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第16話 最高戦力解禁

 またまたやってまいりました、駅前の広場。

 もう色々とボロボロになっており、いくつか『危険・立入禁止』と書かれた看板が立てられている。

 そりゃあ前々回は化物が大暴れしていたし、前回はビーム合戦が繰り広げられた場所だから、当たり前といえば当たり前の事なのかもしれない。

 むしろアレで、変わらない景観を維持していたら、この辺の建築物は何でできてんだ!?とかツッコミ入れたくなるレベルだろう。


 こんな場所で再び戦闘はあまりしたくはないのだけれど、莉々ちゃんが指定していた場所が、またココだったのだから仕方ない。

 心なしか、最初に見た時よりも人通りが少なくなっているような気がする。

 まぁ『2度ある事は3度ある』とか言うから用心して近づかないっていう結論にはなるよね……っていうか、実際これから3度目が実行されるわけだから、間違ってはいないのだろうけど、何とも複雑な心境だ。


 ちなみに莉々ちゃんには『イカレ女には実弾も通用しないよ』というような事は、それとなく伝えてある。

 もちろんそのまま伝えると「何で知ってるの?」ってなるので、「ビーム対策までしている奴が実弾の対策をしてないって事はないと思うよ」みたいな事を言いつつ最終的には「実弾も効かないよ」まで上手く誘導できたと思う。

 『もしかしたら効かないかもしれない……』から『効かないだろう!』まで話を持って行った私の話術をほめてやりたい気分である。


 そんなわけで、今回は莉々ちゃんには「もう小細工や出し惜しみはしないで、一番強力な化物を使ってみよう」と言ってみた。

 莉々ちゃんは微妙そうな表情をしてはいたが「そうよね……仕方ないわよね……」と渋々だが決断をしてくれていた。

 もちろん莉々ちゃんの気持ちもわかる。

 だって、その『一番強力な化物』でも倒せなかったら、その時の絶望感は凄いだろうしね。心が折れてしまう可能性だってあるだろう。

 でも、今までの戦力差を考えると、ちょっとやそっと化物のランクを上げたところで、エンジェルプリンセスをどうこうできるとは思えない。

 だからこそ、一度最高戦力で戦ってみて、どれくらい明確な差があるのかを見ておくべきだと思う。

 それによっては、どこをどう改良すればいいかが見えてくる事だってあるのだから……

 そうでもしなければ、いつまでたってもクッコロ展開……じゃない!?エンジェルプリンセスを倒す事はできないだろう。


 ……いや、何か私、莉々ちゃんの最高戦力が来ても勝てるつもりで考えてるけど、私が負ける可能性だってあるんだよね?

 つまるところ、今回はこの後で、ついにクッコロ展開になる可能性もある!?

 うわ!?どうしよう!?心の準備してなかったよ!?ドキドキ……じゃない!?ワクワク……でもない!?えっと、そうそう!怖くてビクビクしてきちゃったよ!?


『ふむ、どうやら現れたようだな……ん?どうやら今回は敵のタイプが違うようだな?負ける事はないだろうが、いちおう用心しておけ』


 私が物思いにふけっていると、凄まじいい轟音とお兄さんの声が同時に聞こえてきた。

 こちらも2度ある事は3度ある状態で、お兄さんはもう、私の勘というものを完全に信じこんでいるようで、まったく疑う事なく当たり前のように話を進めていた。


「用心しろって言われても、近づいて殴る蹴る以外でどう戦えばいいんですか?何か武器とかは、まだ無いんですか?」


 とりあえず、危険な破壊光線は使わない事前提で話をふってみる。

 そして、そうなると殴る蹴るくらいしか戦闘方法がないので、見た目的にちょっとよろしくなさそうな気がするのだ。


『すまんな。もう少しで完成するのだが、今はまだ何もないのだ』


「あ、いちおう作ってはいるんですね?どんな武器なんです?」


 武器なんてなくてもあっさり敵を撃破できるんで、武器とか用意する気はないのかと思ってた。


『うむ。「超高周波ブレード」という物なのだが、キミが見た目を気にしていた様だったので、斬った相手の皮膚等には一切ダメージを与えずに、内臓だけをグチャグチャに破壊するという、見た目平和な武器だ』


 平和の意味を一回辞書で調べてみろ!!?

 そんなの変身ヒロインが持ってるような武器じゃなくない!?何でそう間違った方向に努力しちゃうのこのお兄さん!?


「あのぉ……もっと、こう……ハート型とか星型とかのステッキで、そこからちょっとしたビームとかが出るような、そんな武器はないんですか?」


 そう、そういうのこそ変身ヒロインっぽい武器……いや!?ちょっと待とうか私!?そんな武器を要求したら、簡単にポンポン破壊光線ぶっ放すイカレたステッキが出てくるに決まってるでしょ!?このお兄さんに常識を期待したら絶対に馬鹿を見る!


「あ、やっぱりいいです……」


 そんな無駄な雑談をしている最中、決定的な隙と認識したのだろう。化物がいきなり殴りかかってきた。

 ただ、それに合わせて防御をする余裕はあったので、とりあえず化物の拳を手で受け止める。


「あ……」


 その瞬間思わず声が漏れてしまった。

 痛い!?

 そう!ちょっと痛かったのだ。

 それは、駄々っ子が腕を振り回して殴りかかってくるのに当たった程度の痛みではあったけれど、ちゃんとダメージを受けたのだ。


 やったよ莉々ちゃん!

 さすがは今まで出し惜しみしていただけの事はあるよ!こんな無茶苦茶な性能している私にダメージ通してるよ!


『予想外だな……まさか音速を超えた動きをしてくるとは……』


 ……え?お兄さん、今何て言った?『音速を超えた動き』?私余裕を持ってガードしちゃったんだけど!?

 初回変身した時に聞いた、驚異的な動体視力と状況に合わせて体感時間を自動調節してくれる機能って、何の前触れもなく発動するの!?いや、もう色々とヤバくない!?


『だが、まだまだ甘いな……音速を超えた程度では話にならんな。エンジェルプリンセスに決定打を与えたいのなら光速の動きを身につけるのだな』


 何をさり気なく無茶苦茶な事言ってんのお兄さん。

 そうですか、青銅〇闘士じゃ無理ですか?黄金聖〇士の域にまでならないと話になりませんか。でも普通に生活している人間が第七感まで覚醒するのは無理だと思いますよ。


『良い機会だ……その化物を殴る時、出来るだけ速く殴る事を意識して殴ってみろ』


 何が良い機会なのかはよくわからないが、とにかく私はお兄さんに言われた通り、強く殴るという感じよりも、軽く、よりスピードが出るように意識しながら、化物に殴りかかってみる。


 その瞬間、化物の体が木っ端微塵にはじけ飛んだ。

 今まで出て来た化物よりも一回り大きい感じの化物が……莉々ちゃんが出し惜しみしていた最高戦力だと思われる化物が……


「な、なにが起きた……の?」


 だって私、あまり力込めてなかったよ!?速くコブシを動かそうとしただけだよ!?


『スピードが速ければ速い分、それは破壊力に繋がる……さあ決め台詞でも言ってやれ「せめてこれくらいの速度が出せてから挑んで来い!」とな』


 え!?どういう事!?ひょっとして私、今光速で殴ってたの!?

 何て事を……私は何て事を……


「何で『ライトニ〇グ・ボルト!』って叫ばなかったの私ぃぃ!!?」


 もしくはプラズマ。


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