解放
目の前に立ちはだかるのは、巨大な体を持つ悪魔。
そして、周りに控える、膨大な魔物達。
下層を目指してからどれ程だろうか、ついに私は迷宮の最下層に辿り着いた。
目の前にそびえる悪魔が最後の門番だろう、その体から凶悪な魔力が迸っている。
ここに辿り着くまでに、何回もガチャを引いた。
英雄トランザム出力100
黒騎士ガイム出力100
聖神官ムスク出力100
大魔導士リリア出力100
私達は全盛期の力を取り戻した、結局リリア以降、大きな光はなく常に戦ってくれる仲間は増えなかった、私達の出力を上げるか一回だけのスケルトンやリッチだけだ。
そしてガチャも、ある時役目を終えた様に壊れて動かなくなってしまった。
しかし戦力はもう十分に整っている。
沢山の水晶を取り出す、この一つ一つが、騎士、戦士、冒険者等の英雄達である。
最後の戦いだ、盛大にいこう。
英雄達を解き放つ、100体を超えるであろう英雄達その亡者が解き放たれる。
迷宮の最下層で悪魔と亡者の群れが戦う等、地上の人々が見れば地獄と呼ぶに違いない。
少しだけ可笑しな気分になった、不思議と周りにいる亡者に愛しさを私は感じていた。
私自身が亡者になっている事もあるが、彼等もきっと、この迷宮から解き放たれる事を望んでいるのだろう。
ガチャの意味、私のやるべき事は分かってきていた、答えは迷宮の奥にあるはずだ。
さあ、いこうか。
戦いが始まり、そしてアッサリと決着は着いた。
悪魔の力は凄まじかった、私一人なら倒せるとは思えない程に、けれど、トランザム、ガイム、リリア、そして多くの英雄達の力が合わされば、容易に倒す事ができた。
戦いを終えた英雄達の体は崩れ去り、いつもの様に光を放つと英雄達の霊が立っている。
彼等は晴れやかな顔で、私に礼を言うと静かに消えていく。
彼等は迷宮から解き放たれた、残るのは私と三人の仲間だけだ。
迷宮の奥に扉が現れる。
私はそこへ向かうと、扉を開き奥へ進む。
そこはダンジョンの中とは思えぬ程に、穏やかな光に包まれた場所であった。
真っ白な空間には何もなくただ優しい光があるだけ。
その空間の中央が強く光ると、一人の女性の姿が現れた。
美しい女性であった、けれどどこか無機質な印象を受ける。
私は女性の元に近づく。
『ダンジョン制覇、おめでとうございます、ムスク様』
近づくと、女性はお辞儀をして私を迎えた。
『あなたは、何故私の名を』
『私はダンジョンのコアです、この姿は意思疎通を捗る為の手段なのでお気になさらずに』
『ダンジョンのコア?』
『そうです、ムスク様はダンジョンを制覇しました、あなたの願いを叶えましょう、とその前にする事がありましたね』
彼女が私に手を翳す、割れる様な痛みが頭に奔る。
『な…… 何を...... そ...... そうか、そうだったな』
痛み共に、記憶が蘇ってきた。
『願いはお変わりありませんか?』
『ああ、変わる訳がない』
ダンジョンコアの問いかけに迷わずに私は返す。
私は以前この迷宮に挑んだのだリリアと一緒に、そしてあの悪魔と戦い死闘の末、倒せはしたがリリアは命を落とし、私は重症を負った。
そして、リリアの亡骸と共にこの部屋に辿り着きダンジョンコアである彼女に願いを聞かれたのだ。
『リリアを救ってくれ』
私はそう願いを告げた。
『無理です、彼女は既に死んでいます、それは私の力を超えた願いです、リッチとして蘇がえらせる事なら可能ですが、そうしますか』
酷く事務的に彼女は言う。
『そんな事はしなくていい』
彼女の話しに声を荒げそうになるが、抑えると項垂れて答えを返した。
『では、貴方の傷を癒す事も可能ですが、そのままでは長くありませんよ』
それは分かっていた、魔力も尽き治癒魔法を自分にかける事もできない。
私が答えを返さずに思考する、私一人だけ生きて帰るのか、リリアなら私が生きる事を望むだろうが。
しかし
気になる事が一つあった。
『この迷宮で死んだ者はどうなるんだ?』
恐ろしい想像をしていた、この迷宮に入ってから感じていた違和感、高位の神官である私でなければ気づく事はなかっであろう。
『この迷宮及び周辺での死者、この迷宮のエネルギーとして取り込まれます』
『魂はどうなるんだ』
私は叫ぶ。
『この迷宮にしばらく縛られるでしょう、力の強い者ほど強く縛られます』
『リリアもそうなるのか』
『はい、彼女程の強い力を持つならこの迷宮が力を全て失うまで縛られる事でしょう』
『な!』
絶望的な事実だった、攻略された迷宮はあれど、力を全て失った迷宮など聞いたことがない、迷宮の終わりまで縛られる等、永遠に縛られるのと言っている様なものだ。
『そんな事はさせないリリアを解放しろ』
憤り、怒鳴る様に懇願する。
『分かりました、それがムスク様の願いですね』
怒鳴る私に、彼女は淡々と返事をする。
『出来るのか?』
『はい、それが願いであるならば、ただ死者の解放、それはこの迷宮の消滅を意味します、簡単にはできません、ムスク様のお力を借りることになりますが』
『どうゆう事だ』
私の疑問の声を上げると、彼女は説明をしてくれた。
私自身がリッチになり、迷宮のエネルギーを回収し魂を解放していく事を。
私は、それを承諾したのだ。
そして今に至る。
『では、この迷宮はもう消えるのか?』
『はい、もっとも力の強い貴方がた四人を解放すればこの迷宮は最後の力を失うでしょう』
『すまない』
私は消えゆくダンジョンのコアに頭を下げる。
『私に対して、その様な気遣いは無用です、私はただこの迷宮に存在し役割を果たすだけの存在ですので、では願いを叶えましょう』
彼女がそう言うと、光が強く輝き私の体は崩れ落ちる。
気づけば私は霊となり、自らの亡骸を見下ろしていた。
『ムスク』
名前を呼ばれ、顔を向ければリリアがそこには立っていた。
『リリア』
涙が頬を伝う。
リリアもまた泣いていた。
リリアの横に、男が二人立っている。
『ガイムだ、貴殿には礼を言わねばなるまい、感謝する』
ガイムが深々と頭を下げ礼をする。
『俺はトランザムだ、ありがとな、俺の部下達も解放してくれたしな』
『気にしないでくれ、私はリリアを救いたかっただけなのだから』
『それでも感謝いたすよ』
『俺もな、てか相変わらず何か無駄に硬いやつだなガイム』
『貴殿がお気楽すぎるのであろう』
何やらガイムとトランザムが口喧嘩を始めだした、敵同士と言う話しだが何やら仲が良さそうだ。
私はまたリリアと向き合う。
『馬鹿な人、一人で生きて帰れば良かったのに』
リリアが涙を拭いながら話す。
『すまない、でも君を置いては生きていけなかったんだ、これで結構心の弱い人間でね』
『本当に馬鹿、でもありがとう、とても嬉しかったわ』
リリアが私の胸に体を寄せる。
だんだんと体が消えてきている、もう時間の様だ。
リリアの背に手を回し、抱きしめた。
『リリア、愛してるよ』
『うん、私も愛してるわムスク』
これで完結とさせて頂きます。
少なからず読んで頂いた方ありがとうございます
文章の書き方等、ご指摘頂けたらありがたいです




