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精霊王とおもてなしご飯5

異世界おもてなしご飯2〜精霊の歌と約束の杯〜 カドカワBOOKS様より発売中です!

 驚いたことに、ヴィントは精霊王と自分たちは「家族」ではないと言い切った。



「『家族』とは……人間が、婚姻や血縁関係で作り上げる小さな群れのことだろう? 我らは(あるじ)と眷属という関係ではあるが、『家族』なるものではない」



 ヴィントはそう言うと、私からさっと視線を逸した。



「待って。あなたたちは精霊王が生み出したのよね? それに『母』と呼んでいるじゃない」

「我らを生み出してくれた存在である、という意味での呼び名だ。深い意味はない」

「えええ……」



 ――一体どういうこと!?


 今まで「核」たちの態度を見てきた私には、彼らの関係が家族ではなく、ただの上下関係だけだと言われても納得がいかない。「核」たちが精霊王に注ぐ感情には、主従関係以上の温かい気持ちが篭っているように思えたし、フォレとヴィントだって兄弟のような関係に見えた。


 ……ああ、そうか。彼らは人間じゃないんだもの。「家族」という言葉の意味は知っていても、感覚的に理解できないのかもしれない。たとえ、自分たちが傍から見ると家族のような関係性であったとしても。


 ――でも、彼らには「家族」であって欲しい。あれほどまでに精霊王を案じている彼らが「家族」であれば、それ自体が精霊王の癒やしとなる気がするのだ。

 それは、人間のエゴかもしれない。価値観が違う彼らからすれば、迷惑この上ないかもしれない。

 でも……暗闇の中で、ひとりぽつんと佇む精霊王。その表情は不安と孤独に苛まれているように見えたから。



「ねえ、ヴィント。本当に『家族』ではないのね?」

「……ああ」



 私の問いかけに、ヴィントはゆっくりと首を振った。

 ヴィントの様子は、これ以上は赤の他人が踏み込んではいけないような、そんな頑なな印象を与えた。

 きゅう、と胸の奥が詰まる感覚がする。私なんかが、彼らの関係性に口を出していいものなのかと、迷いが生まれた。 


 するとそのとき、私のすぐ後ろから素っ頓狂な声が聴こえた。



「うっそだあ! 『家族』じゃないなんて、冗談だろ? 君たちは人間なんかよりも高位の存在なんだよね? なのに、わざわざ茜に頭を下げて助けを求めた。それくらい、精霊王が大切なんだろう。自分を生み出してくれた人を大切に思う子どもたち。これが、『家族』じゃなきゃなんだってんだい」



 声を上げたのは父だ。父は、ぱかんと口を開けて、呆れたように「核」たちを眺めている。どうやら、父も私と同じ感想を持ったようだ。父は遠慮なしに「核」たちに近づくと、彼らの様子をじっくり眺め始めた。

「核」たちは、私の父ということもあって無下にすることも出来ずに、不躾な視線を浴びせられて居心地が悪そうにしている。


 そのとき、父の様子を見た私は、一歩後ろに下がった。

 なぜだかわからないけれど、父に任せておけば大丈夫な気がしたからだ。

 父はお調子者だ。決して威厳のある大黒柱とかそういうタイプではない。けれど、家族間の問題を解決してくれるのはいつも父だった。明るい調子で、ズバズバと核心を突く父の物言いは、不思議と後腐れなく物事を円満に収めるのだ。父には、そういう不思議なところがあった。


 観察を終えたらしい父は、満足そうに頷くと、「核」たちにビシリと指を突きつけた。



「じゃあ、今日から君たちは『家族』だ! 俺がお墨付きをあげよう。おめでとう!」

「――はあ? ちょっと待て、男」

「君、ちょっと黙ってなさい。君は、自分たちが『家族』だって認めたくないんだろう? 人間っぽい関係性だから嫌なのかな。だがしかし! 俺が認めたからには諦めなさい! これは確定事項だ!」

