Verite
どれくらい気を失っていたんだろう…あたりは夕日で少し紅く染まっていた。俺の目が覚めたのは…そんな時間だった。しばらく放心状態になっていた。そんな時…背後から枝を踏む音が聞こえた。その後か細い声で
「やはり…ココに居たんですね…」
そんな言葉が俺の耳に入った。俺はその声に聞き覚えがあり…その声の主の正体をすぐに予想してしまった。
「ったく…そこでコソコソ見てたのかよ…」
俺はそう言い背後を振り返り…声の主であろう人物の名前を言った。
「並木澤 夏鈴さんよ…」
俺が予想した通り…そこには並木澤が立っていた。目尻を赤くさせながら…俺はコイツが居るとは思っても無く少し驚いている。だが…もっと驚く事でジョークだったら一番言って欲しくなかった事が、並木澤の口から飛んできた。
「貴方が好きな朱菜優衣は…私の従姉妹だったんです…」
その時俺の中で何かが込み上げてきた。それが、怒りなのか哀しみなのか…分からないが…
「ふざけんな……お前が…そんな事を…ふざけた事を…」
そう言いかけたその時こんな並木澤とは違う声色である言葉が俺の耳に入って来た。
「嘘じゃねえぜ…ホントの事さ」
その声が聞こえた方向に顔を向けると…草道がいた。勿論俺はコイツもこの場所に居る事を把握していない。そして草道も…悪い冗談の様な言葉を吐き捨てる。
「本当にコイツは…朱菜の従姉妹なんだよ…それに…」
草道は言葉を濁した。恐らく躊躇ってしまったのだろう最終的に、苦虫を噛み潰したような顔をしてこう言った。
「……コレは朱菜が計画し…俺と並木澤で実行した事なんだよ…」
どうゆう意味だ?考えが付かない。そのポンコツな脳みそで考査する。だが思い付かないそれに、見かねた草道は溜め息を吐きながらこう言った。
「朱菜はお前が「想い出」を嫌った理由を知りたかった…でもその時に…朱菜の持病が悪化して…余命宣告された…だから自分が元から好きな人の嫌いなものを克服させて…笑顔にさせたかったんだろうぜ…」
そう草道が言いながら写真を取り出した。その写真を見て俺は驚愕した。
「これって…俺の家の玄関飾ってある…」
そう俺の家の玄関に飾ってある…小さな女の子と男の子が映った写真だった。
「なん…で…これ…!」
そう言うと草道はその写真を仕舞いながらこう言った。
「アイツが語ったくれたよ…朱菜が…ひぐとは…保育園からの幼馴染って…明るく…どんなことでも大切にしてくれたひぐが…変わっちゃまった理由が知りたい。」
そんな事無い…だって俺はアイツとは初対面だったはずだ…俺はそう思い空を見上げて瞳を、閉じた。その時に思い出した。
「あ…ああ…そうゆうことか…アイツが朱菜だったんだな…」
俺はそう言い嗚咽を零した。想い出なんて必要無い。そんな言葉を吐き続けた俺は…朱菜の事も忘れかけていた。その事が一番の後悔と思いながら。
アレから20分位して…俺は空に手を翳し言った。君が心配しているであろう事を安心させるように
「安心しろよ…お前の心配している事は…もう無いよ」
そう言った後三人で霊園を後にする。草道からこう提案が出ながら。
「よーし!…中華料理屋行こうぜ!ほら!湿っぽい感情なんか捨ててよ!」
そう言って出ようとする…ふと振り返るとそこに朱菜がいた。朱菜はこっちに手を振りながら…口パクだがこう言った。
「ありがとう…ごめんね…またね……」
その後俺は涙を流しながら…笑って言ってみせた。優衣を心配させないように。
「…またな」
と言い霊園を後にした。十年前のその季節は…ライラックが一番綺麗に咲く六月の事だった。