終幕~未来へ~
未来会議当日に起こった大前の反乱により、開催出来なかった未来会議は三日遅れで清水寺にて開催され、この日本は鉄鋼業を中心とした西洋文化を大きく受け入れながら日本独自の鉄鋼文化を外国にも広めようという基本方針が成された。これは、日本人の手先の器用さを上手く世界に広めつつ、日本独自の文化を逆輸入させようという聖首相の考えだった。多くの日本人はこの国家方針に賛同し、日本人がいずれ世界の覇権を担う事を志し未来に向かい進んだ。
そして警視組織では警視庁長官・大前の死亡により反政府組織の義狼軍は壊滅した。それにより、警視組織も新しく出発する為に内部での組織改変が行われた。そして、先日の戦いで銃火器の必要性を知る伏見奉行所も近代化の波を受け銃や大砲を持つことになった。だが、独自の捜査権限は失われておらず相変わらず和装にて伏見奉行所の面々は悪人の取り締まりを行っている。
「白き雲・時の流れに・塵となる」
緩やかな風が流れ、太陽の陽射しが暖かくなってきている四条にある茶屋・鬼京屋にいる京史朗は舌を痺れさせながら熱い茶を飲んでいた。
そこの看板娘である椿が隣に座り、まるで夫婦のように澄み渡る京都の空を眺めている。
「……長い一日だったな。未来会議の一日は。まだ、気が重いぜ」
「そうですね。あれから一週間経ち日本の国家方針が聖首相から示されて日本国民は湧き立っているようですが、未来会議事件の当事者の京史朗さんは、そう簡単に鉄鋼文化なんて賛同出来ないですよね」
「まぁ、それもあるな。伏見奉行所も近代化して全員が銃を携帯している。時代の流れが、早くていけねぇや」
空に流れる雲を、少年のような瞳で見つめた。床几に触れる京史朗の手を、椿は優しく触れた。
すると新たな客が現れ椿は店内に戻る。
入れ替わるように泣きぼくろのある白い着物を着た美女が現れ京史朗の横に無言で座る。
二人は特に挨拶もなく話す。
「……久しぶりだな。お前さんの義賊活動ももう終いか?」
「今の所はね。この町は今は安定に向かっているから、今度は違う土地に行くかもしれないわ」
「そうか。お前には借りがあるからな。早めに返さねーと何されるかわかんねーぜ」
「随分な言われようね」
言いつつ月影は、茶を入れている椿の姿を見て言う。
「この茶屋の女は途方も無い度胸のある女よ。あの混乱する京都で正しい情報を叫ぶなんて普通は出来ないわ。大事にしなさい」
「……そう言って、何で接吻するかねぇ?」
自分の唇に熱い思いを残して消える月影に呟く。
茶を入れて来たがすでに客はおらず手持ち無沙汰になる椿を床机に座らせる。
息を吐く京史朗は澄み渡る青空をただ眺めていた。
最近は、こういう姿が多く見え平和でもあるが鬼は鬼らしくしていて欲しいのが向日葵の色香を漂わせる女の気持ちだった。椿は瞳を青空に染める京史朗の尻を触る。
「おうっ!?」
「気合いを入れてあげました」
「いや、さっき貰ったけど……」
「え?」
「いや、何でもねぇ。行ってくるぜ。俺は俺の正義を貫くだけよ」
一陣の風と共に伏見奉行所・観察方である夜談が現れた。新たに起こる事件に対し、京史朗は椿の尻を触り立ち上がる。
「悪い事はよ。見つからねぇようにやる事だ。この伏見奉行にな」
そして京都の町は多少の混乱はありつつも、伏見奉行所の活躍により守られて行く事になる。




