魔王を倒した俺は陛下の側妃を妾る
お久しぶりです。
一般的な魔王討伐を終えた勇者という名の平民を想像して読んでみるのをオススメします。
ではどうぞ(  ̄ー ̄)ノ
「ゼセル殿。此度の魔王討伐ご苦労であった。国王たる余の名のもとに褒美をやろう。希望はあるか?」
きた。と俺は思った。
長かった。非常に長かった。
この時のために俺はやりたくもない魔王の討伐なんぞを引き受けたんだから。
「では、おそれながら陛下。二人つほどお願いがございます。」
「ほう。なんだ。言ってみよ。」
俺は顔を上げると毅然した態度で国王をみた。
「では、陛下の側妃の末席にいらっしゃるマイン・クルゼクス伯爵令嬢を我が妃として下賜していただくことと、私の任地を北の砦へ移していただくことをお許し願いたい。」
「ほう・・・」
俺の言葉に会場となっている謁見の間は騒然とする。
そりゃそうだ。
国王陛下の側妃を所望するという畏れ多いことももちろん原因だが、大部分の問題はそこではない。
俺は一応、魔王を倒した英雄。
いわゆる、勇者的な扱いだ。
もちろん、貴族としては平民の俺は面白くない存在だろうけど、戦力的には世界的にみても控え目に言って最強な俺を北の砦という辺境の場所に、しかも、対して重要度の高くない場所に行かせて欲しいとなると、いくら貴族としては面白くなくても戦力という意味ではあまりにも惜しいのだろう。
国王陛下は面白そうな表情でこちらに聞いてくる。
「ふむ。貴殿は余の側妃殿をご所望なのか。クルゼクス・・・確かにそのような者もおったな。」
「陛下。おそれながら側妃様の件はともかく、ゼセル殿を北の砦へ赴かせるなど私は反対です。」
「ほう。貴殿は反対か。宰相。」
「ええ。巷で英雄と呼ばれている彼を辺境へと赴かせると左遷ととられる者も多くいるでしょう。ゼセル殿には王国で爵位を与えて警護にあたらせるべきかと。」
狸親父な宰相が国王陛下にそう意見した。
割り込んでくることは予測できたけど、面倒な・・・
「陛下。それに宰相様。少々よろしいでしょうか。」
「ふむ。申してみよ。」
「はい。簡単に言ってしまえば、私は妻をめとってさっさと隠居したいのです。此度の魔王討伐で私の体はだいぶ傷つき、寿命もだいぶ使いました。なので、大人しく田舎に籠りたいのです。」
「ほほう。なるほど。確か、北の砦の近くにはクルゼクス伯爵家の領地が一つあったはずだな?そちらに行くと?」
覚えてやがったか。
「はい。政治的思惑は私ごとき平民には分かりかねますが、魔王討伐という仕事の報酬としては妥当なところかと思います。」
「あい。わかった。すぐに準備させよう。」
「陛下!」
あっさりと認めた国王に宰相は驚きの声をだす。
まあ、当然かもだけど。
「なに。側妃の一人くらいは構わぬだろう。何より北の砦の守りの強化は余が考えていたことの一つゆえな。それが英雄殿なら問題はなかろう。」
「し、しかし!」
「陛下。では私は下がらせていただきます。準備もありますので。」
「ふむ。ご苦労であった。ゼセル殿。」
俺は一度頭を下げると速やかに謁見の間から出た。
後ろでは今だにうるさい貴族が色々言ってるみたいだが、まあ俺には関係ないだろう。
俺は足早に準備のために家に戻った。
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1週間後、準備も出来た俺は魔王討伐の報酬でもらったお金で買った馬車を後宮の前に止めていた。
「ゼセル様。」
しばらく待っていると少ない荷物と一人の侍女と共に俺の待ちわびた人物・・・マイン・クルゼクス伯爵令嬢が姿を表した。
一般的な貴族の令嬢としては地味な服装とおっとりとした感じの容姿があいまって可憐という言葉が似合う彼女。
俺は喜びを必死に押さえつけ笑顔で出迎える。
「久しぶり。マイン。元気だった?」
「はい。ゼセル様は・・・とても活躍なさったようで。」
「まあね。ミレニも久しぶり。荷物はそれだけ?」
おっとりと微笑んだ彼女の後ろにいる侍女・・・ミレニにも挨拶をする。
