魔導書転生 ~百合百合大作戦を決行せよ!~
元々連載用に書いていたものを短編用に書き直したものです。
没になった理由は余りにもテンプレ過ぎたことです。作者はアンチテンプレ気味なので。
ですが、人気が出たら連載するかもしれません。
突然だが、俺は元高校生だ。名前は……思い出せない。それどころかどこに住んでいたかも忘れてしまった! なんてことだ……。そしてこの状況は誰がどう見てもおかしい。
「おめでとうございます、ルネリーゼ様! 特殊魔導書でございます!」
「公爵家の令嬢として当然のことですわ」
朝起きたら魔導書になった。
待て待て、絶対おかしい! 前世のことを思い出せ!
魔導書になる前、俺は何をしていた?
まず初めに起きただろ? そして……
「なんだ? スマホに変な通知が来ている。……転生特典今だけもらえる? 馬鹿馬鹿しい。こんなことがあったらみんなとっくに転生してるわ! けど、それでも開いちゃうのが男の性だよなぁ」
これだ! 絶対これが原因だ! 何でこんな選択をしてしまったんだ俺……
そんなことを考えている内に公爵様とやらに運ばれてしまった。
「なんか古臭いですわね。それが魔導書というものかしら」
余計なお世話だ。だが、俺の持ち主となった人物は意外と顔がいい。むしろ滅茶苦茶可愛い。
これはもしかして人生勝ち組か!?
「とりあえず、メイドに運ばせましょう。アン! こちらへ」
「はい。こちらですお嬢様」
「これを宝物庫に入れておいて」
「かしこまりました」
えー! いやちょっと待て! 俺なんかレアな魔導書なんだろ!? もしかしていらない子扱い? 倉庫番で一生を終えるなんて勘弁だぞ!
「学園の入学式まで触って壊してしまっては大変ですからね」
「流石お嬢様。高価な物への扱い方がわかってらっしゃる。ですがお気をつけください。中には呪いの込められ、話せる魔導書もあるらしいので」
いやそれ俺の事じゃん! 嫌だよ捨てられるの!
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。そんな本だったら私がしっかり躾けて見せますわ」
「ご立派です。私もこのような素晴らしい主人に仕えることができて幸せです!」
「ありがとう。私もあなたのことが大好きよ」
いい話だなぁ。……じゃない! 俺いったいどうなるんだ?
あれから数日が立ち、俺はやっと召喚者と再会できた。見たところ召喚者の部屋の中のようだ。
「さて、魔導書を開けなければ話が始まりませんね……」
「お嬢様、応援しています」
何か緊張しているようだが、開けたらどうなるかは俺にもわからない。
「大丈夫よ。私は栄光あるレーダー家の娘、ルネリーゼ・レーダーなの。これくらいのことは出来て当然だわ」
はて、どこかで聞いた気が……
「さて、開けるわよ!」
俺の思い違いでなければ、
「あら? 白紙?」
「君、もしかしてあの乙女ゲームの悪役令嬢じゃない?」
「ギャー! 本が喋った!」
召喚者から想像もできないような悲鳴が上げられた。メイドも予想外だったようでポカンとしたままだ。
「えっと、あの……」
「お嬢様お下がりください! ここは私が命を変えてでもお守りします!」
なんか物騒なことになってきたぞ……
「さぁ魔導書よ! 生贄が欲しいならば、私の命を取るがいい!」
「やめてアン! 貴方が死ぬところなんて見たくないわ!」
「構いません! 私がお嬢様の栄光の礎となるならどんなことでも……」
いやいや何俺が生贄を取ることが前提になってるんだ!
「俺は生贄なんて取らないぞ!」
そう俺が言うと、また二人ともポカンとした表情になった。いやいや、ポカンとしすぎでしょう。
「あなた、生贄を取らないの?」
「もちろん」
「何か対価は?」
「別に取れなんて誰にも命令されてないし」
そういうと召喚者はぐったりと気が抜けたように倒れてしまった。
「魔導書! さては何か呪術を――」
「いや、俺呪術の方法なんて知らないし」
そういうとまたポカンとした表情になる。あれ? 何か変なこと言った? ……は! まさか!
