第5話
捕らえれた気配はおよそ50。そのうちの4つは人間だろう。残りは・・・。
そう考えながら気配を辿って行くと、そこにいたのは・・・
「っ!ゴブリン・・・キング・・だと。それに、なんだあの数のゴブリンどもは!?しかも、戦っているのは――勇者どもじゃないか!」
ゴブリンキング。本来ならもっと北の方に生息しているはずの魔物。その特殊能力は、配下となった魔物達の強化。その能力はゴブリンキングが強ければ強いほど強化される・・・だったはずだ。
少なくとも、Fランクの奴らが苦戦するぐらいゴブリンどもが強化されているんだ。今の勇者たちが倒せる相手ではない。
何らかの原因(なんとなく理由は推測できるが)で、ゴブリンキングがここに住み着き、配下となったゴブリンどもが強くなったんだろう。ゴブリンキングは強い。この国のため・・・何て事はないが、こいつを倒せば俺は強くなることができる。だったらこいつを倒すまでだ。
そういえば、魔法の欄から俺が今までに覚えたはずの魔法が消えていたな。レベルリセットの影響で消えたのかもしれないが、俺の予想が正しければ・・・
(創造魔法・・・ミラージュコート)
予想通り、今までに覚えた魔法は創造魔法の中にまとめられたようだ。俺は幻影を纏い、軽い認識阻害を自分に施した。これで勇者どもからは、誰だかばれる事はないだろう。今正体がばれると、色々とめんどくさそうだからな。
***********************
「オマエタチガ、ユウシャトセンテイシャカ。ワレノハイカタチヨ、ミナゴロシニシロ!」
「くそっ。こいつらは一体何なんだ!」
勇者、霧下勇太は焦っていた。少しゴブリンを倒せばよかったはずなのに、そこらのゴブリンよりも明らかに強いゴブリンと、規格外の強さのゴブリンが出現したからである。
「・・・ここは逃げるべき。じゃないと死ぬ」
「そうよ!こんな化け物と戦って勝てるはずがないじゃない!」
「でもギィ、エリナ!俺たちが逃げたら、こいつらは街に行くかもしれない。そうなったら、街の人たちはどうなる?何の抵抗もできずに、殺されるかもしれない。俺たちは勇者と、選定者だ。俺たちの力を合わせれば、こいつを倒すことは出来なくても、少しの間なら、動けなくさせることは出来るんじゃないのか!?」
「でも・・・」
「・・・その確率は低い。・・・だが、俺たちは選定者、お前は勇者だ。やってみる価値はある」
「そうですよ、お姉様。私たちでやって見ましょう!」
「イリナ・・・そうね。私たちにならできる、やってやろうじゃない!」
「ギィ・・・イリナ・・・エリナ。ありがとう。よし、みんな。こいつの動きを封じるぞ!」
「「「了解!」」」
勇太と仲間たちの気持ちが通じあった、その時だった。
「・・・はぁっ。何を話しているのかと思えば、お前たちは馬鹿なのか?お前たちがこのゴブリンキングに挑んだって、足止めできるどころか、むざむざ殺られるだけだろう。そんな単純な事さえ、勇者どもにはわからないのか?」
突如彼らの背後に、謎の男が現れた。