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精霊王とおもてなしご飯6

 お花見の時のお弁当は、とにかく色鮮やかに。


 春らしさを重箱にたっぷりと詰めて、長い冬を乗り越えた喜びを爆発させるのよと、祖母はいつも嬉しそうに語っていた。桜の名所が出身の祖母は、お花見に強い思い入れがある。だからか、今回も祖母は大張り切りだ。何を入れようかと、お重を眺めながら真剣な表情で悩んでいる。



「やっぱりご飯は、おいなりさんかしら。中のご飯が見えるようにすれば、見た目も華やかでいいわよね。ううん、お赤飯のおいなりさんに、れんこんと枝豆のおいなりさん……シンプルに白ごまだけのもいいわね」



 祖母はいなり寿司用の油揚げを、めん棒で潰し始めた。けれど、ああでもない、こうでもないとまだ悩んでいる。

 祖母のいなり寿司は、一種類ではない。出汁がたっぷり染みた油揚げに、具材を変えて数種類作るのが当たり前だった。ご飯が見えるように作ったいなり寿司は、色鮮やかで見た目も映える。そんないなり寿司がお重にぎっしりつまっている祖母のお花見弁当は、毎年の楽しみでもあった。



「ばあちゃん。ひよりは、干し椎茸とにんじんのおいなりさんが好きよね」

「ああ、茹で海老ときぬさやで飾ったやつね。ひよりって、お子様ランチみたいなのも好きだけど、案外渋いのも好きなのよねえ……じゃあ、それも作りましょ! うふふ、精霊王のお口に合えばいいけれど」



 祖母はそう言うと、いそいそと海老の下処理を始めた。

 それを隣で珍しそうに見ているのは、水色のエプロンを付けた、水の精霊の「核」アクアだ。



「人間は、食事を取るのにこんなにも手間と時間をかけるのね」



 祖母は、アクアの手に海老を持たせて、にこやかに言った。



「そうよ。食事は、生きるための糧。毎日食べなくちゃいけない。でも、食べられればいいってものじゃないわ。手間と愛情を込めて、ついでにバランスも考えてね。大好きな人たちが美味しく食べてくれるように。健康でいられるように。それが、家庭を預かる主婦の大切なお仕事なのよ」

「お母様、私の作った料理、食べてくれるかしら……」

「くよくよしてたって仕方がないわ。私がお手伝いするから、精霊王が涎を垂らしちゃうくらい、美味しそうに仕上げましょう?」

「……うん。そうね」



 祖母とアクアがいなり寿司を作っている横で、私は肉料理の下ごしらえだ。

 お弁当に入れる肉料理は、照り照りのてりやきチキン。軽く塩を振った胸肉を、皮目からじっくりと焼いて、最後に醤油、酒、砂糖で照りを付けた、冷めても柔らかくて美味しい一品。


 お弁当に入れるのはこの他に、クリームチーズを混ぜたかぼちゃを、ラップで可愛らしく整形した巾着かぼちゃ。アスパラのベーコン巻きに、たけのこの煮物。勿論、お弁当の大定番唐揚げとエビフライも作るつもりだ。食後のデザートには、いちごを中心とした、春らしい果物もたっぷり用意する。



「……やっぱり、なんでも手に入るって素敵」



 妹が大変なときに不謹慎かなとは思いつつも、私もいつもより料理を作る動きが軽やかだ。

 欲しいものの希望を言えば、フォレがどこからともなく材料を喚び寄せてくれる。まるで、なんでも揃っているスーパーがすぐ傍に居るみたいだ。

 練り物や、生物の加工品を手にするのは、本当に久しぶりのことだったから、あれもこれもとついつい作り過ぎてしまいそうだ。


 コンロの上で、コトコトと煮込んでいる土鍋を見つめる。

 そこには、各種練り物と大根をたっぷりと入れたおでんが煮込まれている。練り物からたっぷりと魚介の出汁が染み出したおでんからは、とんでもなく美味しそうな匂いが発せられている。お弁当もそれはそれで美味しいけれど、熱々のおでんを食べながらする花見も乙なものだ。


