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番外編4話 スピードタイプ

 奈々はやはり私が思った通り凄く優しい子だ。

 私は、イカレ女にまた負けたショックで学校を休んでいたのだが、奈々は私が、イカレ女との戦闘でケガしたんじゃないかと思って心配してくれていたらしい。


 今までこんな風に思ってくれた友達は一人もいない。

 たぶん両親からもそこまで想われてはいないだろう……きっと、自分勝手な事ばっかりしているコミュ障な不良娘、程度にしか思われていないだろう。


 私をこんなに大事にしてくれたのは、おじい様だけだっただろう。

 だからかもしれない……死んでしまったおじい様と同じように私を大事にしてくれる奈々の存在が凄く嬉しくて、思わず涙が出てしまった。

 奈々の前では、おじい様と同じように、素直なありのままの私でいられる……そんな気がする。


 そして、それでいて奈々は聡明だ。

 イカレ女を倒す作戦会議をした時、私は、まだ試していない、実弾での狙撃を自信を持って提示したのだが、奈々に止められた。


「レーザービームまで対処法を用意しているような奴が、ありきたりな実弾の対処法を用意していないわけがない。そんな確率の低い賭けに出て、本当に通用しなかったら、今度こそケガを負わされるかもしれない……いや、ケガで済めばいいけど、最悪ケガじゃ済まない事態になるかもしれない……命を賭けてまで試すには分が悪すぎる……」


 そんな様な事を奈々に言われた。


 ホント、奈々の言う通りだ。

 イカレ女は、現場に機械人形を放っている黒幕がいる、という事を察しているようだった。

 次に失敗すれば、私の存在を気付かれてしまうかもしれない。そうなったら私はどうなるか……最悪な結果が簡単に想像できてしまう。


 私はそこまで考え付く事ができずに、危険な綱渡りをしている事に気が付かずに、簡単な気持ちで行動するところだった。

 奈々が私の味方をしてくれていて本当に良かったと思う。奈々はきっと私の勝利の女神になってくれるだろう。


 そして、そんな奈々が提示してきたのが、出し惜しみしないで、今出せる最高戦力を投入するべきだ、というものだった。


「イカレ女はまだ微妙に戦い慣れしていない感じがする。わざわざ戦いに慣れさせて強くしてやる必要はない。本当に強大な敵になる前に、芽は早いうちに摘んでおくべきだ」


 というのが奈々の考えだった。


 確かに、あのイカレ女の性能を考えれば、戦力を出し惜しみするべきではないだろう。


 ただ、問題があるとすれば……『どれが最高戦力にあたる機械人形なのかがわからない』という事だろう。


 機械人形の性能は現在進行形で更新している。

 そしてソレは、色々な状況・局面も想定して多種にわたって研究が行われている。

 つまり、性能がほぼ一緒で、何かしらに特化した機械人形が数体存在しているため、奈々がどういった特性を望んでいるのかがわからないため、どれを投入していいのかが決められないのだ。


 機械人形の種類を知らない奈々に「どれ?」とか言っても混乱させるだけだろうし……


 奈々の案に若干うろたえてしまったが、とりあえず私の独断で、スピード特化タイプを投入する事にした。

 イカレ女の攻撃力が凄まじいのは、今までの経験でよくわかっているので、当たらずに避け続ける事が可能な機体でなら相性がいいと思ったのだ。

 パワータイプと思われるイカレ女にスピードタイプを充てる。たぶん私の考えは間違ってはいないだろう。


 私はいつも通り、街中に機械人形を放つ。

 すると、まるで待ち構えていたかのように、すぐにその場にイカレ女が現れる。


 気付かないうちにコチラの動きを把握されてしまっているのかもしれないが、それはそれで好都合というものだ。

 今の私の目的はイカレ女を倒す事!おびき出す手間が減った事は返ってありがたい。


 そして、機械人形の前に現れたイカレ女だったが、何故か動く気配がなかった。

 口元が微妙に動いているようにも見えるので、この状況で誰かと通信でもしているのだろうか?


「敵を目の前にしているっていうのに、馬鹿にしているとしか思えないわね……いいわ、挨拶代わりに一発殴っておきなさい」


 決定的な隙を見逃してやるほど、私はお人好しではない。

 この機械人形の速さを目の当たりにして、侮った事を後悔しなさい!


 私の命令に従って、イカレ女に殴りかかる機械人形。

 といっても、殴っているモーションは速すぎてよくわからないのだけれど……


 しかし、殴った先には、いつの間にかイカレ女の腕があり、機械人形のパンチをガードしたような形になっていた。

 あんな至近距離で、マッハで動く機械人形の攻撃を視認するのは不可能なハズだ。

 それを考えれば、運よくパンチが飛んで来た位置に腕があった?


 とはいえ、あの速さで腕を殴られている事にはかわりない。

 いくらあのイカレ女が頑丈だとはいえ、少なくともしばらくはガードした方の腕は使い物にならないだろう。

 実際イカレ女は、若干だが驚いたような表情を浮かべていた。


 これは……チャンスかもしれない!


「相手は隙だらけになってるわ!今こそアンタの本気を見せる時よ!本気を出したアナタの攻撃は誰も視認する事のできない超高速拳だと教えてあげなさい!!」


 私がそう言った瞬間……そう、まさに『瞬間』だった。

 私の叫びに合わせるようにして動こうとした機械人形の体が弾け飛んだ。


 何が起きたのか理解できなかった。

 いや、理解したくなかっただけかもしれない……何が起きたのかは、いつの間にか、何かを殴った後の様なポーズで止まっているイカレ女を見れば、何が起きたのか想像はついてしまう。


 あのイカレ女……より速い速度で反撃してくるとか、完全に私に対しての当てつけだ。

 だがこれで一つわかった事がある。イカレ女を速さで翻弄するのは難しい、という事だ。この事も奈々と情報を共有すれば、きっと奈々が攻略法を考えてくれるだろう……


「あの!」


 突然後ろから声をかけられて、驚いて振り返る。


「やっと気付いてくれた……えっと、3組の田名網さん、ですよね?」


 色々と思考していたせいで、声をかけれれている事にまったく気付かなった……というよりも、機械人形に指示を与えるために、わざわざ人気のない場所を選んでいたので、他に人がいるなんて思ってもいなかった。


 冷静に考えれば、人がまったく来ないなんて、そんな保証はどこにもないのだ。

 もしかしたら勝てるかもしれない、とか思って柄にもなく興奮してしまって、周りへの警戒を怠ってしまっていた。


「あの……今、あそこで行われていた戦いに指示を出していましたよね!?……そして、田名網さん言った通りに戦いが動いてた……」


 やっぱり聞かれてた……そりゃあ、私を『田名網莉々』って認識したうえで声をかけてきてるって事はそうなのだろう。

 こんな事でもない限り、相手が私と知ってわざわざ声をかけてくるような奇特な人はいないだろう。


「田名網さんって、関係者なんですか!?それもけっこう偉い立場の!?」


 素直に肯定するべきか、それとも誤魔化して有耶無耶にするか……判断に迷うわね。

 奈々なら……奈々ならどうするべきか判断してくれるだろう!

 そうだ!困った事は全部奈々に聞こう!!


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