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第二話 死んだその先は?

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私のことは一番私が知っている。だから、私が死んだということも私が一番理解している。だけど何だろうかこの感じは。


死という世界は端的に言えば何もない無の世界だった。暗く悲しい何もない世界がただずっと広がり続ける。といったところだろうか。


そこから何があったのか。ということなのだが。

なんだか、白い光に包まれた。


何を言っているのか分からないと思うだろうが、安心してください、私自身も分かっていないし、理解してほしいとも思っていない。


それよりも、私の願いは叶うのだろうか。

草、虫、魚、欲張りを言って鳥なのだがどうなんだろうか。というよりも私はなぜ死んだのに私のままなのだろうか。感情というのは、死んだときにリセットされるものだと思っていたが、どうやらそうでもないようだ。


「おんぎゃぁ、おんぎゃぁ。」

(赤子の声?何処かで泣いているのでしょうか。)


なにやらさっきよりも眩しいような気もする。なんというか電気を上から当てられたかのような。


「おめでとうございます!お母さんよく頑張りましたね!元気な男の子ですよ!」

(男の子?おっと!)


私は何が起きたのか理解するのに時間がかかった。このフワフワする感じは一度も味わったことの無い感覚だったからだ。


「私の可愛い坊や。産まれてきてくれてありがとう。」

その時、私は何か温かいものを感じた。それは、生きてきた中で感じたことの無い温かさだった。


(もしや、これが世に言う『だっこ』と言うものですか!?と言うことは、赤子とは私のことですか!?)


何ということだ。紳士である私がこうも品も無く泣くなんてことがあろうとは。そういう意味では、前の世界の時は赤子の記憶が無かったことが少し羨ましい。


そして、また残念な事実にも気が付いてしまいました。この泣き声に、言葉使い、赤子を産む施設があるほどの技術の高さからして、また人間にでも生まれ変わったのでしょう。


(ああ、可哀想に。)


私が人間として、しかも前世の記憶が持ったまま、また人間として転生されたのだから。

この世界では、いったいどれほどの人間を殺めてしまうのだろうか。


この世界に警察という機関があれば、前の世界のようにポンコツでなければいいのだが。でなければ、退屈だったという理由でまた自首しなければいけない。

生まれ変われるわけがないと、叫んでいたあの少年が少し哀れに思えてしまう。


「あなた、産まれたわ!」

「ああ、ありがとう。本当によく頑張った!」


男性の声が聞こえた。私の誕生に喜んでいるところからして父親という者だろう。


前の世界では、そのような存在がいませんでしたから、嬉しいような、何とも言えないようなそんな感じがした。


重たかった瞼が動かせることに気が付いた私は眩しさもあって少し開けづらかったのだか、きっと親という者がどのような存在なのかと気になっていただろう。無理してその目を開けた。


(ああ、父様、母様、どうかこの親不孝者になるかもしれない私を許してください。もし、この世界でも死刑で死ぬことがあるのであれば、その時は、最後まで私の姿を見守ってくださいね。)


そう心の中で言った私は、初めてその存在を確認する。


「あ、あなた!坊やが目を開けたわ!」

「本当だ、なんて可愛らしんだ!」


(・・・。すみません父様、母様、今一度目を閉じます。)


「ああ、また閉じちゃった!」

(えーっと。なんと言えばいいのでしょうか。)


なんだか、目の下から顎にかけて二人とも赤い線のようなものがあった気が。あと、これも気のせいだろうか、二人とも額に角のような物が生えていたような。


私は、そんな少しパニックに陥った状態で自分が見たものを再度確認するために今度はうっすらと目を開ける。そして、閉じる。


(ありますねー・・・角。これ完全に人間じゃないですよね。え、何ですかこの生き物。)


この生き物から産まれてきたと言うことは恐らく私もこの謎の生き物なのだろうか。だか、焦ることはない。落ち着いて見ていきましょう。


「元気に育ってね!私たちの赤ちゃん。」


母様と父様は私に笑ってそう言いました。それを見たら段々と角のなんて、目の下の模様なんてどうでもよくなっていった。ただ、人間と比べたらやたら長い犬歯のようなものがあるのだが。