 勿論、フォレがお取り寄せ出来るのは材料だけではない。花見弁当のために取り寄せて貰ったのは、可愛らしい動物のピック。それで、枝豆を刺したり、照り焼きチキンも一口大にして刺しておけば、それだけで華やかな見た目になる。



「うさぎさんじゃ」



 フォレは、ピックをうっとりと眺めて、頬を染めている。ピックの先端には、うさぎやらくまやら、動物の可愛らしい飾りがついている。どうやら、フォレはそれが気に入ったらしい。

 そんなフォレに、私はとあるものを渡した。

 それは、小さな花の金型だ。それと、薄切りのハムと白いかまぼこを用意した。



「さあ、フォレもお手伝いしてね。お花をいっぱい作ってくれる?」

「お花……!? あちきが!?」

「そうよ。ほら。頑張って」



 見本でハムのお花を作って見せると、フォレはキラキラと目を輝かせて、小さな手で金型を手にした。フォレは、手元に集中していると、唇を突き出す癖があるらしい。つん、と尖らせた唇が、なんとも可愛らしい。すると、何故か苦しげな声が聞こえた。



「く……っ! ひ孫が見たい人生だった」

「あれ。じいちゃん、おかえり。会場の準備は終わったの?」



 声がしたほうを振り向くと、何故かボーデンの肩に乗った祖父の姿があった。

 巨躯を持つボーデンの肩の上に乗る祖父は、まるで小人のように見える。

 ……というか、何をしているんだ。なにを。


 若干、呆れた視線を向けると、祖父は得意げに手に持ったものを見せた。



「茜、ほれみろ。釣ってきた!! 爺ちゃんはすごいだろう」



 その手には、一見大きな桜鯛に見えるけれど、異様に獰猛な牙を生やした魚が居た。



「じいちゃん……!? 釣りしてきたの?」

「そうだ。宴会場の用意は、ヴィントと(せがれ)だけで用足りるらしい。暇になったもんでな、海に行って釣ってきた!」



 にっ! と欠けた歯を光らせた祖父は、そそくさとボーデンの肩から降りると、流し台で魚と格闘し始めた。野生児のひよりを作り出したのは祖父だ。祖父は、生前から自分で釣ってきた魚を捌くのもお手の物だった。



「ああ、随分と骨が硬えな。ほれ、ボーデン。お前も手伝え」

「……」



 ボーデンはこくりと頷くと、祖父の傍で大きな体を丸めて、魚を捌く手伝いをし始めた。

 そんなふたりの様子に、一瞬ほっこり仕掛けたけれど、今いる場所が精霊界だと思いだして、大慌てでふたりを止めた。



「ちょ、ちょっと待って。それって精霊界の魚!? というか、魚いるの!? そもそも食べられるの!? 毒は!?」

「ふむ。心配しなくても大丈夫さ、お姉さん」



 私の疑問に答えてくれたのは、火の精霊の「核」フレアだ。少女というよりかは幼女と言った見た目であるのに、「核」のなかで一番の長子だという彼女は、落ち着いた口ぶりでこの魚には毒はないと教えてくれた。



「そもそも、母上の口に入るかもしれない料理に、毒入りの材料を使わせるはずないだろう? あ。その牙にだけは気をつけるんだよ。体が腐ってしまうからね」

「なにぃ!? 先にそれを言え! 馬鹿もの!」

「はっはっは。お茶目な僕のほんの悪戯さ」



 フレアは片目を瞑って笑うと、一生懸命ハムと格闘しているフォレの手元を覗き込んだ。



「おやおや、フォレ。それはお花かい? 上手だねえ」

「上手!? ほんとう? フレアも一緒に作るのじゃ!」

「それはいいね。僕にも出来るかな?」

「あちきが教えてあげる。こうやってな……」



 幼女に褒められて、はしゃぐ少女……そんな不思議な光景を見つつ、鍋の近くで作業をしている母の様子を確認する。

 母の手元には、大きなボウルにたっぷりの卵液。そして、その傍にはうなぎの蒲焼があった。それを見た瞬間、色鮮やかに昔の思い出が蘇る。ああ、これはうちの母の得意料理だ!!



