんの前から、お兄さんの腕を引きづりながら、全力で逃亡する。


「いっ!?痛っ!!?痛い!!?もげる!腕がもげてしまう!!?」


 足元で何か意味不明な事を叫んでいるお兄さんの事は完全に無視するようにした。


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