3.弓兵の能力
前回の後書きに書いた次回予告、あれは嘘だ。(すいません。悪を討つのはこれの次にしました)何でもしますから許してください!
「――|《真眼》(ヴェルター)発動」
俺は呟いた。
すると右眼に軽い痛みが奔った。スキル《真眼》が起動しようとしているのだろう。程なくして視界の端に一行の文字列が現れる。
【真眼:あらゆる物の情報を解析、表示する。言語も翻訳が可能。】
……なるほど。これは中々、便利な能力だ。異世界の文明がどれ程なのかわからないが、俺の知識にない物が出てくるってことは当然、あり得る。このスキルはそういったものも解析して俺に伝えてくれるらしい。それに、言語の翻訳はありがたい。異世界人が都合よく日本語を喋るなんて可能性は低い。おそらくだが文字も違うはずだ。アルファベットなら何とかなりそうだが、見たこともない文字だったらお手上げだ。
俺は早速、《真眼》の力を試すことにした。
何となくだが右眼に力を込めてみる。するとどうだろう。幾つかの文字が現れた。
【オストルトスギ】
多くの森林で見かけることが出来るスギの木の一種。資材や家具、武器など幅広い用途に使われている。
俺のすぐ近くに生えている樹木を解析したようだ。木とか植物は意外に日本とかと変わらないのかもしれない。
俺はこの《真眼》でどこまで解析が可能なのか気になった。あらゆる物の――と説明文に記されていたから、今この場所の空気中にある物質とかまで解析できるのだろうか。
どうすればよいか、正解は導けないが先程と同じように右眼に意識を集中。視界にある全ての物を捉えようと見開く。
「……ッ!」
突如、右眼に電撃でも浴びたかのように白い光が現れ、鋭い痛みが奔る。疲労感を覚えた。おそらくだが、《真眼》の能力を過剰に使用しようとしたせいだ。落ち着いて目を開け地面に落ちている石ころを視界に捉える。
問題なく能力は正常に作用した。
大量の情報を一気に解析すると負担がかかり過ぎるようである。文字の詰まった文書を見開きで見た時、一瞬、眩暈がしてどこから読めばいいかわからなくなってしまう感覚に似ている。情報の「圧」に気圧されるのだ。
出来るだけ一つ一つ解析していくよう心掛けるか。必要ない時は未発動状態にして任意で使用する方法でいこう。
次は《弾薬製造》だ。
俺の武器から考えると作るのは矢だろう。弾丸とかも作れるのかもしれないが、拳銃とかライフルを持っていない俺には必要ない。
しかしこのスキルは必須だ、そう俺は思った。
何故なら――
俺は矢を一本も持っていないからである。
《ガンスディーヴァ》を貰ったのはいいが、肝心の矢が弾倉にも入っていなかった。『神様』が凄く頑丈な物だと言っていたので鈍器としても扱えるかもしれないが、それでは何のための神造兵器だ、ってわけである。
『神様』は多分、このスキルで矢を作れというつもりなんだろう。しかしどうやればいいんだ? 念じるのか、それとも詠唱でもしてみるか?
「あ、そうだ」
俺は一つ思い出した。ステータス一覧の中に「魔力」という項目があったことを。ゲームなどではお馴染みと言えるワードの一つである。大体のイメージとしては「エネルギー」というものが近いだろうか。魔法や魔術を使用するためのエネルギー源が「魔力」、そのような認識が一般的となっているので、ここでもその解釈で間違いはないはずだ。
つまり――魔力を基にして矢を作るのではないか。そう俺は考えたのだ。
俺のステータスに魔力は1500と表記されていた。多いか少ないのかは不明だが、魔力が俺の中に宿っているのは確かなはず。
「やってみるか」
俺は《ガンスディーヴァ》を片手に唱えた。
「――|《弾薬製造》(エントヴィッ)発動」
空いた左手の掌。そこに紋章のような光の刻印が現れた。それが宿った途端、まるで血液を循環させるように俺の体内を流れる「何か」が脈動を伴い、駆けていく。その流れは左手へと集まり、収束して輝く光を体外へと発した。
空間で光の粒が踊り、ステップを踏むように揺れ、乱れ――――
それらは矢を形成した。《ガンスディーヴァ》と同じ色――光すら吸い込まれてしまいそうな黒に彩られる一本の矢である。
魔力なんて初めて使ったが、身体に異常は見られない。発動した瞬間の奇妙な感覚には少し驚かされたものの、極端に疲労した感じもない。無論、連続で製造したり、幾つもの矢を同時に製造すればわからないが。
大雑把な感覚であるが、一気に魔力を消費した――なんて感じでもないのでこのスキルに必要な魔力はたいした量ではないのか。俺が持つ魔力がとても多いという幸運な
可能性もあるが、まぁそのことについてはこれから過ごしていけばわかるかもしれない。
ともかく、これで武器の運用も大丈夫そうだ。
後は《収納空間拡張》と《直感》のスキルだが……だいたいの察しはつく。
《収納空間拡張》は多分、このポーチに作用している。
俺は腰に装備されてあった道具入れを手に取る。見たところタオルとかティッシュ、所謂ちょっとした必需品が入っている。そして何故か伸縮するゴム袋……つまり「アレ」も入っていた。それと一緒に入っていた紙切れに目を落とす。そこには『神様』から「そういったことは合意の上でやるように」と有り難いメッセージが添えられていた。
うっさいわ、変態神。
俺はスキルを確認するため、《ガンスディーヴァ》をポーチに入れようとする。常識的に考えれば絶対に入らないのだが……簡単に収納完了した。
これがスキル《収納空間拡張》で間違いない。俗的に言い表すと何次元ポケット云々……ゲームとかではお馴染みのアイテムボックスのようなものだ。これがあれば荷物の持ち運びも自由な便利スキルといった解釈でいいだろう。
《直感》のスキルはおそらく直感が鋭いとかそんな感じだ。試すようなものでもないのでこれはとりあえず放置。常時発動型のスキルらしいので人知れず効果を発揮してくれたりするものなんだろう。
一通りの確認は済んだな。
そして、目下の課題は――水と食糧。
水分が補給出来なければ死ぬし、何も食べなくても死ぬ。森を抜けられればそういったものの目処はつくだろうが、地図もないため何日かかるか不明。《真眼》があるので食べられる野草やキノコを見つけるのは可能だが、そんなものだけで空腹を凌ぐのは心許ない。本当に兎とか狼を狩ることになるかもしれないな。
水については何処かに川があるのはわかっているので、まず水を見つけに行こう。
俺は再び歩みを進める。強化された聴力のおかげで水源のある方向はある程度わかった。歩きながら俺はふと、思い出す。ステータスの【職業】の欄に「弓兵」と書かれていたがあれが身体能力とかを強化しているのだろうか。俺の外見は以前と何ら変わりないが、基礎的な身体能力は比較にならない程にまで向上している。職業といってもまだ何も働いていないため少しおかしい気もするが気にしないでおこう。職業適性とかそんな感じで俺は理解している。
30分もかからないうちに水の在り処は見えた。小さな溪谷に透き通った水が流れている。俺はそこを下り、川から両手で水をすくいあげる。念のために《真眼》を使って水を解析してみたが、見た目通りの綺麗な水であった。
飲むと爽やかな冷たさが喉を潤わせてくれる。今日はバタバタしていたため落ち着く暇があまりなかった。そのためこうして休息できたのは久々な気がした。
次回、悪を討つ(本当)
狩流の神業を見逃すな!
追記:本日18日午後11時頃に4話を投稿予定