「わあ! う巻きだ! 懐かしい……運動会のお弁当の定番だったよね」

「そうよ。茜、これ好きだったわよね?」

「うんうん。卵焼きなのに豪華で、特別って感じがするんだもの。それにうなぎのたれに、卵の味が合うんだよねえ」



 アレンジャーなうちの母が、唯一アレンジしようとしない定番料理。

 卵のまんなかにうなぎの蒲焼を入れて巻いた、豪華な卵焼き「う巻き」。

 母の豪快な性格もあるのだろうけれど、これでもかとうなぎを入れた卵焼きは、極太の仕上がりになる。それでいて卵の部分はふわふわしていて、中のうなぎの柔らかさと相まってとろとろの仕上がりになるのだ。これは、私が真似しようとしても、どうしても崩れてしまって上手く行かない。


 母の死後、再現しようとして失敗した思い出が蘇って、思わず苦笑する。これだけは、母の味が再現できなくって、とっても悔しかった。

 母は、そんな私を見て嬉しそうに笑った。



「茜には、料理でいつも負けていたでしょう? ひよりったら、お姉ちゃんのご飯のほうが好きだなんていうんだもの……。でも、これだけは私の勝ち。ふふふ、母の威厳は保たれたわ!」

「お母さんはね、変なものを入れようとしなければ、普通に料理上手だと思うよ……?」

「変ってなによ。私だけのオリジナルレシピっていうのに、憧れているのー」

「お母さん。そういうところ。そういうところだよ……」



 むくれてしまった母を慰めながら、それでもテキパキと手際よくう巻きを作る母の手元を、私は脳内に刻みつけるようにして見守った。これで見納めになるのだろう母の手仕事を、一瞬たりとも見逃してはいけない。そんな気がしたからだ。


 卵焼き器に、出汁をたっぷり効かせた卵液をおたま一杯分流し込む。そして、少しだけ固まってきたら、鰻の蒲焼を置いて、くるくると卵で巻いていく。これが、なかなか難しい。卵が完璧に固まった後だと巻きやすいけれど、固い仕上がりになってしまう。けれど、半熟だと中々上手く巻けないのだ。母の作るう巻きは、普通のう巻きよりも鰻の量が多いから尚更だ。

 母は手慣れた様子で、くるくると卵を巻いていく。そして、油を塗り直したら、卵液を入れて巻くを何度か繰り返した。母の作るう巻きは、卵は裂けることも焦げることもなく、綺麗なロール状になった。

 最後の仕上げに、まきすに取って巻いて少し置く。これで完成。


 卵の部分は綺麗な黄金色。飴色のたれがたっぷり絡まった鰻の蒲焼がこれでもかと入ったう巻きは、ちょっとしたロールケーキくらいの厚みがある。



「これが綺麗に巻けるようになるまで、とっても時間がかかったのよ。よかったわ、今日も上手に出来た。……本当は、ひよりに食べて欲しいけれど、きっと難しいだろうから。覚えて帰って、茜があの子に作ってあげるのよ」



 母はまな板の上でう巻きを切ると、一切れ摘んで差し出してきた。



「はい。味見。あーん」

「……」



 ちょっぴりくすぐったい思いをしながら、大きく口を開けてう巻きを食べる。



「……!!」



 出汁が効いた卵はトロットロ。それに、濃い目に取った出汁が卵の甘味を引き立たせ、ふんわりと鼻を鰹の香りが抜ける。そして、脂がたっぷりと乗った鰻……!! 甘いたれと、淡白でありながらとろりとした脂の旨味を充分に内包した鰻の味が混じり合い、更には甘い卵の出汁と混じり合うと――。



