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心に百合の花が咲く明日  作者: あおば
First Sequence
2/51

Scene2【綺麗なバラの腹の内】



 チラチラとなにを見ようとしていたのか、変態さんだった心咲(みさき)ちゃんは、けっきょく楓花(ふうか)ちゃんを起こしてあげるみたいです。

 確かに、教室の扉は開け閉めがけっこううるさく。

 それにも関わらず起きないというのは、もしかしたら体調が悪いのかもしれないですからね。


西園寺(さいおんじ)さん、大丈夫か?」


 楓花ちゃんの隣まで来た心咲ちゃんが、声をかけます。

 しかし、楓花ちゃんが起きる気配はありません。

 うーん、よく寝ているのか、それとも。


 しばらくの後、心咲ちゃんはきょろきょろと周りを確認してから、楓花ちゃんの肩に手をかけるようです。

 やっぱり不審ではありますが、心咲ちゃんの心にやましい気持ちはなくて。


「さ、西園寺さん?」


 おそるおそるかけられた小さな手が、楓花ちゃんをぎこちなく揺らします。


「ぅん……?」


 なんだか可愛い声を上げてから、楓花ちゃんは身体を起こしました。

 心咲ちゃんが焦ったように手を引っ込める様子も、なかなかに可愛いですね。


 まだ完全に覚醒していないのか、楓花ちゃんは少し潤んだ瞳で、机の横に立つ心咲ちゃんをぼんやりと見上げます。


東堂(とうどう)さん……?」


 楓花ちゃんが、心咲ちゃんの名前をつぶやきました。

 花のように美しい唇のすき間から自分の名前が出てきて、心咲ちゃんは、知ってくれていたんだという嬉しさと、よくわからない謎の背徳感を覚えているようです。


「ごめんね、寝ちゃってたみたい」


 両手を組んで、それを頭上に伸ばして、楓花ちゃんは大きく伸びをしました。

 さらさらと、ミディアムの黒髪が背中に流れます。

 そして、ブレザー越しでもわかるぐらいの、大きなお胸が強調されます。


 その様子を見てはいけないもののように、心咲ちゃんは目を逸らしていました。


「いや、具合が悪いとかじゃなければ、いいんだけど……」


 ふにゃふにゃと、なぜか言い訳するように、心咲ちゃんは言いました。

 いつもの横柄な態度はどこかに消え去り、まるで借りてきた猫のようです。


「ふふ……東堂さん、ありがとう。心配してくれたのね」


 くしゃっと微笑む楓花ちゃんの顔は、それを視界の端で捉えただけの心咲ちゃんでも心奪われるもので。

 心咲ちゃんは、あいまいに頷くことしかできませんでした。


「じゃあ、帰りましょうか?」


 そう言って、楓花ちゃんが鞄を手に立ち上がったときに、ふらっとよろめいてしまって。

 隣に立っていた心咲ちゃんが、慌てて支えます。

 不意に楓花ちゃんの柔らかさを感じてしまった心咲ちゃんは、頬をぽっと赤らめました。


「ぁっ、えっと……おい、ホントに平気か?」


 立った状態では、心咲ちゃんの頭のけっこう上に楓花ちゃんの頭があるので、心咲ちゃんは首をぐわーっと上げて話しています。うん、可愛らしいですね。


「ちょっと、寝過ぎちゃったのかも……」


 心咲ちゃんに軽くもたれかかりながら、楓花ちゃんは目をしぱしぱと(またた)かせました。

 そのアンニュイな雰囲気は、場のえっちレベルを数段引き上げます。

 そして、続けざまに。


「東堂さん、もしよければ、送っていってくれない?」


 おーっと、出ましたっ!

 楓花ちゃんの、絶対に断れないおねだり攻撃ですっ!

 これには心咲ちゃんも、とりあえず頷くディフェンスを繰り出すことしかできないっ!

 終始、楓花ちゃんペースで試合が続いていくぅ!


「ふふ……ありがとう、よろしくね」


 楓花ちゃんは嬉しそうに、心咲ちゃんの腕を取りました。

 豊満な包容力を発揮されて、考える力がどこかに囚われてしまったようですね。


「う、うん……?」


 よくわからないままに、心咲ちゃんは歩きはじめました。

 どうやら心咲ちゃんは、流されやすい女の子みたいですね。

 もし心咲ちゃんを狙っている子がいるならば、とりあえず、がつんとアタックしてみてはいかがでしょうか?

【後書き】

流されて楓花ちゃんを送ることになった心咲ちゃん。

ちょっと妖しい楓花ちゃんの思惑はいったい?

もしよろしければ、ブックマークをした上で続きをお待ちいただけると嬉しいです。

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