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第17話 正体バレ

 日常というのは、時折何かしら変化が起こるものである。

 マンネリ化している日常でも、少しづつではあるが変わっていくものなのだ。


 そう、そして、それはまさに今、この瞬間にも起きているわけであり……


「莉々ちゃん……その子は?」


 いつも通りのお昼の時間、これまたいつも通り莉々ちゃんと二人での食事タイムだと思っていたのだが、何故か莉々ちゃんは、見ず知らずな別のクラスの女の子を連れてきていたのである。


「この子は、ええと……1組の三上(みかみ) (あんず)と、いうそうよ」


 私の質問に対し、莉々ちゃんからざっくりと紹介される。

 う~ん……私は、名前よりも、むしろ何でこの場に招待したのかが気になったんだけど……どういう関係なのだろうか?


「それと杏。こっちの子は田島奈々……私の親友であり、志の同じ、いわば同志というやつよ」


 続いて私の紹介が行われる。

 ふむ、私ってそういう立ち位置なのね。


「初めまして田島さん。私の事は杏って呼んでください!」


「あ、はい。よろしく杏ちゃん……」


 挨拶されたので、咄嗟に返事をする。

 何だろう、このお見合い会場みたいに微妙な空気は?……いや、まぁ私、お見合いパーティーとか参加した事ないから、勝手なイメージなんだけどね。


「えっと……田名網さんの同志って事は、田島さんも秘密組織の関係者の方なんですか?」


 え?『秘密組織の関係者』!?……って事は、もしかして莉々ちゃん、この子にも現状を話したの!?いったいどういう経緯で!?


「奈々……今ので察したかもしれないけど、実は昨日この子に、私が戦闘指示出してるとこを見られてしまったのよ……」


 ああ成程……そういう経緯なのね。


「咄嗟に誤魔化す事も考えたのだけれで、ちょっと誤魔化しようのない状況だったから、私達の行動は秘密裏に行われてる事だから、他言無用ってだけ伝えているのよ」


「大丈夫です!!絶対に誰かに言ったりなんてしません!お二人は、アニメの中だけの話だと思ってた憧れの存在なんですから!そんな人達の事を軽々しく他人に話したりは絶対に無いですから!」


 莉々ちゃんの言葉を若干食い気味に杏ちゃんが答える。

 さっきから興奮気味にテンション爆上がりしてたのは、アニメみたいな展開の現状で、当事者と関係を持てたのが嬉しいのかな?

 生で有名人に会った人と同じようなリアクションだから、たぶんそうなのだろう。


 でも、わかる!わかるよその気持ち!私も最初、変身ヒロインになれるって聞いた時は、アニメの主人公になったみたいでちょっとだけワクワクしたもん!

 現実は思ってたのとちょっと……いや、だいぶ違ってたんだけどね。


 それにしても、莉々ちゃんを見て『憧れの存在』って事は、ひょっとしてダークヒーロー的なのが好きな若干中二病入ってる感じなのかな杏ちゃん。

 もしくは悪役側に美学を感じるタイプの……


「あの……もし返答できない事だったら無視してもらってもいいんですけど、田名網さんと田島さんの関係を考えると……変身して戦っていたのって田島さんですか?」


「ぶっ!!?」


 噴いた。何気なしに飲んだジュースを盛大に噴き出した。

 何で!?どうしてバレた!!?

 いや……違う!そうじゃない!落ち着け私!ちょっと冷静に考えて、今の杏ちゃんの発言、何か少し変な流れじゃなかった!?


「あ!動揺したって事はやっぱりそうなんですね!化物を倒すための指示を田名網さんが出しているのは見ているんで、指示を受けるパートナーは普段から仲良くしている人なんじゃないかと思ったんですよ!やっぱり生死を賭けた戦いをするにあたって強い信頼関係が無いと難しいですもんね!ですから私は、お二人の関係性を見て……」


 完全にテンションメーター振り切れたな杏ちゃん……喋りが止まらない。


 まぁとりあえず……うん、たぶんだけど杏ちゃん、盛大な勘違いをしてるよね。何でそうなったのかは知らないけど。

 そんなわけで、知らない事は知ってそうな人に聞くのが一番。


「莉々ちゃん……ちょっとコッチに……」


 何が何だかわからないような表情になっている莉々ちゃんを、私が座っているすぐ近くに呼びつける。

 杏ちゃんが講釈垂れて自分の世界に入り込んでいるうちに、莉々ちゃんにソッと耳打ちする。


「昨日、何て言ったのを聞かれたの?」


「えっと……たしか『今がチャンスだから攻撃しなさい』……だったかしら?それで『本気を出したアナタの攻撃は誰も視認する事のできない超高速拳だと教えてあげなさい!』とか言ったのを聞かれたんだと思うわ」


 うん、嫌な予感がプンプンしてきたぞ。


「……それで?その後はどうなったの?」


「……気が付いたら機械人形がバラバラにされてて、イカレ女が殴った後みたいな格好で止まってたわ」


 莉々ちゃんは喋りながら、何で杏ちゃんが盛大な勘違いをしているのかに気付いたようで、表情から動揺が少なくなっているように見えた。


「ねぇ奈々……私達はその『やられた化物側』だって、今からでも言えば、杏は私達の味方になってくれるかしら?」


 まぁさっきから、変身ヒロイン側に感情移入した発言を続けているから、私達が敵サイドだって知ったら気まずくなって逃げ出すか、あくまでも正義の味方気取りで私達に敵意を向けてくるようになるか……


「ねぇ杏ちゃん。敵の化物側に何か思う事はある?」


 喋り続ける杏ちゃんを遮るようにして、とりあえずジャブを打っておく。


「は?人の迷惑考えられないような連中は死ねばいいんじゃないですか?」


 あ、ダメだコレ。

 これ事実訂正したら、私達呪い殺されるんじゃないかって目になってるよ杏ちゃん。


 私は視線で莉々ちゃんに『正体バラすの止め!』と訴える。

 訴えた時に見た莉々ちゃんの表情は、泣きそうな顔になっていた……いや、もう半ベソくらいかいてるかもしれない。


 莉々ちゃん、意外と撃たれ弱くない?


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