ライラックの香りの少女
次の日の休憩時間。俺は草道と自販機の前で、会話をしていた。ふざけた日常の話や…仕事の大変さ等様々な話をした。正直…草道と二人きりで会話したのは、久々だった。そんな中草道がこんな愚痴を零した。
「あーあ!…パソコン使いにきぃ〜」
草道はパソコン部や…機械科所属だった訳ではなく…美術系だったのであまり…パソコンや機械に詳しくない。それに…コイツは、分からないことをそのままにする為…パソコンや携帯でのブラウザをゲーム関連の調べ物以外に、使った事が無かった。そんな草道に俺は悪意増し増しでこう言った。
「パソコンや携帯で動画見たりゲーム関連の調べ物とゲームばかりしてるからだよ…少しはタイピングとかしてみたら?」
完全にいつものふざけの仕返しで言ったつもりだった。だが草道から出た言葉は俺にしては…言い訳にしか聞こえなかった。
「骨董品調べが趣味なお前に言われたきゃねぇよ」
言いがかりだ。骨董品を調べる際はもちろん…ブラウザを使っている。その為かこの草道の言葉は俺にとっては不愉快だった。
「お前…骨董品を調べるのに…ノートとペンだけでいいとお思いで?」
そんな感じに説教を初めようとすると後ろから足音が、聞こえた。俺は気にしていなかったが…草道はかなり焦った様子でこう言った。
「ひぐ!後ろ!」
俺は振り返りながら草道の叫び声に反応した。
「……………へ?」
後ろに振り返るとそこには俺や草道と同じぐらいの歳の女が走っていた。
「すいません!通り…」
そのまま俺に直撃。俺は床に倒れ込む。それと同時に「きゃっ!」と可愛らしい声が聞こえた。それだけでは無い…匂いがした。嗅いだことのある匂いこれは…ライラックなのか?優しい甘い匂いが、俺の鼻の中を包んでいった。ライラック…匂いを嗅ぐと思い出す。朱菜 優衣の事を…しばらくして、俺は起き上がった。それと同時に聞こえたのは謝罪の言葉だった。
「ごめんなさい!急いでいたんです!」
俺は困惑しながらも一応廊下で、走ってはいけない事を伝えた。
「あのな…廊下で走ってこうなるケースが多くなるから…急いでても走らないでくれ…学校で言われなかったか?…って俺が言えたことでは無いが…」
この女…とごかで見た事あると思っていたが…俺と草道の同期… 並木澤 夏鈴 だった。黒髪でロングヘアのストレートはまさに「日光が当たり地面に写し出される木の葉」を連想させる。性格は清楚系だろう。多分同じ過ちを、繰り返さないようにする性格だ。俺はそんな事を心中で思い。歩いてオフィスに向かう並木澤を草道と一緒に見送った。しばらく放心状態の俺に草道が言った。
「ひぐ?…どうした?」
俺は草道にこう言った。まるで遠い記憶を見るように
「俺は朱菜が帰って来るのをずっーと…待ってんのかな?」
と…何故そう聞いたのか…それは朱菜もライラックの匂いがしていたからなのだ。