「私はおしまいだわ。喋れるだけの愉快な魔導書を召喚してしまうなんて!」
「落ち着いてください! 大道芸としてなら何とか……」
「私は公爵家なのですよ! 平民とは違います! あぁ、こんなので特殊クラスなんて……いっそのこと普通の属性魔導書なら良かったのに……」
そうだった。俺が姉にやらされていた乙女ゲームでは、魔導書を使ってバトルをするんだ。
普通の人はある一つの属性の魔導書を召喚するが、ゲームの主人公は全属性の魔導書を使い、攻略キャラは、特殊属性の魔導書を使う。ただ、唯一この悪役令嬢だけは普通の魔導書だったのだ。
「あの、その……ごめんね」
「ごめんで済んだら騎士は必要ありません!」
俺は希少属性の魔導書らしいが、今のところ話せるだけ。ゲームの悪役令嬢もかわいそうと思ったくらいなんだが、それよりも更にひどい結果になってしまった。
「お嬢様、大丈夫です。この事実を隠し通せば……」
「そうね、でもイザーク様に失望されないかしら……」
されます、とは言えない雰囲気だった。
更に平民の主人公が全属性だったせいもあって嫉妬する結果となったようだ。まぁ、王子様とかと仲が悪いのは前々からだったらしいのだが。
「俺が何とかするか?」
「なに? 魔導書。貴方に策でもあるの?」
俺は別にこの悪役令嬢が嫌いだったわけではない。勿論主人公は可愛かったが、それに負けないくらい悪役令嬢も可愛かった。
だから何とかしたいのだが……
ここで俺の頭に名案が浮かぶ。
「俺が魔術を使えればいいんだ!」
「それって名案なんですか?」
その疑問ももっともだ。だが、今から聞く説明で俺の評価も変わるだろう。
「普通の魔導書には意思がない。だから書かれている内容を勉強することで、その人オリジナルの魔法が扱えるようになる。此処まではあってるよな」
「詳しいのね」
当たり前だ。俺がどんだけやりたくもないこのゲームをやりこんだと思う。
「そして、魔導書が無くても魔術はある一定のものは使える。そうですよね」
「ええ。汎用の魔導書を見て勉強をすれば一通りの魔術を扱うことはできますわ。けれど、専用の魔導書の魔術に比べたら威力は格段に下がります」
そうだろう。ここで俺の特殊能力が光るのだ。
「俺にその魔術理論を書き込めば、俺も勉強できる。魔導書のおかげで魔力も有り余っているし、普通の魔術でも……」
「あ! 威力を増大させて撃てば、立派な魔導書の能力になるのね!」
「そういうことだ」
最も、魔力に関してはどのくらいあるのかはさっぱりわからないのだが。
「お嬢様、どうしましょうか。この魔導書が嘘をついている可能性もございます」
「大丈夫よアン。この魔導書が嘘をついていたにせよ、私にはこれしか方法がないの。公爵家の令嬢として、立派に制御してみせるわ!」
「お嬢様、なんとご立派な」
感動を壊したくないので言わないが、この計画の裏には実はもう一つの作戦がある。その名も【魔女っ子百合百合ハーレム大作戦】だ!
なぜこの作戦を決行するのか。それは、俺がプレイした乙女ゲームの攻略対象の男が、皆そろいもそろってロクデナシばっかりだからだ。授業はさぼる。王国の未来なんて一つも考えていない。自分の出世ばっかり。他にも性格や言動がねじ曲がった奴ばっかりだ。
「イザーク様に認められるかしら」
そのイザークという奴も漏れなく顔だけのクソ野郎だ。
対してこの乙女ゲームには女性キャラが皆可愛いし性格もよい。悪役令嬢とその取り巻きとメイド。主人公。百合要員として、主人公の友達。なのであの乙女ゲームをしていると、
「クソ! 何でこいつがくっつくんだ! 離れろ! お前には主人公は釣り合わない!」
と無意識に誘いを断り続け、いつも百合エンドを迎えてしまっていた。
そこで今回は、この魔術を使って並みいる男どもを押し返し、女性キャラクターばかりの百合百合ハーレムエンドを作り出す! というのが最終的な目標だ!
このゲームをすべて知っている俺ならやれる! できる!
「さて召喚者、いや、ルネリーゼといったほうがいいか?」
「リーゼでいいわよ」
「ではリーゼ。これからは協力関係だ。ともにこの作戦を成功させるぞ!」
「ええ! 頑張りましょう!」
必ずこの作戦を成功させるぞ!
