暮れゆく季節と、紅葉弁当2
とりあえず、玄関先で話し込むのも何なので、リビングに場所を移すことにした。
途中、ジェイドさんに会ったので薬草売りの事を話すと、彼も目をまんまるにして驚いていた。
リビングにつくと、私はふたりに椅子を勧めて、薬草売りに断ってからお茶を淹れた。
薬草売りが棚にあるお茶っ葉を使っていいといってくれたので、それに熱湯を注ぐ。
ふわりと花の香がする、鮮やかな色の紅茶を皆に配って、落ち着いたところで話を始めた。
「ここは、僕の故郷なんだよ――以前、話しただろう?」
「はい。チコの実を使ったものを届ける度に、色々と話してくれましたね。……もしかしてとは思ってはいましたけれど、ここが本当にその場所だとは……縁というのは不思議なものですね」
「本当だねえ。――それに、君もただ者ではないとは思っていたけれどね。聖女の姉かあ」
「……隠していたわけではないのですが」
「気にすることはないよ。僕と君は、商店主とその客。それ以上でもそれ以下でもなかったからね。そんな込み入った事情は知らなくて当然さ」
薬草売り――どうやら、本名をティルカというらしい――は、ただでさえ細い目を、更に糸のように細くして、肩を竦めた。
ティルカさんとその兄であるケルカさんはとても良く似ていた。
ふたりともとても目が細い。所謂、キツネ顔と呼ばれるような顔立ちだ。髪も同じような黄土色だし、瞳は鮮やかな紅色だ。
けれども、随分と歳が離れているように見えた。
ティルカさんは、どう多く見積もっても30代前半くらいにしか見えないのに、ケルカさんは70代……下手をするともっといっているようにみえる。顔には、年輪のように皺が刻まれているし、手足も痩せ細り、肌に艶はなく袖から見える腕や手は筋張っていた。ケルカさんの隣に若々しいティルカさんが立つと、その年齢差が一層際立って見えた。……どことなく、ケルカさんの顔色が悪いような気がする。体調を崩しているのだろうか。
「君は茜さんと言うんだね。はじめまして、ティルカが随分とお世話になったようだ」
「いえ、こちらこそ。ティルカさんには、色々とお願いをしたりしていますし」
「茜さんが作ってくれた、チコの実の酒や、シロップ。美味しく頂いたよ。……あと、塩漬け。あれは笑ったなあ」
「ああ、あれね」
ティルカさんは、ケルカさんと顔を見合わせると、何か思い出したのか小さく笑った。
「ティルカったら、この歳で悪戯が好きなんだ。ある日、寝ている私の口の中に塩漬けを放り込んできたんだよ。酷いだろう?」
「あの時の兄さんの顔。最高に面白かったよ……そのあと、酷く叱られたけどね」
「口の中に毒が入ってきたのかと思ったんだ。それくらい酸っぱかったんだよ。まったく、うちの末っ子はいつになったら大人になるのかねえ」
「大人になっても、子供心を忘れない。それが、僕のモットーなのさ。兄さんは、もう少し遊び心を思い出したほうがいいね」
ケルカさんは小さな眼鏡の位置を直しながら、片眉を釣り上がらせた。
「そのせいで、いつまでたっても露天商なんだな? とっくに店が持てるくらい稼いでいるくせに」
「気ままに好きな場所で商売できる方が、自由を愛し、子供心を忘れない僕にとっては都合がいいのさ」
「まったく、ものは言いようだな」
ティルカさんとケルカさんは、楽しげに笑いあっている。
ふたりの持つ雰囲気はとても良く似ていて、それでいて柔らかい。どこか人を安心させるような印象があった。そんなふたりが冗談を言い合って笑っている姿は、自然と場を和ませた。
「家があったほうが落ち着くだろうに。この家みたいな場所を他にも作ればいい。……君もそう思うだろう?茜さん」
ケルカさんは、ふと思いついたように話題を私に振ってきた。
……家? ……ああああっ!
