第8話
「ああ、終わったぞ。結局、お前ら全員残ったんだな」
「ああ、そうだが・・・」
「いや、別にいい。残りたいなら残れといったのは俺だからな」
決まり悪そうに顔をそらす勇者ども。だが、勇太は何かを思い出したのか、俺にまた話しかけてきた。
「そうだ。助けてもらった後に聞くのもなんだが、あんたは一体誰なんだ?なぜかあんたの事がよく見えないじゃないか」
当たり前だろう。認識阻害をかけているんだから。
「ヨウタ様、この人は何らかの隠蔽魔法を自分にかけているようです。お姉様、お願いします」
はぁ。どうやらイリナにばれてしまったようだ。だが、もしかして、この姉妹は・・・
「分かったわ。我の目を欺きし幻影よ、消滅せよ!アンチ・ミラージュ!」
おお、幻影魔法用の妨害魔法か。だが残念。それは俺には通じないんだよ。
「えっ?効いていないですって!」
「残念だったな。その魔法は俺には効かないんだよ。俺の正体?そんなものどうだっていいだろう。お前たちが知るべき事は、俺が助けに来なければ、お前たちは死んでいたという事だ。俺がいなかった場合、お前たちは10秒で殺られていただろう。その事を、ちゃんと理解できているんだろうな?」
「・・・ああ。その事については感謝している。だが、1つ気になることがある」
「なんだ?ギィ」
「・・・それだ。お前に俺たちの名前を教えた事はないはずだ。なのに、何故俺たちのなを知っている?」
しまった。こいつらの名前知ってたから、つい呼んじまってた。だが、何でギィ以外の他の奴らは今まで気づかなかったんだろう。さて、どうごまかすべきだろう・・・そうだ。
「そこはまあ、俺の魔法のお陰だな。とにかく、お前たち勇者たちがこんなところで死んだら話にならないだろう。あの魔王は、こんな奴よりも格段に強いぞ?」
さて、ゴブリンどもは指定数倒すことができたし、これ以上何か聞かれる前に街に帰るとするか。
「――待ってくれ!あんたは、俺の知っていることより多くの事を知っているみたいだな。俺は、俺たちは強くならないといけないんだ!頼むっ、あんたの知っていることを教えてくれ!」
正直めんどくさいが、こいつらが強くなるためにも、説明してやった方がいいんだろう。
「・・・何故知識を求める」
「俺たちが強くなるため。この先を生き抜き、世界を救うためだ!」
俺を見るその目は、真っ直ぐに澄みきっていた。仕方がない。
「いいだろう。では教えてやろう。魔王と勇者、その戦いの始まりからな」