(これ確実に人間じゃなくて、鬼ですね。今思えば、私の額にも角ありましたし。)


神様というのも、遊びたがり屋が多いようだ。

前の世界ではよく『殺人鬼』とは言われていましたが、本当に鬼にするとは予想外です。


自我というものが出てきてから、感情をコントロールすることが出来ました。正直ずっと泣いているのかはちょっとした過呼吸になったような感じがして嫌だったので助かった。


『カラカラ』と軽い扉の音がして、見てみると白衣を着て、剥げた頭には二本の角、目の模様は紫と私の両親とは少し違った種類の鬼が立っていた。


「どうも、ピーター様。そして、ピーター夫人ご出産おめでとうございます。」

「先生もありがとうございます!」

「こちらこそ、元気な子が産まれたと聞いた時は、一安心でしたよ。ところで、名前の方は決まっているのですか?」


どうやら、私の家の名前はピーターと言うそうだ。

何・ピーターとなるのか楽しみです。センスのある名前をお願いしますよ。

私は目線で両親を威圧し、プレッシャーを与えていく。母様はそんな医者様の言葉を微笑みながら応えた。


「ジャック。ジャック・ピーターにしようかと。」

「おお!それはまたよい名前ですな。この子もさぞや嬉しいことでしょう。」

(いえ、前世と名前が被っているのですが?)


流石我が母様、名前を前世と被せてくるあたりもうただ者ではない臭いを出してきますね。まぁ、名前なんてどうでもいいことなのですが。


「では、話はこの辺りにして。早速、よろしいですかな?」

「はい、お願いします。」


その先生の右手に持っているバカでかい注射器が気になって仕方がないのだが、それは一体誰に向かって打つ予定なのだろうか。


「奥様、ジャック君を。」

(あ、やっぱり私ですか?)

「はい。」


少し泣きながら手放す母様。こんなにも母様という存在から離れたくないと思ったことはありません。


(母様、父様。私、死刑になる前に死んでしまいそうなのですが。医者様よ、私も人の体で遊ぶことはこれまで何度もしてきましたが、そんな太い針で刺すほど鬼ではありませんでしたよ?・・・あ、相手、鬼でした。)

「奥様、旦那様。もし、万が一この薬が適合しない場合、この子はきっとこの世で生きていくには辛いことが多いかもしれません。その時は、お二人でお考えください。」

「はい、覚悟は出来ています。」


何処かで引っかかるようなことを両親と医者様は話して、ついにその大針を構えた。

私のお尻に向かって。


(あのー、待ってもらっていいですか?そんなもの普通赤子に向かって打つような物ではないと思うですよ。分かっています?他にも方法らあると思うのですが、腕とか肩とか、なんでよりによってそこなんですか?しかも、そんな深刻な顔をしなくてもいいじゃありませんか。そもそもそれを打たないとか、飲み薬にするとか麻酔をかけて痛みを無くすとか、寝ている間にとか。医者様、分かっています?もっといい方法がー)


『ブスリッ』

(あ。)


「おめでとうございます。薬は適合しました。これでもう心配はいりませんよ。」

「ありがとうございます!あなた!」

「ああ!」


(あなた方が喜んでくれて、こちらも刺された甲斐がありました。あー、痛い。)


「それにしても、とても強い子だ。これを受けて泣かなかった赤子なんていないのに。」

(当たり前です。これしきの痛みで、しかも、あんなことが理由で紳士であるこの私が涙を流すことがあってなるものですか。あー、痛い。)

「しかし、これでこの子人間に興味を持っても恐れることが無く人間の世界に入ることが出来ます。」

(人間の世界!?母様、それはいったい。)


そう思った私はある違和感に気が付いた。ゆっくりと額を触ってみると、さっきあったはずの角が無くなっているではないか。母様や父様にある目の下の模様も。


「さぁ、ジャック。お家に帰りましょうね。」


そう言っている母様の額にも鬼の要素である物が無くなっていた。まるで、さっきまでのことを否定するかのように綺麗さっぱり。まさしく人間になっていたのだ。

私、前世ジャック・ザ・リッパーは、死んで鬼人ジャック・ピーターとして生まれ変わったのであった。

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