16.旅立ち
4か月以上ぶりの投稿です。放置してしまっていて申し訳ありませんでしたがようやく再開となります。またよろしくお願いいたします。
村に戻った俺を一番に出迎えてくれたのはニーナだった。
「よかった……よかった……カリュウさんが無事で」
「ちゃんと帰るって言っただろ?」
「はい……信じてました。でもやっぱり心配で……」
「心配かけて悪かったな。もう大丈夫だ、《リンドヴルム》は倒した」
ニーナは俺に抱きついたまま泣いていた。俺はその頭を優しく撫でた。獣耳が嬉しそうに
動いているのがわかる。
「おおぅ、無事じゃったかカリュウ殿。ようやってくれた。ありがとう、村を代表して礼を言うよ」
ニーナの後に続いて出てきた村長か頭を下げてくる。
「これで安心だな」
「ああ、そうじゃ。ほんとうにカリュウ殿のおかげじゃ」
「いや寧ろ礼を言いたいのは俺のほうだ。貸してくれた魔術書も役に立ったし色々とよくしてくれて助かった」
「謙虚じゃなぁ……やはりあの少女と少し似ておるのぉ」
村長の言葉に引っかかりを覚える。
「あの少女?」
「おお、話してなかったかの。3年ほど前にコノエ村を訪れた少女がおってな」
ああ、確か以前俺みたいな来訪者がいたという話を聞いたっけ、と俺は思い出した。
「その少女もここら辺の魔物を倒してくれての。すぐに去ってしまったがのぅ。街に行ったようじゃが」
「へぇ、そうだったのか。なんてやつだったんだ?」
俺は気になったので訊いてみた。名前を知っていれば何かの機会に会えるかもしれない。
「たしか……ヨルハ、と言っていたのぅ。ああそうじゃ、ヨルハ・ヴェルトレートじゃ」
「ヨルハ……?」
俺はその言葉に震えた。いやそんなはずは……
ありえない、と頭で否定する。
「どうした? 知っている名じゃったか?」
「いやなんでもない。それより、何で《リンドヴルム》は突然現れたんだろうな」
誤魔化した。
動揺を隠すために咄嗟に話題を変える。
「そうじゃあなぁ……獲物となる他の竜を追ってきたのかもしれん。しかしこちらの地方には竜は少ないうえに《リンドヴルム》の生息域からも大きく外れているしやはり不思議じゃの」
もしかすると異世界規模で何か大きな異変でも起きているのだろうか。これが『神様』の言っていた異世界を救わなければならない理由なのか? それとも黒竜事件はただの偶然で、本当に竜を追ってオストルトの森に来ただけなんだろうか。
いずれにしても情報が少ない。まだこの世界について俺自身わかっていないことが多すぎる。それに―—さっき話していた少女、ヨルハ・ヴェルトレートのことが気になっていた。
街、か。
俺はとある考えを胸に、村長に別れを告げてからニーナとともに家に帰った。
* * *
「街に向かうのですか?」
ニーナは俺の話に少なからず驚いた様子だった。無理もない。村に着いて数日のうちにそそくさと出て行ってしまうのだから。
「ああ。ちょっとばかり気になることがある。それにこの世界のことをもっとよく知りたい、とにかく情報が必要なんだ」
「たしかに……もっと色々なものを見て回ればカリュウさんの記憶も戻るかもしれませんね!」
そういえば俺は記憶喪失(の設定)だった……あまりに事が上手く進んでいるせいで忘れかけていた。
「そうだな。此処には色々迷惑をかけたが、それも今日までだ。明日の朝には出発する」
コノエ村の人達にはよくしてもらった。しかし此処でのんびりと暮らしていくわけにはいかないのだ。
「あ、あのそれなら一つお願いがあります」
「ん? 何だ?」
「私も連れてってください!」
「な……」
そうくるとは思わなかった。俺は迷った。はたしてニーナを連れて行っても大丈夫なのか。この先の旅が安全とは限らない。ましてやニーナは村育ち。下手に街に出るよりは住み慣れた村で過ごしていくほうが危険も少ないのではないだろうか。
だが彼女の目は真剣だった。
俺はそんなニーナの気持ちを受け流すことはできなかった。
「……わかった。けど村長たちが反対しなかったらな。じゃあ俺は村長に伝えてくる」
「はい! あ、そうだ。今夜は何がいいですか?」
ニコニコと、ニーナは夕飯の希望を訊いてくる。
「ニーナが食べたいものでいいよ。ニーナの手料理なら何でも美味いし」
本心をそのまま口に出した。彼女の顔が赤くなったのは気のせいだろうか。
* * *
時は少し進み、翌朝。
村長らは俺達の出立を快諾してくれた。ニーナのことも「カリュウ殿がついておられるなら安心じゃ。寧ろニーナが迷惑をかけてしまいそうじゃの」だそうだ。案外、放任主義なのかもしれない。
村の皆に挨拶を済ませ、俺とニーナは旅立つ。
コノエ村の人達にはよくしてもらった。俺がこの先、為すべきことを終えた後、また此処に戻ってきたい。
俺は切にそう思った。




