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第20話 接点は?

「ねぇ奈々……杏が本当に犯人見つけちゃったらどうするつもりなの?」


 午後の授業は移動教室だから、と言って一足先に杏ちゃんが教室へと戻って行くと同時に莉々ちゃんが質問してくる。


「え?見つけてくれる分にはいいんじゃないの?クラスの皆に、莉々ちゃんが犯人だっていうのは濡れ衣だったって証明になるんだし」


 私も真犯人を捕まえてやろう、とか考えていたので、ソレを杏ちゃんがやってくれるのなら、むしろありがたい。労せずに莉々ちゃんが無実だって証明できるんだしね。


「クラスの連中なんてどうでもいいわよ……わかってるの奈々!?犯人は私じゃないのよ!」


 莉々ちゃんは何を言っているんだろう?

 そんな事、言われなくてもわかってる事なのに?


「私が犯人じゃないって事は、他に犯人がいるって事なのよ!」


 どうしたんだろう莉々ちゃん?何でそんな当たり前の事を力説してるんだろう?

 真犯人を見つけて莉々ちゃんの無実が証明できました、めでたしめでたし……って流れでいいんじゃないの?


「私が……私の組織が犯人だったら、証拠なんて一切残さないし、不都合な事は全部もみ消す……だから、杏がいくら頑張ろうが、真犯人なんて出て来やしないのよ」


 たしかに、莉々ちゃんが本気出したらそんな感じかもしれない。


「でも犯人は私じゃない……つまり、詰めの甘い真犯人だったら、杏でも見つけ出せちゃうかもしれないのよ!」


「えっと……だから、そっちの方が莉々ちゃんの濡れ衣をはらせるから良いんじゃない……の?」


 莉々ちゃんが、あまりにも同じ内容の発言を繰り返すから、反論する私もちょっと自信がなくなってきたよ。


「あ~~もうっ!!杏が真犯人を見つけちゃったら、犯人捕縛の際にイカレ女を連れて来なくちゃならないのよ!」


「え……あ、うん。そうだね」


 そういえば杏ちゃん、正義のヒーローが悪の組織を追い詰める~みたいな事言ってたかもしれない。

 って事は、杏ちゃんが犯人見つけたら、私変身してその場に駆けつけなくちゃならな……ん?


「どうやってイカレ女連れてくるのよ奈々……」


「…………ああっ!!!!?」


 私が、当のイカレ女本人だから、うっかりその考えを失念していた。

 そうだよ!私がエンジェルプリンセスなのは、莉々ちゃんに言うわけにはいかない状態なのに、どうやって登場するつもりだったのよ私!?


 実は知り合いでした。とか言ってみる?

 いやいや!どうやって知り合った!?っていうか、エンジェルプリンセスの所在を知ってるのに莉々ちゃんに黙ってたって事になると、どう取り繕っても莉々ちゃんに対する裏切りとしか取られないだろう。


 実は連絡先だけ知ってた。とか?

 いや、それも同じだろ私!?連絡が取り合えてる時点で莉々ちゃんに対する裏切りだ。


 まぁそれを言ったら、エンジェルプリンセスの正体が私だって事を隠してる時点で裏切りなんだろうけど、それは仕方がないという事で棚に上げておこう……


「その感じだと本当に気付いてなかったのね奈々。まったく……普段は賢いのに、変なところで抜けてるわね」


 莉々ちゃんが何を思って、全国模試規模でみても成績超平均的な私を「普段は賢い」とか評価しているのかよくわからないけれど、今回ばかりは本気で気付いてなかった。


「どうしよう莉々ちゃん!?」


「だからさっきからソレを私が質問してたんじゃない……」


 言われてみればそうだ!?


「対応策を奈々が思いつかないなら素直に諦めた方がいいかもしれないわね……まぁ真犯人が杏に見つからなければいい話なんだから、そう悲観する事もないわね」


 確かに犯人見つからなければ何も問題はない話なんだろうけど……


「楽観視しすぎじゃない?莉々ちゃん……」


 杏ちゃんが犯人見つけちゃってから、急いで対応策考えるんじゃ遅すぎでしょ!?


「そうでもないんじゃない?例の犯人って散々犯行してても誰も発見できてないんでしょう?そんな犯人を杏だけが見つけられる、なんて可能性は極めて低いと思うわよ……賭けてもいいわ、杏に犯人を見つける事は無理よ」


 莉々ちゃんの言う事はもっともだと思う。でも、可能性は0ではない。例え1%以下の確率であっても、「もしも」は存在する。

 SRPGとかでも味方の命中率99%は外れるのに、敵の命中率1%はよく当たる……体感だけど。


「でも、それでも何かしら、どうしたらいいか考えておいた方がいいんじゃないかな?」


 むしろ考えておかないと、実際に事が起こった際エンジェルプリンセス(わたし)が困る!


「考えるも何も、奈々が何も思いつかない時点でどうしようもないわよ……なるようになればいいんじゃない?どうせ犯人は見つからないだろうし」


 ダメだ!?何で私をそこまで『賢い子』扱いしてるのかわからないけど、莉々ちゃん完全に考える事放棄してるよ!?


 こうなったら私が、何かしら考えないと……

 違和感無く、自然と私が変身して登場するには……えっと……


「杏ちゃんが……犯人見つけたら……その場に、莉々ちゃんが化物を差し向ければ……化物を退治しようとして……イカレ女がやって来る……かも、しれない?」


 どうだ!ちょっと無茶苦茶理論だけど、これならギリセーフじゃない!?


「そうね。じゃあ杏が犯人見つけたらその案でいってみましょう……杏が犯人見つけられれば、ね」


 莉々ちゃん……もしかして比喩でも何でもなく、ガチで『杏ちゃんが犯人見つけられない』方に賭けてる?

 自分の発言に責任持つのは良い事かもしれないけど、こればっかりは自分の言った事を少しは疑おうよ……大丈夫かな莉々ちゃん?後でテンパったりしないかな?


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