「お前は一体、何様なんだ……」



 ヴィントの呆れた声に、父は胸を張って言った。「お父さん」だと。

 すると、益々呆れ返ってしまったのか、ヴィントは黙り込んでしまった。その隙に、父はウキウキで「核」たちに家族としての役割を勝手に(・・・)決めていく。



「ええと、黒髪の君、ヴィント君が長男! おっぱ……ごほん。美人のアクアさんが長女!」

「……おい。僕のほうが、生まれたのは先だぞ!」

「うそお!? じゃあ、幼女な君が長女だ!」

「訂正したものの、なんだか複雑な気分だぞ……!?」



 そうして父は、長女フレア、長男ヴィント、次女アクア、次男ボーデン、三女フォレ……と、全員を振り分け終わると、父は得意満面でうなずいた。



「そして、精霊王が母だね! いやあ、我ながらぴったりだね。おや、父がいない。仕方ないなあ、じゃあ俺が」

「「「「それは嫌だ!!」」」」

「あっ、すんごく傷ついた。酷いや、俺という父を持った茜に謝れ!」

「お父さん、少し黙ろうか……」

「茜!? なんでそんな目で俺を見るんだ……! 反抗期かい? そうなのかい?」



 しゃがみこんで、地面にのの字を書き始めた父を、全員が生暖かい目で見る。


 ――お父さん、相変わらずだなあ。


 いつもなら、そんな父に祖父の激が飛ぶのだけれど、今日に限っては違った。



「ふむ。(せがれ)の言うとおりだな。お前らの関係は、眷族やら主やらじゃない。『家族』だろう」

「……ご老人。何を」



 祖父は目を瞑ると、腕を組み、何度も頷いている。そんな祖父を、ヴィントたち「核」は困惑気味に見つめていた。因みに、父は祖父が出張ってきたので、益々不貞腐れてしまった。

 祖父は片目だけを開くと、にやりとシニカルな笑みを浮かべた。



「何を戸惑うことがある。自信を持てよ。『家族』はいいぞ。互いに支えあい、大切に思いやる。温かい、帰りたくなる場所だ」

「……しかし」

「『家族』っちゅうのは、なるようにしてなるもんだ。倅の言う通り、お前らはもう『家族』さ」



 すると、ヴィントは何かを耐えるように、下を向いて拳を握りしめた。

 そんな彼に、祖父は容赦なく畳み掛けた。



「ああでも、お前らに足りねえもんがあるな。『家族』っちゅうのはな、困ったときは、颯爽と助けに現れ、間違ったことをしたら正してやるもんだ」

「間違ったこと……」

「王たるものが、管理するべき星を禄に見もせずに引きこもっているっちゅうのは、正しいことなのかね」



 祖父の言葉に、ヴィントは黙りこくってしまった。

 彼にも、精霊王の振る舞いに思うところはあったらしい。

 祖父は、話を続けた。



「なあ、ヴィントとやら。お前らは、茜に助けを求める前に、自分たちで行動を起こすべきだったんだ。ご機嫌取りばっかりしてたら、まっすぐだった子も我儘な阿呆になっちまうぞ」

「……」

「儂もな、小さい頃はやんちゃだった。でも親にガツンと叱られて、いいところはとことん褒めてもらって、一端の人間になったんだ。人に頼ってその場だけ凌いだって、これからも精霊王に付き合っていくのはお前らだ。『家族』のことは、まず『家族』で考えなくちゃな」



 大黒柱として家族を支えてきた祖父の言葉には、長年培ってきた重みがある。

 ヴィントは憂色を濃くした表情で、祖父を見つめて言った。



「……母上は、我らが『家族』だと認めて下さるだろうか。嫌がったりはしないだろうか」

「ちゃんと、お前たちが精霊王を好きだって気持ちが伝われば、認めてくれるさ。もし、それでも拒否するようだったら、ガツンと叱ってやれ。親だって、間違うときは間違うんだ。お前が正してやれ、兄ちゃん」