「美味しい……!! とっても美味しいよ、お母さん!」

「……そう」

「……お母さん?」



 母の声が震えているのに気がついて、そっと表情を覗き見る。

 母は口を強く引き結び、泣くまいと耐えているようだった。栗色の瞳に溜まった涙は、今にも零れ落ちそうだ。



「私の一番の得意料理。これぐらいしか、私には出来ることはないけれど……。自分勝手な言い分かもしれないけれど、ひよりのピンチにこうやって茜の下に来られたことを、感謝しているの。まだまだ保護者が必要なあなたたちを置いて、逝ってしまったことの罪滅ぼしが出来るような気がするから」



 母は、手で浮かんだ涙を拭うと、にっこりと晴れやかな笑みを浮かべて言った。



「神様に感謝しなくっちゃ。可愛い娘のために、何かを出来るチャンスをくれたのだもの」



 堪らず、母を強く抱きしめる。

 ああ、母が恋しい。今ここにいる、大好きな母の気持ちが、堪らなく嬉しい。これからもずっと一緒にいたい気持ちが募るけれど、ことが終われば別れなくてはいけないのはわかりきっている。私と母の間には、生者と死者という超えられない大きな溝が横たわっている。



「私の料理で、ひよりと茜が笑える未来が来るかも知れないなんて、素敵だわ。さあ、もっと作りましょう」

「……うん。うん……」



 後ろ髪を引かれるような思いで、母から手を離す。途端に、温もりが遠くなって心細くなる。けれど、そうしてはいられない。妹のために、私はやらなければならない。



「お母さん、よろしくね」

「ふふふ。そんなに不安そうな顔をしないの。お義母さんもお義父さんもいるんだから。勿論、お父さんもね。大丈夫よ。きっと」

「うん……」



 すると、誰かがバタバタと走ってくる足音がしたかと思うと、誰かにぎゅうと後ろから強く抱きしめられた。ふわりと香る煙草の匂い、これは父だ。



「茜ー! 父さんがきたぞー! 俺も手伝いするからな!」

「わかったから。離して。料理が出来ないよ」

「娘が冷たい!?」

「TPOを弁えれば、茜も優しく出来るのにね。哀れな父ね……」

「ちょっと!? お母さん!? TPOの弁え方のハウツー本なんか持ってない!?」

「手遅れすぎるわ。あなた」



 父の嘆く声を聞きながら、母と二人で笑う。私は、ともすれば涙を滲ませようとする目をゴシゴシと擦ると、真っ直ぐに前を向いた。

 そして、真剣な表情で料理の材料と向かい合った。


 暫くして、出来上がったおかずを、丁寧にお重に詰め込む。フォレとフレアが作ったかまぼことハムの花を散らしたお弁当は、なんとも春めいていて、かなり上手に出来たのではないだろうか。家族揃って、お重の中身を覗き込み、大きく頷きあった。