その瞬間、ふと自宅を借りているお礼をいっていないことに思い至って、私は大いに慌てた。
「……そ、そうですね。ああ! そうだ! ティルカさん、ケルカさん。ご自宅に滞在させて頂いているのに、お礼が遅くなってしまってすみません……!」
「ああ、いいんだよ。茜さん。ここは古龍の招きを受けた人が自由に使って良いことにしているんだ。ユエにもそう言ってある。
――竜というものは、自分の時間で生きているからね。招きを受ける側の事情なんて、これっぽっちも考えないから、君たちみたいな急に招かれた人が困らないように、という考えなのさ。だから、そんなに恐縮しなくていいよ」
「そうだよ、お嬢さん。そもそも、ここは僕の家なのに、まるで自分のもののように言っている兄さんもいることだし。僕は寛容なんだ。気にしなくていい」
「こら、ティルカ」
「おや、なんだい兄さん」
そういうとじっと見つめ合ったふたりは、また兄弟揃って笑った。
その様子に、私はほっと胸を撫で下ろし、それでも椅子から立ち上がって礼をした。
「そういった事情があったとしても、お礼を言わせてください。……ありがとうございます」
ケルカさんは、頭を下げる私をみて何度か目を瞬くと、顔中に皺を作って柔らかく微笑んだ。
「――礼には礼を。感謝の心を忘れない異界からのお客人。そんな君に出会えただけで、私は嬉しいよ。では、私も礼を尽くさねば」
ケルカさんは椅子の手すりに細い腕をかけると立ち上がった。なかなか力が入らないのだろうか、ゆっくり、ゆっくりと身体を持ち上げて立ち上がる。
そして片手を大きく振り上げると胸の前まで持ってきて、膝を折った。そして、「どういたしまして」と言って、パチリとウインクをした。
なんともおちゃめなその姿に、私の心は自然とぽかぽかしてきて、私も笑みを浮かべて「はい」と返事をして、小さく膝を折った。
何度か紅茶のおかわりを用意して、ティルカさんの持っていた菓子を皆でつまんだ頃には、私たちはすっかり打ち解けていた。
「そういえば、ティルカさんは頻繁にこの家に戻っているのですか?」
「ん?そうだね。僕の仕入れる薬草類は、テスラで採れるものや、あとこの古の森にしか生えないものもある。この家は、商売の拠点としても使っているのさ」
「じゃあ、今回も仕入れに?」
「――いや、今回は――」
ティルカさんは、何か言いにくいことがあるのか、ちらりとケルカさんを見た。
ケルカさんはその視線に気がつくと、飲んでいた紅茶のカップを下ろして、人差し指を口元に当てると、いたずらっぽく笑って言った。
「――ちょっとね。ここだけの話なのだけれど、私は奥さんから逃げてここへ来たんだ」
「は?」
私が思わずぽかんと口を開けると、ケルカさんは楽しそうに笑った。
その様子から、からかわれたのだと解って、私は顔が熱くなるのがわかった。
「もう! 冗談はやめてくださいよ」
「いや、冗談じゃないよ。君のびっくりした顔が面白かったんだ。……って、これも大概失礼だね。ごめんごめん。本当なんだよ。私の奥さんは、それはそれは恐ろしい人でね」
――それから、ケルカさんは自分の奥さんの事を語り始めた。
ケルカさんいわく、彼の奥さんはとてつもなく美人らしい。けれども、怒るととんでもなく怖い人で、魔力も豊富に持っているから、この星のためにも(ケルカさんは本当にこういった)なるべく怒らせないほうがいい人らしい。
しかも結構な気まぐれで、年がら年中世界中を飛び回って好き勝手しているのに、ふらりとケルカさんのもとに現れては、ケルカさんが浮気をしていないか疑ってくるような人とのことだった。
……なんていうのだろうか、鬼嫁よりも更に怖い。
話を聞くだけだと途轍もなく恐ろしい人に聞こえるのだけれど、奥さんのことを語るケルカさんは、非情に楽しそうで、更には彼の口から紡がれる奥さんを語る言葉には愛情が溢れていた。ケルカさんが如何に奥さんの事を愛しているのかがわかる。