「……」



「核」たちは顔を見合わせると、力強く頷きあった。



「俺は……俺たちは、母上の家族になりたい。いや、家族でいたい。支え合って、助け合えるような」

「うっし! よく言った!」



 ヴィントの言葉を聞くと、祖父は上機嫌で彼の背中を叩いた。

 すると傍で話を聞いていたフォレが、薔薇色に頬を染めて、ぐふふ、と笑った。



「家族! すごい……ヴィントとボーデンがあちきの兄様。アクアとフレアが姉様なのじゃな。ぐふ、変なの。ぐふふふ。……なあ! 爺様! じゃあ、あちきたちは『家族』として、何をすればいいのじゃ?」



 フォレはぴしりと背を伸ばし、小さな手を挙げて祖父に尋ねた。

 途端、祖父の顔がデレデレに崩れる。あ、やばい。祖父は孫モードに入ると見境がなくなる……! 一瞬、暴走するかと思ったけれど、どうにか理性で押しとどめたらしい。祖父はごほん、と咳払いをすると皆に向かって言った。



「なあに、簡単なことだ。『家族』として、あたりまえのことをするだけでええのさ」



 祖父はそう言って、茶目っ気たっぷりに片目を瞑った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それからは、「天岩戸(あまのいわと)作戦」の準備に大わらわだった。


 まず用意するべきは、調理道具や調理する場所だ。それは、ここが精霊界だったこともあり、まったく問題なかった。

 淡い燐光を放つ芝のど真ん中に、どどんとそびえる台所を唖然として見上げる。

 まるで切れ味の良い刃物で切り取ったように、台所だけがぽつんと芝の上に鎮座している光景は、なにかの冗談のようだ。



「……どうなっているの」

「あ、お義母さん家の台所」

「まあ! 私の城だわ! 久しぶり……!!」

「儂の家が」

「わー。ひよりが見たら面白がりそうだなあ」



 私、母、祖母、祖父、父がそれぞれ別の反応を返す中、フォレは得意気に小さな胸を張った。



「ここは精霊界じゃ。思い描いたものを、あたかも本物のように顕現させるなぞ、造作もないことよ! ほれ! 材料も異界から喚び出しておいたぞ! すごいじゃろう」



 フォレの足下には、山積みになった野菜や肉、魚、調味料がいつの間にやら出現していた。

 中には、見慣れた加工品すらある。どうやら、「核」の魔力で私の元いた世界から材料を召喚したらしい。



「フォレ、ありがとう。助かる!」

「ふふん。お安い御用じゃ。母上のためなら、あちきはなんでもする!」



 ああ、あのヤンデレちっくなフォレはいずこに。

 あんなにひどいことを言った精霊王のために、健気に自分に出来ることをこなしている……なんてピュア。可愛い。

 すると、私の隣にいたはずの母が、ゆらり、と足音ひとつ立てずに動き出した。母はその足で、フォレ目掛けて一直線に迫る。



「あと、なにか必要なものがあるか? ……って、お前はなんじゃ」

「……フォレちゃんはやっぱり可愛いわああ!! 茜の小さい頃みたい。おてても小さいわあ、紅葉みたいね!」

「や、やめ……ひゃっ! にゃああああ!!」



 母は、まるで弾丸の如く勢いでフォレを抱きしめると、その場でくるくると回りだした。


 ……ああ、本当にうちの母って王妃様に似ているよなあ。興奮するとスキンシップが激しくなるところとか。魂の双子レベル。


 そんなことを思いつつも、台所に足を踏み入れて、道具が揃っているか確認する。背後で、フォレの助けを求める声が聞こえるけれど、うちの母がこうなったら止められる者は誰もいないのだ。決して、害を与える類のものではないから、安心して母に愛でられるといいと思う。ファイト……!! フォレ……!!


