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第21話 犯人の絞り込み

 物事には、良い面と悪い面。メリットとデメリットが存在するものである。

 そして、コレはどちらの面が色濃く出ているのだろうか?


「私が、昨日一日で調べたところ、財布から札が無くなる被害にあった人の約9割が、お二人が化物を撃退した現場にいた事が発覚いたしました」


 杏ちゃんは、想像以上に機敏だった。

 まさか昨日の今日で、よくわからないデータを持参してくるとは思わなかったよ。


 純粋に、犯人が見つかれば莉々ちゃんの無実が証明できるからいいのかもしれないけれど、それに伴うエンジェルプリンセスへの変身が絡んでくると色々と厄介なんで、それは避けたいんだよねぇ……


「犯人……私じゃないわよ……」


「あ、はい。知ってます」


 そして繰り返される同じようなやりとり。

 莉々ちゃんも杏ちゃんもテンプレ好きだね。


「ともかく杏ちゃん。9割の人が、あの現場……駅前の広場で被害にあったって事なの?」


「場所はその通りです。ですが時期は、前回の時と前々回の時と2パターンにばらけていましたね」


 え!?前回と前々回!?

 それって、私が変身して莉々ちゃんの組織と戦ってるタイミングで、その事件が起きてたって事!?


「それって野次馬が全員私達の戦いに注目してたから、スリが犯行しやすかったってだけなんじゃないの?」


 すかさず莉々ちゃんからツッコミが入る。


「それもあるかもしれません……ですが、一度に100人を超える人数から一切気付かれる事なく犯行を行えるのは、人の域を超えていると思うんです。やはりコレは、悪の組織が開発した何かしらの道具が使用された、と考えるべきです」


 一回で100人超え……被害者ってそんなにいるんだぁ……

 まぁだからこそ、今現在『謎事件』っていう括りになってるんだろうけどね。


「だから何でそこまでブレずに私の犯行って事にしたいのよ……」


 そして、相変わらず小声でブツブツ文句を言ってる莉々ちゃん。

 コッチもコッチでブレないなぁ……


「っていうか杏ちゃん。その100人を超える人から聞き取りしたの!?」


 むしろ、その行為を昨日学校終わってからやってのける方が人間離れしてるんじゃないかな?


「そこまで難しい事ではなかったですよ。『札なくなり事件』が起きていたのが化物が出現した時だ、という発信源不明な眉唾な噂があったので、今回はその噂を基にして、噂の真偽も含めて調べただけですから……場所を絞っていた分楽でしたよ」


「でも、場所だけわかっていても被害者を探すのは大変でしょ!?それを100人を超えて……」


 いくらなんでも放課後だけで何とかなるレベルじゃない気がする。


「そうでもないですよ。あんな、化物が暴れる可能性が高い危険な場所にいるのは、通勤・通学等何かしらの理由で、毎日あの場所を通らざるを得ない人達ばかりですからね……化物が現れたくらいの時間帯に、そこを歩いている人に『化物が暴れていた時現場にいましたか?』『その時お金が無くなる被害にあいましたか?』と質問してイエスかノーの答えを聞いて回るだけでしたから」


 なるほど、その時間にその場所を通っている人の大半は、私が無茶苦茶な事した時も、その場所を通っていた……というか、足を止めて見学してたって事ね。


「そして『化物が暴れていた現場にいなかった』と答えた人は被害にあった経験が無く、『現場にいた』と答えた人は100%の確率で被害にあっていました」


 ん?100%?さっきは「9割の人」って言ってなかったっけ?


「100%?90%じゃなかったの?」


 案の定、私がツッコミを入れる前に莉々ちゃんが、ここぞとばかりにツッコミを入れる。


「あ、ややこしくてスミマセン。現場にいて被害にあった人の割合が100%であって、それ以外の……化物が暴れた場所に行ってないのに被害にあった人達も若干いますので」


 ああ、何か混乱してきた……割合の計算って頭こんがらがってくるよ。


「そうよ!やっぱりそういう人達もいるんじゃない!何でもかんでも悪の組織が関わってるわけないのよ!いい?杏。何度も言ってるけど、スリと悪の組織は無関係……」


「えっと……『化物が暴れた場所に行ってないのに被害にあった』と答えた人は全員がお二人のクラスの方達でした」


 あ……関わってるね、悪の組織。

 ウチのクラスで事件が起きた時は当人いなかったけど、ウチのクラスが悪の組織と関わっているかどうかを答えるなら、莉々ちゃんが在籍してる時点で、皆は知らないだろうけどしっかりと関わっちゃってるね。


「………………」


 莉々ちゃんもソレに気付いちゃったのか、何も言えなくなって口をパクパクさせちゃってるし。


「ですけど聞いてください!私が推理するに、お二人のクラスでの事件は、真相に近づかせないようにするための囮だと思うんです!きっと悪の組織は、何の関わりの無い場所でランダムに同じような事件を起こして捜査をかく乱させようとしていると思うんです!おそらくですが、他も探せばお二人のクラスの様な例がきっと見つかります!」


 何か力説してるなぁ杏ちゃん。

 でも根拠がよくわからないよ。何でそんなに悪の組織の犯行って事にしたいんだろう?


「そんなわけで私は、今日も色々と調査しに行こうと思っているので、今日は早目に帰りますね。色々と計画を練らないとならないので!」


 そう言うと杏ちゃんは、お弁当の残りをかき込み、あっという間に部室から姿を消す。


「奈々ぁ~……違うわよ……私、本当に関わってないわよ……本当に違うのよ……」


 そして、後に残されたのは私と、半ベソをかいた莉々ちゃん。


 まぁともかく、どっからでもランダムでお金盗めるんだったら、わざわざ戦闘行為が行われている場所に限定しなくても、適当に盗みまくればいいわけで……それはつまり悪の組織との関わりがどうこう以前に、犯人像の絞り込みすらまったくできてない状態なんじゃないのかな?

 まぁそんな謎な技術を使用してる時点で、組織力と技術力及び資金力を持っている悪の組織が一番の容疑者なのかもしれないけれど……


 私はそんな事を考えつつ、黙って莉々ちゃんを慰めるのだった。


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