「でもね、奥さんはとっても可愛いところもあるんだ。我儘なんだけれど、きまぐれに急に甘えだすものだから、ついつい私も色々と許してしまうというか――……」
ケルカさんの話を聞いていると、なぜだか頭の隅にちらちらと白金の影が過った。
耳に聞こえてくるケルカさんの苦労話が、妖精女王に振り回される自分に重なって、私もついつい深く頷いた。
「ああ。なんだかわかります、それ。気を抜くと何をしだすかわからない怖さがあるのに、綺麗な顔で絶妙な塩梅で甘えてくるんですよね……」
「けれど何か気に入らないものがあると、途端に拗ねるんだ」
「そう! そうなんですよ。お酒もですけど、お気に入りのつまみがないと、いつまでもいつまでもブーブー、ブーブー……」
「ははは。私の奥さんにそっくりだね。君もそんな大変な友人がいるんだねえ」
「はい。……大変、厄介な友人がいます」
私とケルカさんは、顔を見合わせてため息を吐いた。
「……君も苦労しているようだ」
「あなたも、大変ですね」
私とケルカさんは、微妙に温い笑みを浮かべてがっしりと硬い握手をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そのあと、私たちは一緒に朝食をとることにした。
正直、昼食と一緒でも良さそうな時間帯だったのだけれど、ケルカさんが「私は、残りの人生の全ての食事を楽しむと決めているんだ。朝食を抜くなんて信じられない!」と言い出したからだ。
「――おお! これが異界の朝食かい?」
「簡単なものばかりですけど」
「いやいやいや。実に美味そうだ」
私の隣の席に座ったケルカさんは、手をこすり合わせると、嬉しそうに皿の中をみつめた。
食卓に上っているのは、豆がたっぷりはいったミネストローネと、温泉卵いりのシーザーサラダ。それと例の保存食用のパンだ。
ミネストローネは、スライスした玉ねぎと、トマト缶と豆の水煮缶を一緒に煮込んで、塩コショウとコンソメで味付けしたお手軽スープ。
シーザーサラダは千切ったレタスに、カリカリに炒めたベーコンを乗せて、マヨネーズ、牛乳、粉チーズ、レモン汁、塩コショウを混ぜた手作りシーザードレッシングをかけたあと、温泉卵を乗せて更に粉チーズとコショウを振ったものだ。
温泉卵は、水を沸かして、火を止めたあと、常温にしておいた卵を入れて10分ほど放置すれば出来上がる。お店で売っているような、白身までぷるっぷるの本格派に比べるとなんちゃってな出来上がりになるけれども、サラダに乗せるくらいならこれで充分だ。沸かしたお湯の量や、鍋の大きさで上手くいったりいかなかったりするけれど、コツを見つければわざわざ店で高い温泉卵を買わなくてすむのはありがたい。
「――食べてもいいかな!? ねえ!」
ケルカさんは、まるで子供のようにキラキラした眼差しで私にそういってきた。
「兄さん、この場にいる誰よりも年上なのに。恥ずかしいよ」
「目の前に未知の味があるんだ。堪えられるわけがないだろう?」
「あははは。そんなに楽しみにしてくれるなんて、うれしいですね。……どうぞ、食べましょう。いただきます!」
「それは、異界の挨拶かな! 素晴らしい。……いただきます!」
ケルカさんは私の真似をして両手を合わせると、さっそくナイフとフォークを手に取った。
そして、ナイフで温泉卵を割った。
すると、どろりとした黄身が、ソースで白く染まったレタスの上に垂れる。それを器用にナイフでレタスに塗りつけたケルカさんは、フォークの先にレタスを刺して口に運んだ。
「〜〜〜! これは……! 酸っぱくて、まろやかで……! それにこの卵! これはどんな特別な卵なんだい?こんなにとろとろしているんだ。よっぽど凄い動物の卵なんだろう?」
ケルカさんは温泉卵が気に入ったようだ。