ミレニはメガネの似合うクールビューティーでおっとりとしたマインとは対をなすいわばマインのストッパー役だ。
「お久しぶりです。ゼセル殿。ええ。これだけですよ。」
「昔みたいに呼んで欲しいんだけど・・・無理かな?」
「ふふ・・・そうですね。では久しぶりですね。ゼセル。よく頑張りましたね。」
姉のような存在だったミレニに気軽に挨拶をされてようやく成し遂げた気がした。
「馬車は私がひきますので、お二人は久しぶりに仲良く話なさい。色々あるでしょう?」
そう言ってもらえたので、俺とマインは二人で中に乗った。
もともとは俺が運転するつもりだったけど・・・本当に気がきく人だよ。ミレニは。
「ゼセル様。」
そう考えているとマインがこちらを見つめていた。
「ゼセル様。ありがとうございます。約束を守ってくれて・・・」
「当たり前だよ。ねぇ、マイン。もうひとつの約束覚えてる?」
「・・・・はい。もちろんです。忘れるわけありません。」
俺とマインは昔同じ領地で育った。
マインは後に、側妃として後宮へ赴くことが決まっていたので、俺とマインはある約束をした。
ひとつは例え後宮に行っても俺が必ず迎えに行くこと。
そしてもうひとつは・・・
「俺は約束通り迎えにきた。だから・・・結婚しよう。マイン。」
「・・・はい。お慕いしております。ゼセル様。」
頬を染めて微笑んだマインに俺は馬車の中でもお構いなしに抱きついた。
「ようやくだよ・・・ようやく捕まえた・・・」
「ふふ・・・私もようやく捕まえてもらえました。」
「遅くなってごめん。陛下の元にいる間に何かあったらと思うと気がきじゃなかった。」
「あら・・・ではひとつゼセル様を安心させることを言いますね。」
「安心?」
「はい。私の元には陛下は訪れませんでした。他の方々も側妃は多数いましたので、日陰に隠れていれば安全でした。なので私の体は清らかなままですよ。」
「そ、そうか・・・」
あまりにも平然と言われてしまうとこっちが照るな。
でも・・・
「うれしいよ。マイン。大好きだ。」
「私もです。ゼセル様。」
ようやく捕まえたマインの体を抱き締める。
ようやくやりとけだ。
ーー交わした約束をあなたとーー
お読みいただきありがとうございます。
今回は唐突に思い付いた魔王倒して側妃もらって隠居するを題材に書いてみました。
簡単な登場人物紹介
ゼセル
平民だけど、魔王討伐をした英雄。
過去に国王の側妃となったマインと仲が良く恋愛感情があったが、いずれは側妃として後宮に行くマインと迎えに行くという約束をした。
一人で魔王を討伐したほどに強く、ある種の人外的な化物。
マインのことが大好きで、いまだに純血が守られていたマインに安心した。
マイン・クルゼクス伯爵令嬢
元国王の側妃。国王とは一度も会わず側妃としては日陰の存在。
昔からゼセルに恋愛感情があり、後宮でもゼセルが迎えにくるのを楽しみに待っていた。
ストレスがたまると、侍女のミレニにゼセルののろけを聞かせていた。
ゼセルが大好きであり、後宮では最後にゼセルの元に行くことがわかった他の側室に嫌みは言われたが特に気にしていない。
ミレニ
マインの侍女。昔から二人の姉のような立ち位置で暴走しそうになるマインのストッパー。
後宮では裏で嫌がらせをされそうなマインを守って逆に仕返しをしたり頑張っていた。
既婚者であり、ゼセルの兄と結婚してはいるが、戦闘狂な性格のせいでなかなか家には戻らず帰ってくると甘える。
苦労人だが、ゼセルとマインが大好き。
国王陛下
切れ者の策士ではあるが女好きで側室が50人いる。なので名前は知っていても一度もあったことがない側室もいる。
今は側室の一人に寵妃がいてそれが日々の楽しみ。
宰相
国王の女好きに困ってはいるが仕事はしているので文句は言わない。
ゼセルをどうにか王国に留まらせたいと策を巡らせるがうまくいかない。
本当は自分の娘を嫁がせたかった。
と、まあ、主だったところはここまでです。
続編は未定でも一応あまあまなの書く予定。
ではではm(__)m