 先に台所に来ていた祖母の隣に並ぶ。なんとなしに、祖母の手元を見ると、まるで台所を愛おしむように、優しげな手つきでシンクを撫でていた。



「この傷も。コンロも。……私が使っていた当時のままだわ。ううん、あの頃よりも綺麗かもしれない。大切に使ってくれていたのね。ありがとう」

「ばあちゃんの台所だもの。粗末になんて出来ないよ……」

「ふふふ、嬉しい」



 祖母は嬉しそうに笑うと、私に少しだけ寄りかかった。そうだ、祖母は嬉しいことがあると、こうやって控えめに触れてくる。それは、もう二度と見ることはないと思っていた、懐かしくて……大好きだった仕草。



「……ッ。ば、ばあちゃん。宴会のご飯、何を作ろうか。神様に出すおもてなしのご飯よね? 気合を入れて、豪華なご飯にしなくっちゃ」

「あらまあ、そうなの?」



 すると、祖母は不思議そうな顔で私を見て、首を傾げた。

 何か的はずれなことを口走ってしまったのかと戸惑っていると、母ののんびりした声が聴こえた。



「無理して気合の入った料理を作ったって、絶対に上手く行かないわよ。所詮は家庭の主婦が作る料理だもの。相手の好みくらいは気を遣うけれど、背伸びしないで作れるものでいいんじゃないかしら」

「そうかなあ」

「そんなものよ」



 そう言って笑った母の腕の中では、真っ赤な顔をしたフォレが目を回している。


 ――確かに、母の言う通りかもしれない。

 私は少し気負いすぎていたのかもしれない。

 異世界に来てからというもの、沢山の人を私の料理でもてなしてきた。

 思い返せば、いつも誰かをもてなすためのご飯を作る時は、自然と相手が美味しいと笑う姿を想像して料理を選んでいた。私がもてなしのために選んだ料理は、一般的にはご馳走といわれるものもあったし、ごくごく普通の家庭料理のこともあった。

 今回だってそうだ。なにも特別なことはない。



「……精霊王の好みそうなご飯」



 大人でありながら、子どものような一面がある精霊王。

 あの人が好むものはなんだろう。


 ――今こそ、精霊王について学んできたことを、活かすときではないのか。

 精霊たちが見せてくれた、精霊王の過去を思い出す。

 すると、私のなかに浮かび上がってきた精霊王の姿は、星の種を大事そうに抱きしめている姿だった。


 同時に、つい先程見せた不機嫌そうな……それでいて、怒りに満ち満ちた表情を思い出す。


 この星の種を上手に育てれば、創造神が褒めてくれるだろうかと、期待に胸を膨らませていた姿。それに対して、「人間は勝手だ」と顔を歪ませていた姿。そのふたつは、あまりにもかけ離れている。


 けれど、なんとなくわかるのだ。

 星の種を抱きしめ、期待に胸を膨らませて、夢見る表情で微笑むその姿こそ、精霊王の真実の姿であり、原点(・・)なのだと。


 その時、脳裏に蘇ったのは、あの血で塗れた像の姿だ。

 今ならわかる。あの像は、精霊王を模して作られたものだ。精霊王を祀る神殿での惨劇は、少なからず精霊王自身にも影響を及ぼしているのかもしれない。


 ――きっと、精霊王が歪んでしまったのは、人間のせいだ。精霊信仰を捨て、祈ることを忘れた人間の。なら、あの笑顔を同じ人間である私が取り戻せたなら。きっと、そのときは精霊王の助力を得られる。そんな気がする。