遂にこの日が来た。今俺とルネリーゼは王家主催の戦勝パーティーに呼ばれている。悪役令嬢に婚約破棄宣言をする時だ。
本来のストーリーなら悪役令嬢は婚約破棄された後、家を追放されて地方の豚みたいな領主に嫁ぐのだが、今回は俺がいる。破滅エンドなんかにするものか!
「国王陛下! どうか私の嘆願をお聞きください!」
王子のイザークが声を上げる。いよいよだ。
「どうした、イザークよ。何か皆の衆に伝えたいことでもあるのか?」
「はい。私、イザーク・ハイデルベルクはルネリーゼ・レーダーとの婚約を破棄し、この、アドリアーナ・バーモンデと婚約することを宣言します!」
「ヨハン・アルトマンも、アドリアーナ・バーモンデと婚約することを宣言します!」
「同じく、ブレット・バートン」
「同じく、ランベール・クレソン」
「同じく、ヴァレリア・デルモンテ」
会場がざわめく。当然だ。婚約破棄というのは最終手段。約束を破らねばならないほど仲が悪いか、婚約する価値がなくなったかのどちらかだ。
公爵家の力は全く落ちていないので、この場合は前者しかありえない。
「まぁみんな! そんなに私のことを!」
婚約を宣言されたアドリアーナはわざとらしそうに喜ぶ。前々から積極的に攻略対象に接近していたので利用させてもらったが、予想道理金と財産が目的だったか。
「沈まれ!」
王座から怒号が飛んだ。ゲームでも怖いと思ったが、生で聞くと迫力が違う。
「イザーク皇太子。なぜこのようになったのか説明したまえ」
国王が公の立場から質問した。
これにイザークが自信満々に答える。
「私の婚約者として目に余る行動をしました」
「ほう、どんな行動だ」
「はい。バーモンデに様々な嫌がらせを行いました。仲間はずれにもしましたし、階段から突き落とそうとしたこともありました。更に、先ほどの戦いでも妨害ばかりしていました!」
「なんと!」
また会場はざわめく、更にここにアドリアーナが畳掛ける。
「そうですわ。私怖くて怖くて……でも、この人たちが助けてくれたのです」
「成程」
国王は深く頷いていた。公の立場からの質問だったが、やはり息子なのだから多少ひいき目で見てしまうのだろう
「お待ちください陛下! 私の弁解も聞いていただけないでしょうか!」
「うむ。発言を許す」
ここで我らがルネリーゼのターン。
「私は何もしておりません! 多少この平民が身に余る行動をとっていたことを見かねて指導しただけです! 決して階段から突き落としたり戦闘を妨害など……貴族の身分に恥じる行為です!」
「貴様! 嘘をつくな! 先日の怪我がまだ残っているのだぞ!」
すかさずイザークが畳掛けてくる。
「良かろう。その証拠を見せてみよ」
アドリアーナがスカートをたくし上げると、そこには確かに傷がついていた。
「そんな……何かの間違いです!」
本来のストーリーなら本当にカッとなって階段から突き落としていた。その証拠は誤魔化しきれず、此処で悪役令嬢は退場となる。だが、今回は強力な助っ人がいるのだ。
「お待ちください陛下! 私にも証言させてください!」
「おお! そなたは今大戦での英雄! デルカではないか! 良い。発言を許そう」
乙女ゲームの元々の主人公だ。元々は仲直りをさせて、最終的に婚約しようと主人公に言ってきたとしても『興味ありません』で終わらせて男どもの挫折した顔が見たかったが、何故かアドリアーナというゲームに出てきていない女性が男どもに言い寄っていたのだ。
なので計画を変更し、二人を百合百合にしつつ男どもはアドリアーナに押し付ける戦法を取った。
おかげで二人は仲良しラブラブだ!
「私、セレーネ・デルカは証言します! ルネリーゼは私の友であり、誓ってそのような悪逆非道を行う人ではありません!」
「そうであるか……」
ちっ、まだ押しが足りないか。だが、俺の百合百合作戦を甘く見るな! まだまだ証言者はいるぞ!
