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第四話 旅立ち

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「朝は、いいですねぇ。」


私がいるのは、家からそんなに離れていない山の頂上。

前世のあの処刑場で気が付いた美しい空の景色を見てから、修行ついでに早朝でこの山から日の出を見ることが日課になっている。


この世界にも四季が存在していて、今はその中のはるといったところ。

朝は少しヒンヤリした気温だが、鬼の体は代謝もよく基礎体温がかなり高いおかげで春の朝はというものを心の底から堪能できる。


何よりここから見る鬼の里の景色は絶景と言っても過言じゃないほど綺麗でずっと見ていられる。

そして、今日私は、この十年間心待ちにしていたことがついに訪れた。それはー


『ザッ』


聴覚の鋭い鬼の耳は、遠くから聞こえる足音さえも捉えることが出来、丁度山の麓からかなりのスピードで駆け上がってくる地面を蹴りつける音が聞こえてきた。

だけど、この足音ももう聞きなれた足音、近づいてくるその音に私は少しはにかむ。


「ジャック〜、どこ〜?」

「母様!私はこちらです!」


茂みから姿を出したのは、角が生え、目の下から顎にかけて赤の線が顔についている赤鬼の母様だ。


「またここで修行してたの?」

「ええ、もうすぐですので最近はもっと気合いを入れて修行をですね。」

「楽しみなのは分かるけど、あまり思い詰めたことは控えるようにしないとね。」


昔から変わらない優しい笑顔で私にそう言って、私も「分かりました。」と言って鬼に戻った。


この山で初めての日の出を見せてくれたのは他でもない母様だった。

あの頃からこの山に来ている私を探し、一緒に帰るのが母様の日課となっていた。


修行と言っても、この二百メートルほどの山を鬼が登るとほんの数秒で駆け上がることが出来る。

修行をしていない母様でさえもこのくらいの山であれば、朝の準備運動程度で登れる。


なれば、私はどうなのかというと。

薬で人化し、それでも消しきれない鬼の馬鹿力は岩を持って帳消しにして山を登っていた。

帰りも勿論岩を担いで、山を下っていく。


「そう言えば母様、今日父様は私の旅立ちを見届けることが出来るのですか?」

「ごめんなさいジャック。今日もパパは例の人間界で起きている事件の会議で忙しいらしいの。」

「そうですか。」


今人間界では、ある事件が話題になっている。

なんでも、男女関係なく若い学生たちを拐って、その一週間後死体の状態で見つかるという何ともおぞましい事件らしいのだが、これが鬼の世界と人間の世界との亀裂を更に深いものになってしまう噂が流れている。


その噂というのが、人間たちはこの殺人鬼のことを『殺人オニ』と呼んでいるらしい。


誰がそんな呼び方をし始めたのかは知らないが、それのせいで人間たちはこの殺人は知能の高い鬼人の仕業だと睨んでいるらしく、鬼の里の長とその組合である父様を始め幹部たちがこの事態をどのようにして乗り切ろうかという会議がもう何度も行われているのだ。


「父様も大変なのは知っていますが、そちらこそどうか体に気を付けてください。でなければ、私も旅立ちづらくなります。」

「私は出来れば、そっちの方がいいと思ってるよ。ジャックがその変質者の被害を受けないか今でもとても心配なのよ?」


私の身を案じてくれる優しき母様の手を両手で握る。


「母様どうかこの親不孝者を許してください。どうしても、この世界をもっと知りたいのです。」

「分かっているわ、今更止めることもしないから。」


母様は、私のわがままを優しい笑顔で許してくれた。


「それに、もうすぐ時間でしょ?早めに帰って支度をしましょ?」

「そうですね。」


私と母様は風のごとき速さで山を下り終え家に戻った。

そして、準備も終わりとうとう旅立ちの時。


「ジャック、本当に行っちゃうの?」

「母様、そんな泣きそうな顔をしないでください。長期休暇の時は帰ってきますから。」


私達がいるのは、鬼の里の出入口門の下。

今背負っている大きなバッグの中には普段使う用の私服などの日用品を入れている。


「そうね。ジャックが頑張るなら私も頑張らないとね。」

「それでこそ、私の母様です。では、私ジャック・ピーター、人間界の魔術学院ルノアールに行ってきます。」


最後にそう言った私は、鬼の出せるトップスピードで影も残さず、その場から姿を消した。


「はぁ、本当に行ってしまったわ。あなたもそんなところにいないで素直に見送りをしたらよかったのではないですか?」


出入口門の柱から出る一つの影。それは、ジャックの父だった。


「だって!だっでぇぇぇ!あの優しいジャックがぁぁぁ!人間界に行くと思うと心配でぇぇぇ!!」


父というには少し威厳が足りていないというのが問題ではあるが。


「もう、パパったら泣かないでよぉ。ジャックなら大丈夫。あの子ならどこだって一人で生活できる力を持っているわ。しかも、ルノアール学院都市に着けば姉さんが何とかしてくれる。」

「そうだね。ジャックなら大丈夫だね。」


父は、情けない涙を拭き取りジャックが走っていった方向を見上げた。


「行ってらっしゃい。ジャック。」


そして、母も変わらない太陽に似た温かく優しい笑顔で、見送った。


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