「でも、流石に精霊王の好きな食べ物なんて、教えてくれなかったし……」



 ……なんて難しいんだろう。

 ひとり頭を悩ませていると、誰かの視線を感じて後ろを振り返る。すると、そこにはフォレを除いた「核」の面々が勢揃いしていた。



「ねえ。あなたたちなら、精霊王の好みの食べ物を知っているんじゃない?」



 精霊王にずっと付き従ってきた彼らなら、何か情報を持っているかもしれない。単純にそう思っただけなのだけれど、彼らは顔を見合わせると、戸惑ったような反応を見せた。



「ごめんね、おねえちゃん。僕たちは、母上が何を好むのかを知らないんだ」



「核」の中のひとり、火の精霊の「核」フレアが答えた。

 すると、その隣にいた水の精霊の「核」アクアが言葉を引き継いだ。



「母上は、供物を食べるとき、私たちを必ず下げさせたの。なぜかはわからないけれど……」



 だからわからないのよと、アクアは綺麗な顔に苦笑を浮かべて言った。アクアが微かに笑うだけで、匂い立つような色気がある。けれど、その表情はどこか寂しさを含んでいた。



「……知らないならそれでもいいの。他に精霊王が好んでいたものはわかる?」

「そうね……」



 アクアは数瞬考え込むと、空を見上げ、片手を天に向けた。

 すると厚い雲で覆われていた空があっという間に晴れ渡り、満点の星空が現れた。



「わあ……!!」



 思わず歓声を上げる。空には、あの花の形をした星の姿があったのだ。



「お母様は、日がな一日、あの星を眺めていても飽きないとおっしゃっていたわ」

「花の星……」

「……私には、それくらいしかわからないの。ごめんなさいね」



 アクアはそう言うと、物憂げに瞼を伏せた。

 私は、がっしりとアクアの手を握った。

 ああ、なんてこと。折角の美人さんなのに、沈んだ表情ばかりじゃ勿体無い!!



「ありがとう! とっても参考になった。それに、落ち込むことないわ。誰だって、自分の『家族』のことを、なんでもかんでも知っているわけじゃないもの。でも傷ついたのなら、ごめんね」



 すると、アクアは更に表情を曇らせて、唇を噛み締めた。



「長い間傍にいたのに……。自分の無知を知るたびに、私たちはお母様の何をみてきたのかしらって、泣きたくなるのよ」

「駄目よ、ネガティブになったら。ああもう! ……どうすれば!」



 これは駄目だ。どうにもこうにも、思考が悪い方向、悪い方向に行ってしまっている。

 それくらい、好きだってことなんだろうけれど……。

 思わず天を仰ぎ見る。すると、視界に自慢げに咲き誇るような大輪の(・・・)星の姿が写り込んできた。



「……そうだ!! そうしよう!」



 私は勢い良く顔を戻すと、アクアの手を掴んだ。



「ありがとう。アクアのお陰だわ!」

「え……? ええ……??」

「花の形をした星を、眺めるのが好きだったのよね。お花……そうよ、お花! すっかり忘れていたけど、もうすぐ春よ。春といえば、お花見じゃない!」



 そう、そしてお花見と言えば宴会だ! 皆が生きていたころは、庭の桜の下で毎年花見をしたものだ。ずらりと美味しいご飯を並べて、綺麗な花の星を眺めながら食べたら、きっと最高に美味しいはず……!

 すると、傍で話を聞いていた祖母や母が、笑顔を浮かべて同意した。



「あら、いいわねえ。お重に一杯おかずを詰めて、お弁当にしましょうか」

「それだったら、いろんなものを入れられるし、どれかは精霊王のお気に召すわよね」

「折角だから、温かい料理も用意しようよ、お母さん、ばあちゃん!」

「おお、うまそうだ。じゃあ、儂らは花見の会場を整えるか」

「俺、力仕事は得意じゃないんだけど……」



 私の「家族」の同意を得られたので、「核」たちを見る。

 彼らはトントン拍子に話がまとまっていくものだから、若干戸惑っているようだった。

 けれど、その表情には僅かな期待が見て取れる。


 私は鼻息も荒く、胸をどん! と叩くと、皆に向かって言った。



「さあ、美味しいお花見弁当を作りましょう! 勿論、『家族』総出でね!」



 すると、皆は力強く頷いたのだった。

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