「私からも証言させてください! 私はルネリーゼ様のメイドとしてずっと学校にいました! ですが、そのような行為は一切なされていません!」
「成程、メイドからの証言か」
ゲームでは何度意見を具申しても聞かなかったので、愛想をつかしてしまっていた。だが、今回は百合百合大作戦の影響により、元々高かったラブラブ度をマックスまで引き上げた。
更に証言者は出てくる。
「「私達にも証言させてください!」」
「見たところによると……フライベルク家の者と、スターキー家の者だな。どちらもレーダー家と関係が深い家。良い、証言して見せよ」
「「ありがとうございます!」」
ゲームでは二人は悪役令嬢に付き合いきれないと、ルネリーゼを裏切る。だが、百合百合大作戦を決行した今! みんな仲良しでラブラブである。やったぜ!
「私、エーリカ・フライベルクは宣言します! 私はいつもルネリーゼ様と一緒におりましたが、いつも公爵家にふさわしい行動を取っておられました!」
「同じく、キャロライン・スターキーも同様のことを宣言します!」
「おぉ! そこまで言えるのか!」
この証言は大きい。何故なら、もし本当だった場合二つの家も巻き込まれる可能性があるからだ。普通は煙に巻くか裏切るかのどちらかだが、最後までレーダー家とついていくと宣言したようなものだ。
この証言により、場の空気はルネリーゼ側に段々偏っていたが、形勢逆転した。
「イザーク皇太子。このような証言が出ているが、いかがする。場合によっては王位継承権を剥奪することも考えねばならん」
「待ってください! アドリアーナ! 本当にやられたんだよな! そうだよな!」
「も、勿論よ!」
周りの男どもも焦っているようだ。馬鹿め! ちゃんと情報収集していないからこうなるんだよ!
「しかし陛下。決定的な証拠がありません。我らには傷という決定的な証拠がありますが、そちらの証言は口ばかり、もっとはっきりとした証拠が欲しいところだと考えますが」
「ふむ。デルモンテ家の長男か。確かに一理あると見える。ルネリーゼよ、決定的な証拠を出すが良い」
「えーっと、そのー」
「ないならイザーク皇太子側に理があるとし、ルネリーゼはレーダー家を破門と――」
クソ! いいところだったのに!
頭でっかちで努力を馬鹿にするクソ野郎のヴァレリアめ。こいつ小手先の策だけは上手いんだよな。
もうだめか……なわけないだろ! 隠し玉は最後まで取っておくものだ!
「待ってください! 証拠はあります!」
「君は……」
「私はオルフ・ハルデリウスと申すものです! ルネリーゼ様の決定的な証拠を持ってまいりました!」
百合要員のオルフェリアちゃんだ。最初はただの男の説明キャラに見えるが、男どもの誘いを断り続けると出てくる隠し女性キャラだ。何度百合エンドを迎えたことか……このキャラへの愛情は深い。
勿論、悪役令嬢とのラブラブ関係は築いている。
「ルネリーゼ様、魔導書を」
「わかったわ。貴方に託します」
いきなり魔導書を貸せと言われても信頼度はマックス! 一切躊躇いがない。
さぁ、いよいよ俺の番だ!
