第7話
そういえば破壊魔法があったな。ブレスは魔力で作られているから出来るはずだ。
目の前に、ギィリャウの放ったブレスが近付いて来る。ギィリャウが笑うのを見ながら、俺は手を前に突き出し、こう呟いた。
「――消滅せよ」
と。すると、目前まで迫っていたブレスは手の先から吸い込まれ、消滅した。この場合だと、ブレスという対象を消し去ったのだろう。
「ナニッ?ニンゲンヨ、イッタイナニヲシタ!アノイチゲキヲフセグコトナド、フカノウダ!」
「あの魔法はいったい?イリナ、何だかわかるか?」
「いえっ、わかりません!あんな魔法、今までに見たこともありません。あれは、未知の魔法です!」
未知の魔法・・・か。そうだろうな。なにせ、破壊魔法なんてものだ。だが、この魔法を使って、直接奴の息の根を止めることは、出来ないみたいだな。おそらく、これは俺の力が足りないからだろう。レベルという単純な力がな。しかし、この2つの魔法があれば、こんな奴を倒すには、十分すぎる。
「何をしたかなんて、教える訳がないだろう」
(見た目に反して、ちょこまかとすばしっこいからな。まずは、動きを封じるか)
思い浮かべる魔法は、影縛り。この魔法は、相手の影の動きを止める魔法で、相手はそこから動くことが出来なくなる。しかし、体の自由はきくため、攻撃される可能性がある、少々問題のある魔法だった。だから、せいぜい足止めようとして使われていた。だが、俺の創造魔法なら、そんな事にはならないはずだ。
「我に仇なす全ての者よ。自らの影に縛られ、動きを止めろ!」
「やっぱり。ヨウタさん、あの人が使った魔法は全部、魔法書などで覚えられる魔法のように見えますが違います。本来の魔法とは、まったく違うものです!」
「それは、どういうことだ?」
「例えば、あの人が最初に使っていた魔法は、本来ならグラビティというものです。グラビティは、相手に一定の重力を与え続け、押し潰す魔法。あの人がやったように、与える重力を増加させていく事は、できないはずなんです。つまり、あの人は新しい魔法を自分で作ったのか、魔法書の魔法をアレンジして、使っているということなんです」
さすが、イリナはあの魔法使いの弟子なだけはあるな、しかし、もう1人の弟子は何をしてるんだ?
「オノレ、ニンゲン!コノテイドノコウゲキデ、ワレヲ――」
「まだ喋れたのか。思ってたよりタフな奴だな。だが、これで喋る余裕もなくなっただろう?」
影縛りをさらに強化する。よし、これで完全に身動きがとれなくなったようだ。必死に動こうとしている。何をやっても無駄なのにな・・・もう呪文を唱えるのも面倒だ。手っ取り早く、止めを刺すことにしよう。
思い浮かべるものは、生命を引き寄せ、吸収する虚無の渦。それをギィリャウの足元で、発動させる!
すると、ギィリャウの足元に黒い穴がうまれ、ギィリャウの体を引きずり込みはじめた。抵抗しようにも、体が動かないギィリャウは、ようやく諦めたようだ。
「ワレガ、コノワレガコンナトコロデ・・・マオウサマ、モウシワケアリマセン。ワレハ、ココマデノヨウデス」
俺は、ギィリャウに思考伝達を繋いだ。
『冥土の土産に教えてやろう。俺は魔王を・・・だ』
『バカナッ!ナラバ、オマエハ・・・マオウサマトトモニ、フウジラレテイタハズダ!』
『封じられていた?そんなことは知らんな。だが、魔王の封印は解けたんだろ?だったら、もう1人も解放されるのは当然の事じゃないのか?』
俺が封じられていた?初耳だぞ。なら、あそこは封印されていた場所だったのか?思いの外、いい情報が手に入ったな。
『ギィリャウ。俺を殺したいんだったら、魔王軍の1部隊でも連れてくるんだな。そうすれば、俺を弱らせる事が出来るかもしれないぞ?まあ、お前ぐらいの奴ならば、余裕で殺せるだろうがな。じゃあな、お前たちはいい実験台になったよ』
「ギャァァァァァァァァァーーーーーー!」
ギィリャウの体が渦の中に飲み込まれて行き・・・その姿は、消滅した。
「終わった・・・のか?」