小春日和SS:茜とジェイド
久しぶりの更新です! ゆっくりペースで申し訳ありません~
小春日和をテーマにした小話です。あまあまです。
暦の上ではすでに冬だというのに、お天道さまの気まぐれでやってきた小春日和。
来る冬に備えて、庭木に雪囲いを掛けた私とジェイドさんは、休憩がてら、のんびりと縁側で日向ぼっこしていた。
「疲れた~……」
「そうだね」
「板が結構重いんだよね……」
「ああ、あれは重い。お疲れ」
「うん、頑張った」
心地よい疲れが全身を包んでいる。納屋と庭を何度も往復したせいだろう。少し眠くなってきた私は、隣に座っているジェイドさんに寄りかかった。
彼の体温がセーター越しに伝わってきて、なんとも心地が良い。小鳥たちがナナカマドの木の合間から顔をのぞかせて、冬支度を急げと盛んに鳴いている声を聞きながら目をつむる。
するり、腕をジェイドさんのものに絡めて、彼の大きな手に自分の手を添えてほっとする。
このまま眠っちゃおうかな。んー……流石にジェイドさんに迷惑だよね。
そう思って、目を開けてジェイドさんを見ると――。
「へっ?」
「………………」
何故か彼は真っ赤になって、季節外れの大汗をかいていた。
「ど、どうしたの?」
思わず体を離して、ジェイドさんの顔を覗き込む。
少し困ったような笑顔を浮かべた彼。熱があるのかと額に手を伸ばして触れる。びく、と何故か震えたジェイドさんの熱はそれほど高くない。けれど、うっすらと汗をかいている。確かに暖かいけれど、そうはいっても暑いというほどではない。一体どうしたのだろう……?
「具合が悪いの? 中に入ろうか?」
「い、いや。大丈夫だよ。そういうことじゃなくて」
「……? じゃあ、どうしたの?」
「茜が……」
「私が?」
ジェイドさんは視線を泳がして、言いにくそうにしている。
また何かやらかしたかなと不安に思っていると、ジェイドさんがおもむろに口を開いた。
「……昔は、手を繋ぐのも戸惑っていたのに、こう……自然と茜から触れてくるようになったなって思ったんだ」
「……!!」
「茜って気付いてないかもしれないけど、本当に気を許した相手には結構触れてくるんだよな。聖女様……ひよりちゃんと一緒にいるときもそうだし」
「え……? ええええ? ……そうなの?」
「うん。それで……最近は、俺にも結構触ってくるようになってきて」
ジェイドさんは蜂蜜色の瞳をすう、と細めると、暖かな笑みを浮かべた。
「なんかうれしいな、と思ったら照れちゃったんだ」
……ああ、こんちきしょう!!
私は自分のうちから沸き起こってくるものを耐えきれず、ジェイドさんの腕に絡めていた腕をすばやく解くと、勢いをつけて抱きついた。
「うわっ!!」
勢い余って、ジェイドさんが縁側に倒れ込む。彼を押し倒したような格好になってしまったけれど気にしない。そんなことよりも、内から湧き出してくる愛おしい気持ちが止まらなくて、まるで大きな犬みたいに首筋に顔をグリグリ擦り付けた。
「こらっ、茜……くすぐったい!」
「駄目です~。可愛いこと言うジェイドさんが悪いんだからね!」
「かわっ……!?」
「もう、ジェイドさんかっこ可愛い!!」
「ええ……?」
私の言葉に、ジェイドさんは天を仰いでしまった。その隙を突いて、ジェイドさんを思う存分満喫する。ジェイドさんの匂いは、少し甘い。筋肉質の体は、硬そうに見えて意外と柔らかい。何よりも、触れているだけでどこか安心する。
……本人には、恥ずかしいから絶対に言えないけれど。
この人は私のために存在している。そんな、自惚れとも取れる確信が私の中にはあった。
「……幸せだなあ」
私がそう呟くと、ジェイドさんはクツクツと喉の奥で笑った。私も、嬉しい気持ちになってつられて笑う。すると、とととと……と小さな足音が聞こえた。
「わふん」
「レオン? 来たの」
「きゅうん」
我が家の愛犬は、ふんふんと興味津々で私達の臭いを嗅いでいたかと思うと、くるくるとその場で回って、まるでこんがり焼けたベーグルみたいに丸くなった。
さわさわと穏やかな風が私達三人を撫でて行く。その暖かさに、思わずまぶたが重くなる。
「……ふわ」
寒い冬を前に、きまぐれに訪れた小春日和。
私達は揃って昼寝と洒落込んだのだった。
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