ナイフの先でぷるぷるの卵の黄身をつついては、興味深そうに見つめている。
「それは温泉卵といって、普通の鶏の卵を低温で茹でたものなんですよ。固茹でもいいですけど、こうやって食べるとまろやかになって美味しいですよね」
「本当かい!?これは普通の卵と調理法が違うだけなのか! ああ、なんてことだ。茹で方を変えるだけだなんて」
「新しい発見だ……」と、ケルカさんは小さく呟くと、嬉しそうにシーザーサラダの皿を見つめた。
冷水に入れて置いたレタスはシャキシャキ。それにチーズ感たっぷりのまろやかクリーミーなシーザードレッシングが掛かっているこのサラダは、レタスの爽やかな歯ざわりと水分、そして濃い目のドレッシングの味と、温泉卵の優しさが目覚めたばかりの身体を揺り起こしてくれる、朝にぴったりの味だ。
夜の晩酌に出すときは、ドレッシングににんにくのすりおろしをちょっぴり混ぜる。更ににんにくバターを塗ったパンをサイコロ状に切って、トースターでカリカリに焼いた、お手軽クルトンを添えれば、お酒にも合う味になる。シーザーサラダの可能性は無限大だ。
いっぽう、ジェイドさんとティルカさんも食事を楽しんでいるようだった。
「この赤いスープも美味しいよ、兄さん。色んな豆が入っていていいね。この歪な形をした豆が歯ごたえがあって美味しい。みたことがないな。どこの豆だろう」
「それは、ひよこ豆だよ。異界の豆だ」
ティルカさんの疑問に、ジェイドさんが答えた。
「へえ、それを煮たのか。豆を煮るのは時間がかかるだろうに。朝から大変だったね?」
「いや、煮た豆を『缶』という保存容器にいれてあったものを使ったんだよ。一からは煮ていない。茜の世界の保存方法は、本当に凄いね。『缶』に入っているものは何年も保つらしいよ」
「へえ! それはいいな。それがあれば、僕の商売も色々と捗りそうだ」
「さすが、商売人。目の付け所が違うね。俺としてはこの缶が広まって、騎士団の遠征先の食事が少しだけでもマシになることくらいしか思いつかなかったよ。……ときたま、糞不味いのが出てくるんだ……悪夢みたいな色をした」
「うわあ、残すこともできないだろうしね。……ご愁傷様」
市場で何度も顔をあわせているジェイドさんとティルカさんは、親しげな様子で話していた。
初めて会ったときに、ジェイドさんがティルカさんに向かって剣を抜きかけたなんて、信じられないほど仲がいい。何度もティルカさんに調味料やら未知の果物を探してもらったりしているから、私の知らないうちに信頼関係が築かれていたのだろう。
そのとき、ティルカさんが何かを思い出したように、ぽんと手を打った。
「――ああ、そうだ。忘れていたよ。この間、君に頼まれたやつなんだけどね。手に入ったよ」
「……本当ですか!」
「ふふん。僕に、手に入らないものは――……結構あるけれど、頼まれたものはなんとしても手に入れる。それが商人魂というものだよ」
「嬉しい! 今、見れますか?」
私は思わず、席を思い切り立ち上がってしまった。
――ガタン! と、椅子から大きな音がして、私は一瞬で我に返った。
「……あ。ごめんなさい……! 食事中に」
「ははは。随分と欲しがっていたものね。確か、幾つかここに……」
ティルカさんは、ごそごそとポケットの中を探ると、テーブルの上にそれを転がした。
――ころり、と木のテーブルの上に転がりだしたのは、黒くて丸い木の実だった。
私は興奮気味にそれを手に取ると、ジェイドさんに目配せをして鑑定魔法を発動する。
そして、空に現れたウィンドウにでた情報を見た瞬間、嬉しさを抑えることができなかった。
『カクロクの実
古の森にのみ生息する緑栗鼠が好むことで知られている木の実。
皮は硬いが、茹でると簡単に剥ける。はるか古代より、人間に好まれて食べられてきた。
神や人外への供物として捧げられることで有名。
――日本の「栗」相当の木の実である』
……栗!!!!!!!!
