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第25話 お兄さんの経歴

「杏。その人はアナタの知り合い?」


 二人に近づきながら声をかける莉々ちゃん。


 杏ちゃんの知り合いというよりも、莉々ちゃんの敵対組織の黒幕みたいな人だよ、そのお兄さん。

 そう考えると、ある意味では莉々ちゃんの関係者みたいな感じの方が近いような気がする。


「知り合いではありません!犯人です!この人が真犯人なんです!!」


 若干興奮気味に答える杏ちゃん。


「だから何なんだキミは!?私の事を『悪の組織の人間』と言ったと思えば、次は『真犯人』?いったい何の真犯人なんだ!?」


 そして同じように若干興奮気味に反応するお兄さん。

 うん、良い感じにテンパってるね。私が変身したままシレっと一般人っぽい人と一緒に登場してきたのに無反応、というより、相手をしている余裕がない、といった感じだろうか?


「私の組織に、あんな人相な人はいないから冤罪の可能性が高いかもしれないわね……」


 私にだけ聞こえる程度の音量で、隣の莉々ちゃんがつぶやく。


「とりあえず落ち着きなさい杏。その人を『真犯人だ!』と言うのなら、何かしらの根拠があるんでしょう?まずはそれを説明してくれない?」


 仲裁役として間に入って場を仕切る莉々ちゃん。

 見た目、ちっちゃくて可愛いのに、何か凛々しくてカッコいいなぁ……


 まぁともかく……

 杏ちゃんの言い分はこんな感じだ。


 杏ちゃんのお父さんは企業の経営者らしく、最近どっかの研究機関が新技術的な何かを開発したのだが、その研究機関のスポンサーになっていなかったため、その新技術の恩恵を受けられずに困っていたらしい。


そこに現れたのが、このお兄さん。

その新技術以上のモノを提供できると言い、その論文を提出してきたのだという。


 杏ちゃんのお父さんは、半信半疑ではあったものの、同業種の他企業におくれを取っている焦りと、他にもスポンサーに名乗りを上げる企業がいくつかあった事もあり、このお兄さんのスポンサーとなったらしい。


 しかし、出来上がってきたモノは「コレで世界征服でもするの?」と言いたくなるような、兵器にしか応用できなさそうな物ばかりだったという。


 杏ちゃんのお父さん含め、怒ったスポンサー達は「ちゃんとした研究成果を出せないのならスポンサー契約切るぞ!」お兄さんを叱ったところ、それまでの研究成果を持って行方をくらませたのだった。


「そう!つまりその『兵器転用用途しかない技術』と父達から騙し取ったお金を使って何をしようとしているのか?……そして、最近現れるようになった、破壊活動をする化物達……タイミング的には一致してると思うのですが?」


 杏ちゃんの演説がだいぶ長く続いた。

 莉々ちゃんが途中途中で「あ、その新技術ってウチが開発したヤツね……」とか「別に新たにスポンサーになってくれるんだったら、技術提供してあげたのに……」とか、色々と事をややこしくしそうな発言をしていたが、私以外聞こえていなかったようだったので、その辺はあえて拾わないようにした。


「タイミングで言うのならば、そこにいるエンジェルプリンセスが現れたのも同じではないか?私が関与しているのがソチラだという推理はなかったのかね?」


 抵抗を続けるお兄さん。

 まぁ事実、悪の組織は莉々ちゃんの方で、お兄さんは正義のヒーロー側ではあるのだけど……


「自分の怪しさを自覚してから発言してほしいですね……それに、田島さんからはアナタの事なんて一言も聞いた事ないですよ」


 そりゃあ好き好んで言わないでしょ。こんな人と知り合いだなんて思われたくないし。今も若干他人のフリしてるしね。


「田島?……あ、ああ!それは当たり前だろう!エンジェルプリンセスの事は機密事項なんだ!おいそれと他人に話したりしないだろう!」


 ん?このお兄さん今、私の名字聞いた時「誰?」みたいな反応しなかった?もしかして私の名前覚えてなかった!?ホント最悪だなこの人!?


「まずいわよ奈々……あの人、本当にイカレ女の関係者かもしれないわよ」


 突然隣にいる莉々ちゃんから耳打ちされる。


「杏が奈々の名前を出した時の反応……アレは、本物のイカレ女の本名を知っているからこその反応よ」


 ゴメンね莉々ちゃん。

 イカレ女の関係者なのは事実なんだけど、さっきのソノ反応は、興味ない事以外は記憶していなかったってだけの、私に対して超失礼な行為をしていただけなんです。


「わかりました。ではアナタが『悪側』なのか『正義側』なのかは、いったん保留にしておきましょう。ただ……たくさんの方達から金銭を奪っていた犯人はアンタですよね?」


 突然話題を『お札消失事件』に切り替える杏ちゃん。

 いや、元々はコッチが本題だったから、話題を元に戻したといった感じなのだろうか?


「全てのスポンサー契約を切られて、研究成果持ち逃げ犯として各研究機関のブラックリストに載ってしまっている『無職』のアナタが、何かまだ研究を続けているのなら、とっくに父達から受け取っていたお金は使い切ってますよね?……今、どうやって金銭を手に入れて研究を続けているんですか?」


「ぐっ……!?」


 杏ちゃんの問いに、苦虫を嚙み潰したような表情をしてうろたえるお兄さん。


 え!?マジで!?そっちの犯人お兄さんなの!!?


 っていうか、お兄さん今まで『我々の組織』とか発言してたけど、さっきまでの話を総合してみると、その組織の構成員ってお兄さん一人だけなんじゃないの!?


 何か色々と騙された感があるんだけど、こんな変人が他にもたくさんいるような組織なんて無い!っていうのがわかって、何となく安心している私がいる……


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