 そして勢揃いした「核」たちに、そっとそのお重を手渡す。

 全員揃って、父とヴィントが整えたという宴会会場に行き――そこに広がる風景に、思わず息を呑む。



「お父さん、頑張ったね」

「可愛い娘のためさ。父さんの精一杯をここに籠めたんだ」



 父が得意げに笑う。嬉しくなって、堪らず手を握ると、父は照れくさそうに頬を指で掻いた。


 父が用意してくれた宴会会場は、嘗て家族揃って行った、桜まつり会場そのものだった。

 広場を取り囲むようにして咲き誇る、満開の桜の林。そこを、お弁当を持って歩いたのを、今でもはっきりと覚えている。



『おねえちゃん! はやくう!』

『ひより待って、こっちはお弁当持ってるんだから!』



 桜の木を縫うようにして、小さなころの姿をした妹が現れる。

 妹を追いかけているのは、勿論私だ。その後を少し遅れて、今よりも若く見える家族が、笑顔で歩いている。



「あら、私ったら若いわあ」

「あの頃の母さんは、最高に美人だったね」

「それってどういうことかしら」



 私たちの目の前を通り過ぎていく、半透明の(・・・・)家族を眺めながら、失言した父の足を母は思い切り踏み付けた。父は無言で蹲り、痛みに耐えている。


 そう、この場所は父の記憶を喚び起こして作られたのだという。精霊界は、現実と妄想が入り混じる場所でもある。妄想……とは違うかも知れないけれど、ヴィントの力を借りて喚び起こされた桜林は、嘗ての思い出まで一緒に再生しているのだ。


 ……そういえば、以前精霊界で両親と再会したときも、思い出が再生されて、過去の自分の姿を見たっけ。


 精霊界という場所の、摩訶不思議な部分を再確認したような気がして、改めてぐるりと周囲を見回す。


 見れば見るほど、思い出の中の桜まつりの会場そのものだ。

 丁度、散り頃らしい桜は、風が吹く度に花びらを舞い散らせ、目を輝かせた小さな妹が、花びらを手で掴もうと、ぴょんぴょん飛び跳ねている姿が見える。



「どうだい。最高の舞台だろう? 花見と言ったら、桜だろ? 俺にとって、世界一綺麗な桜を再現したんだ」



 いつの間にか、足の痛みから復活した父が傍に立っている。父は得意げな笑みを浮かべて、桜を眺めていた。



「うん。とっても綺麗。……でも、ほら。お父さん、見て」

「ん?」

「満開の桜のなかにあっても、空に浮かぶ花の星はちっとも霞まないね」

「ほんとうだ」



 薄桃色の桜林から視線を上げて空を見ると、青白い光を放つ花の星が見える。

 数多の星々の輝きに囲まれて、こちらを見下している花の星。

 あそこに妹がいて、使命を達成するために今も一生懸命頑張っているのだと思うと、胸が締め付けられる。同時に、こんなにも美しい星を創り出した精霊王の偉大さ、精霊王の持つ力の強大さを思い知るのだ。


 思わず顔を顰めた私に、見かねた父が優しい声で話しかけた。



「不安かい? 正直なところ、俺も不安でいっぱいだなあ。娘の命が懸かってるんだもんな」



 父の言葉は、内容とは裏腹にどこかのんびりした調子だった。

 思わず父の顔を見上げると、いつもと変わらない優しい微笑みを浮かべていた。



「『大丈夫だ』。父さんがそう言ったときは、大概大丈夫だったろ? 信じなさい」

「流石に、今回は素直に信じられないってば」



 あまりにも呑気な父に苦笑すると、父はにんまりと笑って桜へと視線を戻した。



「『大丈夫』さ。俺は『父さん』だからな。家族を不安にさせたりしない」

「……うん」

『おとうさん、肩車して!』

『えっ。父さん、昨日腰を痛めたって言ったよね? ……でも頑張っちゃうぞお!』

『えっ、やめて!? ここで悪化されでもしたら、大変じゃない!!』

『はははは! 大丈夫だ、大丈夫!!』



 思い出のなかの私たちが、楽しそうにじゃれ合っている光景が目に入ってくる。

 ……確かこの後、父の腰が悪化して、帰るのに物凄く苦労した思い出が……。



「……よ、ようし! 茜! 準備だ、準備!!」



 父は慌てて私の背中を押すと、敷物を広げている祖父たちの下へと向かった。

 私は父に押されながらも、いつの間にか胸の奥がすっと軽くなっているのに気がついて、口元を綻ばせた。


 ――さあ、「天岩戸(あまのいわと)作戦」の始まりだ!

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