秋の味覚、栗! どうしても、市場で見つからなかった栗……! それを、だめ元でティルカさんにお願いしていたのだ。秋になったら食べたいものといえば、サンマや茸も捨てがたいけれど、さつまいもと栗もいい順位に入るとおもう。
さつまいもは、季節が外れていてもスーパーに並んでいる。だから、この間日本に帰ったときに買ってこれた。けれども、栗は季節もの。水煮なんかは並んでいるけれども、生の栗はやっぱり秋にしか食べられない。焼き栗、ゆで栗、炊き込みご飯にスイーツ! 栗を食べられる喜び! ああ、生きててよかった……!
「栗……! 栗ご飯! お昼は炊き込みご飯にしましょう……!」
「茜、落ち着いて」
「落ち着いてられないですよ! 栗入りのごはんですよ! 秋の味ですよ! 霧が晴れたら、お弁当をもって紅葉狩りもいいですね! 出発なんて、明日ですよ明日!」
「こら、勝手に出発を遅らせるんじゃない」
私が興奮気味にそういうと、ジェイドさんの冷静なつっこみが入った。
そのとき、紅葉狩りという言葉に、ケルカさんがぴくりと反応した。
「紅葉狩り? 知らない単語だ。なんだい? それは」
「ああ、兄さんが食いついた!」
なぜか、嬉しそうに私に質問をしたケルカさんを見て、ティルカさんが焦りだした。
私はそんなティルカさんには構わず、自分の内から沸き上がってくる興奮に身を任せて、鼻息も荒くケルカさんに紅葉狩りの説明を始めた。
「紅葉を目で見て愛でるんですよ。季節の移り変わりを、体全体で感じる私の国に伝わる秋の行事です。紅葉を見るだけじゃなくって、綺麗な紅葉を見ながら食べるお弁当は美味しいですよ〜! 個人的には、お酒も! キューッとね! 紅葉を眺めながらのお酒は堪らんのですよ!」
「お弁当……!? 美味しい……!! お酒……!!?」
「ああ、茜さん、兄さんを刺激しないで! ふたりで楽しそうにキャッキャしないで! 兄さん脚が悪いんだから……! こら、聞いてるの!」
私とケルカさんは両手を合わせて笑いあって、手をぱちぱちと打ち鳴らしてはしゃいだ。
そんな私達を引き離そうと、ティルカさんが焦っているけれど、ケルカさんはどこ吹く風だ。
「いいなあ……! それは是非やってみたい! 茜さんは明日出発するんだろう? なら、今日すればいいじゃないか!」
「そうですね、そうですね! それはいい考えですね……! だって霧だから出発出来ないし!」
「こら、茜! それにケルカさんも、勝手に盛り上がらない!」
「兄さん!」
ティルカさんとジェイドさんの悲鳴に似た叫び声が部屋に響いた。
けれども、栗フィーバーに突入している私と、未知の体験に燃えているケルカさんの耳には届かない。
「ティルカ! 私は今日初めての体験が出来るかもしれない……! 祝福してくれるかい!」
「まあ、ケルカさん。素晴らしいですね!」
「ああ、茜さん。君のお陰だ!」
「ふふふー。そんな」
私たちはにっこりと笑い合うと、同時に呆れ顔で疲れ切っているように見える二人をみた。
そして、ふたり同時に言った。
「「紅葉狩りをしよう!!」」
ティルカさんと、ジェイドさんも同時に目を手で覆って、天井を仰いだ。