「この魔導書が事件の現場を移します! どうぞご覧ください!」
その瞬間俺は投影魔術を発動する。
まぁ、某正義の味方のように万能ではない。精々記憶した映像を流すだけだ。だが、それでもこの場面なら
「おぉ! 確かにルネリーゼは何もやっていない! それどころか一人で転んでいるだけではないか!」
「まだございます。こちらをご覧ください」
そうして、先ほどの大戦の映像を見せる。ルネリーゼ達は学園に襲い掛かってくる魔物を必死に倒しているが、男どもはだらしなく奥のほうで座っているだけ。アドリアーナも男どもに囲まれてニヤニヤしているだけだ。
「どうせ戦っても何の栄誉も貰えない。そんな戦いをしても無駄なだけだ」
「あんなに必死になっちゃって。馬鹿みたい」
そんな声が聞こえてくる。
更に、普段の学校の様子も見せる。女性陣は真面目に授業を受けているのに対し、男たちはアドリアーナを褒めているだけ。
「アーナは可愛いな。まるで天使のようだよ」
「あ、あの授業を――」
「うるさい! 俺は皇太子だぞ! 死刑に処されたいか!」
更にルネリーゼを口汚く罵っている。
「何でアーナを虐めているんだ! 公爵家など地に落ちたな! いいか、彼女は自由に過ごしているだけだ!」
「ですが、いくら何でも授業中に化粧など――」
「あーん! リーゼに虐めらるー」
「やっぱり化粧は辞めたほうが――」
「うるさいぞ平民! 俺は将軍になる男! そのような下賤なものと話したくない!」
「アーナは?」
「アーナは特別だよ。当たり前じゃないか」
そんな光景が延々と続く。それを見ている国王は段々と顔が赤くなっていった。
「……これはどういうことか説明してもらおうか」
「いや、これは、なにかの間違い……」
「とぼけるな!」
遂に堪忍袋の緒が切れたのか、国王から怒号が飛ぶ。すっかり男どもは委縮していた。ふん、雑魚め。ルネリーゼにちょっかいばかり掛けるからこうなるんだ。
「いいだろう、婚約を破棄することを認める。その代わり、貴様との縁も切る! 他の者たちも重い処置を考えておくので覚悟しておくように!」
「グリム様。僕と一緒にお散歩しよう! 新たな知識が生まれるかもしれないよ」
「ちょっとオルフ! グリムさんは私と一緒に勉強するんだから」
「いいや、私たちと一緒にお茶会をするんです」
「そうです。ですよねリーゼ様」
「もちろんです」
「お茶でしたら、すでに用意してあります。グリムさんもどうぞこちらに」
どうしてこうなった。
いや、ちょっと待て。俺は確かに百合百合作戦を決行していたはずだ。
確かに多少の誤算があったことは認める。
登場キャラが一人多かったり、予想以上に俺の力が強かったりした。
だがそれを逆手に取り、並みいる男どもを吹き飛ばし、擦り付け、百合空間を確立した。はずだ。
「王子の資格は無くなったが、僕は君のために頑張るよ!」
「俺の剣は世界最強だ。この剣で成り上がって見せるとも」
「僕に一生ついてきてくれるんだよね。約束したよね」
「僕の傷心を癒してくれるのは君だけだ」
「働きたくなーい。養ってー」
わらわらと集まりおって。向こうのアドリアーナには悪いが、お前は性格が悪すぎた。
絶望した顔をしているが、まぁ自業自得だろう。大方金銭目当てだろうが、その望みも潰えたな。
あの後の展開を話すと、男どもは皆貴族の称号は剥奪、家からも勘当されたらしい。まぁアドリアーナと付き合うことが出来たから喜んでいるみたいだが。あほだな、と素直に思う。
こちらは国王から正式に謝罪され、婚約も解消された。テンションが上がっていて気づかなかったが、皆貴族や英雄。世継ぎを残さないと世間から冷たい目で見られるだろうと作戦も終了した。なのだが……
「「グリム様!」」
何故かハーレムができた。いや可笑しいだろ! 魔導書だぞ! 生物ならまだしも無機物だぞ! どこに惚れる要素があるか全くわからん。
けれど好意は素直に嬉しい。けれど世継ぎを残さなければ……と必死で考えていたら、セレーネが簡単に名案を考え出した。
「人化の魔術を掛ければいかかです? そうすれば私たちと付き合えます!」
成程! と人化の魔術を掛けたらあっさり人間になってしまった。しかし、顔は前世と変わらず昔のままだ。
嫌われるかな? と思ったが、
「顔なんてどうでもいいです! 私たちを助けてくれた魔導書であるのなら!」
マジで惚れた。いい女すぎるだろ!
ハーレムになることへの不安はもちろんあったが、百合百合大作戦により皆の仲は天元突破している。更に、皆で知恵を出し合った結果、天から降臨してきた神の御使いということになった。
流石に無理があると思ったが、あの件で信頼度が爆上げしたのかあっさりと御使い認定され、皆との婚約も認定された。
名前も魔導書に因んでグリムという名前を貰った。正直気に入っている。
「どうしたんですか? 早くいきましょう!」
「結局俺はどこに行けばいいんだ? リーゼ」
さっきは言い争っていたが。
「みんなでデートです! 一緒に行きましょう! グリム!」
初めは魔導書っていう訳分からない物に転生した不安は常に付きまとっていたが……。
「よっしゃ! 行くか!」
案外、魔導書生活も悪くないものだな!
読んでくださりありがとうございます!
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